家づくりのタイミングって、悩みますよね。結婚や子どもの誕生、就学など、暮らしの節目をきっかけに考え始めるケースが多いものの、この先の暮らしがどうなるのか、将来のビジョンが見えないと、どんな間取りや空間にしておけばいいのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、toolbox大阪ショールームのスタッフ・内藤の住まい。築30年、73㎡のマンションを購入し、アートアンドクラフトに依頼してリノベーションしました。家づくりを決めたのは、第一子の妊娠がきっかけ。それまで暮らしていた賃貸は子育てするには手狭で、希望する広さや間取りの賃貸を探すと家賃がかなり上がってしまう……ということで、住宅購入を決めました。

とはいえ、子どもとの暮らしがどうなるかは、産んでみないとわからない。今後、家族が増えるかもしれないし、買った家にずっと住み続けるかもわからない。そこで目指したのは、未来の暮らしまで決め込みすぎない、「生活が変わっても受け止めてくれる家」。使いたいアイテムや叶えたい動線など、「今やりたいこと」はしっかり叶えつつ、余白も残した空間をつくりました。

元々の間取りは4LDK。キッチンは独立型で、細かく仕切られた間取りは、小さな子どもの暮らしにはちょっと不向き。

そこで、家族の形が変わることや、住み替えで売却する可能性も見据えて、広いLDKと2つの個室、ファミリークローゼットとして使えるストレージを備えた間取りに刷新。水回りの位置は大きく動かさず、リノベーションコストにも考慮しました。

LDKは空間を広く使えるよう、キッチンを壁付けにしました。キッチン本体と隣のシェルフは、2026年10月に発売予定のtoolboxの『アルミニウムキッチン』。内藤がもともとアルミという素材が好きだったことと、ステンレスとは異なるやわらかな光沢が気に入って採用を決めました。

水栓は、ホースを引き出し式の『スプリングホース水栓』のサテン、レンジフードには『フラットレンジフード』のホワイトをセレクト。キッチン正面の壁には、やわらかく光を反射するマットな質感の『塗装のキッチンパネル』を貼りました。

『アルミニウムキッチン』の足元には、アートアンドクラフトからの提案でリノリウムを採用。遮音性能がある床材の上に重ねて貼ることで、マンションの管理組合から求められた遮音性能を確保しました。

汚れに強く、静電気が起きにくいためホコリも付きにくいリノリウム。抗菌・抗ウイルス性もあり、小さな子どもとの暮らしを考えても採用しやすい素材でした。カラーサンプルを見て気に入った、オレンジブラウンを選びました。

お掃除ロボットが動きやすいフラットな床にしたいと思っていた内藤夫妻。床材を重ねることによって生まれるわずかな段差は、見切り材を工夫して解消しています。

リビングダイニングの床は、『遮音フローリング』のナチュラルオークで仕上げました。表面には天然木が貼られており、床で遊んだりハイハイする赤ちゃんにも気持ちが良さそう。明るい色味は、北東向きのLDKに明るい印象をもたらしています。

リビングダイニングとキッチンの床をフラットにつなげたことで、日々の掃除がしやすいだけでなく、暮らしに合わせて家具の配置を変えやすい、レイアウトの自由度も確保できました。

ダイニングセットやソファは入居時に新たに買い揃えました。「ニーチェア」の隣にあるタイル貼りのサイドテーブルは、IKEAのものに『水彩タイル』をDIYで貼ったもの。好きな家具や小物で空間を彩っていくことを楽しんでいます。

リビングダイニングに造り付けの収納をつくらず、置き家具を活用する前提にしたのは、将来、売却する可能性も考えてのこと。『リングの棚受け』と『角丸棚板』でつくった壁掛けTV下の棚も、簡単に外すことができるつくりです。住まい手や暮らし方が変わっても、手を加えやすい余白を残しました。

ちなみに、TV下の棚に『角丸棚板』を選んだのは、小さな子どもと暮らす「今」への配慮でもあります。角に丸みがあるので、ぶつかってもケガをしにくいのがポイント。

収納をつくり込まなかった一方、雑多なものは隠せるよう、キッチン奥にはパントリーを確保。扉は付けず、袖壁で程よく隠すスタイルにして、出入りをしやすくしました。

必要になったらゲートやカーテンを付けたり、収納の仕方を変えたりと、今後の暮らしに合わせて手を加えられる余地を残したつくりです。

パントリーとの境界になる袖壁は『T番タイル』で仕上げました。物件の引き渡し後に、内藤自らDIYで施工。白い壁天井で仕上げた空間の中で、立体的なアクセントになっています。

ガラス入りの木製リビングドアに取り付けたのは、『ワンタッチドアハンドル』。腕や肘で押したり引いたりして操作できるので、子どもを抱っこしている時や、荷物で両手がふさがっている時にも開け閉めがスムーズ。実は育児の強い味方になるアイテムです。

そしてリビングドアを開けてすぐの場所にあるのが、洗面所。脱衣所から独立させて、玄関とLDKを繋ぐ廊下にレイアウトしました。

洗面台は、表面に水に強いコーティングが施された『プライウッド洗面台』のバーチを使用。木のあたたかみを感じる空間にしています。コンセントとスイッチは『アメリカンスイッチ』、照明は『フラットレセップ』のアルミを縦に2つ並べて、光量を確保しながら空間にリズムをプラス。ミラー下やニッチ棚の背面に『ベンジャミンムーアペイント』を塗って色を取り入れ、洗面空間を明るく見せています。

プライウッド洗面台』は奥行きが450mmとコンパクトで、廊下に洗面をつくりたいけどスペースは圧迫したくない今回のケースにぴったりハマりました。下部には収納も備えているので、洗面まわりのアイテムを隠して、生活感が露出しすぎるのを避けられるのもポイントです。

ホース引き出し式でシャワー吐水もできる洗面水栓『ストレートホース混合栓 ホワイト』を組み合わせているところにも、見た目と実用性、どちらも欲張る内藤らしさが感じられます。

洗面台を壁のくぼみにおさめた廊下は、リビングまですっと視界が抜けて開放的。床はリビングダイニングと同じ『遮音フローリング』で仕上げ、ひと続きの床が奥行きを感じさせます。

天井にぽつりと添えた円錐形の『モデストレセップ』が、シンプルな廊下にほどよいリズムをつくっています。

洗面を独立させた分、脱衣所は家事機能を充実させました。

普段の洗濯はドラム式洗濯乾燥機に任せつつ、シワを避けたい衣類は週に1〜2回まとめて洗濯。『アイアンハンガーパイプ』にハンガー掛けして、そのままベランダへ運んで外干ししています。下のカウンターは、服を畳んだりアイロン掛けをしたりと、洗濯まわりの作業に活躍。

カウンターの下は、肌着やタオルの収納場所にしました。あらかじめ無印良品のボックスを使うことを想定してカウンターの高さを決め、市販の吊り下げラックも組み合わせています。収納を作り込みすぎないことで、コストも抑えました。

そして、家事ラクポイントは間取りにも。脱衣所の向かいにファミリークローゼットを配置することで、乾燥機から取り出した洗濯物をしまう動線や、着替えの動線をコンパクトにしています。

物を出し入れしやすいキッチンパントリー、家事スペースがある脱衣所、そしてそのすぐそばにはファミリークローゼット。一見、家事上手な人が考えた家にも見えますが、実は「片付けや整理が苦手、モノを捨てるのも苦手、衣替えも苦手」と内藤。

3.5帖あるクローゼットにはオールシーズンの家族の衣服をまとめて収納することができるので、衣替えが不要に。ハンガーパイプ収納は、服以外の荷物をがさっと収納したい時にも受け入れてくれます。さらに一部の壁には有孔ボードを貼り、そこかしこに置いてしまいがちなバッグや小物も、クローゼット内にしまえるようにしました。

クローゼットの出入り口をカーテンにしたのは、出入りのしやすさと通気性をよくするため。建具をなくすことは、コストカットにもなっています。

暮らしの中で感じている「苦手」や「不満」も、家づくりの大事なヒント。内藤は住宅購入が具体的になる前から、いつかの家づくりを思い描き、普段の暮らしの中で「こんな空間だったら」をイメージし続けてきました。その積み重ねが、家事や片付けのしやすい間取りにつながっています。

ファミリークローゼットを設けた分、主寝室には収納をつくらず、休むために必要な約4.5帖の広さに絞りました。

「休息」に特化した空間にするべく、フロアにはグリーンのタイルカーペットを敷き、枕元には『ウッドウォールパネル』を貼ったヘッドボードを造作。『ガーゼカーテン』越しにやわらかな光が注ぐ空間は、森の中にいるような落ち着きを感じさせます。

玄関の正面には、約2.7帖の個室を設けました。将来、子ども部屋として使う想定もしつつ、現在は書斎として使っています。

奥にチラリと見えるカウンターデスクは、『フリーカット無垢材』を使って壁幅いっぱいに造作。『ワトコオイル』のミディアムウォルナットで塗装しました。デスク横には『インダストリアルアームライト』を添えています。

玄関は、廊下の床との切り替えラインを斜めにして、土間部分をできるだけ広く確保しました。下足入れには『オーダー玄関収納』をフロートスタイルで取り付け、床の隅まで見えるようにすることで、空間を広く感じられるよう工夫しています。

飾り棚としても使える玄関収納の上には、『メタルラウンジライト』のアルミ乳白ボールを添えて、お出迎えの場にさりげなく華やかさを添えました。

子どもの成長や家族構成の変化、住む場所や暮らし方の変化など、若いファミリーの「これから」には不確定なことがたくさんあります。とはいえ、「今」の暮らしを心地よい空間で送りたいというのも、当たり前の願望です。

これまでの暮らしで感じていた不満を解消しつつ、今の自分たちに快適な空間を。それでいて、未来のことは決め込みすぎず、柔軟に対応できる余白を残しておく。そんな空間づくりなら、「将来どうなるかわからない」という不安も、「暮らしに合わせて変えていく楽しみ」に変わるかもしれません。

親子3人暮らしをスタートしたばかりの内藤一家。今後はリビングに遊び場ができたり、家具の配置が変わったりと、子どもの成長とともに空間の使い方も変わっていくのでしょう。そんな変化を楽しみながら、内藤の「空間づくりの妄想」は、まだまだ続いていきます。


写真:平野 愛

アートアンドクラフト

アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

紹介している商品

KB-TP013-02-G141
¥64,000
KB-PR017-01-G173
¥32,800
WL-TL009-02B-G141
¥9,900/㎡
SF-FN017-12-G183
¥128,900~
PS-BK002-02-G141
¥8,800/本
PS-CP002-06-G015
¥10,000~
LT-BR019-06-G141
¥5,300
LT-BR015-01-G141
¥3,800
テキスト:サトウ

関連する事例記事

“いつか”に備えて、部屋は増やさず、動線は整える。家族の変化を受け止める67㎡の住まい
“いつか”に備えて、部屋は増やさず、動線は整える。家族の変化を受け止める67㎡の住まい
若いファミリーの家づくりでは、子どもの成長や家族構成の変化にどこまで先回りしておくかが悩みどころ。そんな悩みへのヒントがあるのが、今回ご紹介する中古マンションリノベーション事例。収納と動線の工夫で“いつか”に備えながら、“今”の家族がのびのびと暮らせる空間を叶えました。
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
お施主様の趣味であるサウナから着想を得た洗面室、愛車が映える広々とした玄関土間。長く愛用してきた家具のトーンを内装へ活かしつつ、多様な素材で切り替えることで、場所ごとに異なる居心地を生み出しました。住まう人の「好きな雰囲気」を家全体へ丁寧に浸透させていった家づくりをご紹介します。
内と外を曖昧に繋ぐ土間空間。40㎡のルーフバルコニーを活かす、大らかなアトリエのある住まい
内と外を曖昧に繋ぐ土間空間。40㎡のルーフバルコニーを活かす、大らかなアトリエのある住まい
玄関から広いルーフバルコニーまで視線が気持ちよく抜ける、赤土色の土間空間。間取りを大胆に見直しながら、視線や光、素材の見せ方を丁寧に整えたマンションリノベーション。ツールボックス工事班|TBKが設計施工を担当しました。
昭和の邸宅の記憶をこの先に引き継ぐ。「面影残し」のリノベーション
昭和の邸宅の記憶をこの先に引き継ぐ。「面影残し」のリノベーション
今では希少となった型板ガラスに、職人技が息づく洗い出しの土間。壊すにはあまりにも惜しい昭和の邸宅を「この先も選ばれ住み継がれるように」とリノベーションした事例。古き良きものを引き立てるための素材選びや、閉塞感を取り除く間取りの工夫など、現代の暮らしに寄り添う築古再生の記録です。