今回ご紹介するのは、物件ごとに異なるプロデューサーが設計したリノベーション済みマンションを販売するブランド「TORINO」の1室。今回プロデューサーとしてtoolboxスタッフ、森が夫婦で設計を担当し、ツールボックス工事班が施工を担当させていただきました。60㎡のマンションで、元は細かく区切られた3LDKの間取り。住居としての機能にプラスして、在宅ワークや事務所としての活用も視野に入れプランニングを進めました。

Before図面。居室部分が60㎡なのに対し、40㎡の広さを誇るルーフバルコニー

初めてこの部屋を訪れたとき、真っ先に目を奪われたのは、約40㎡もの広さを誇る見晴らしの良いバルコニーでした。しかし同時に、その贅沢なポテンシャルがどこか持て余されているような、もどかしい印象も受けました。

さらに、玄関は、両脇を壁に囲まれていて狭さと暗さが目立ち、いかにも「普通」な印象。せっかく採光に恵まれた最上階の角部屋であるにもかかわらず、その良さが既存の間取りによって閉ざされてしまっていたのです。

今回のリノベーションでは、本来物件の持つポテンシャルを、最大限に引き出すためのプランニングに注力しました。

After図面。

玄関を入ってすぐ、右側の洋室と繋がっていた壁を解体し、ルーフバルコニーまで視線が抜ける開放的な土間空間へ。趣味を楽しんだり、心地よく働いたりといった多目的な使い方を受け止める、アトリエスペースが誕生しました。

入り口そのものを一番広くて光が満ちる場所に据える。この大胆な間取りが、他にはないゆとりを生み出しています。

玄関扉を開けた正面の壁には、あえて奥行きをしっかり確保した懐の深いニッチスペースを設けました。上部からのダウンライトに照らされたその場所は、お気に入りのアートや小物がまるでギャラリーの展示品のように浮かび上がり、住まう人の個性を映し出します。

このニッチが視線を受け止めることで、来客時に奥の生活空間が丸見えになるのを防ぐ、緩やかな目隠しの役割も果たしてくれます。

バルコニーからの日の光を受ける床材には、駅や公園などの公共建築で長年愛用され続けてきた『クリンカータイル』。
特有のざらりとした質感と深い赤茶色が魅力的です。屋外で使用されることが多い素材を、あえて室内に取り入れることで、外と内が曖昧に溶け合うような自由な雰囲気に。

暗く冷たい印象だった玄関は、バルコニーへと続くアトリエと一体化したことで、光と風が通り抜ける明るい空間へと変わりました。

窓際に設けられた約30cmのタイルステップは、バルコニーへの出入りをスムーズにするだけでなく、腰掛けられるベンチとしても活躍します。玄関から土足のままバルコニーへとダイレクトにつながる設計で、内と外が緩やかに入り混じる空間に。段差に腰掛けて朝のコーヒーを飲んだり、窓を開け放って風を感じながらストレッチをしたりと、様々な心地の良い情景が浮かんできます。

アトリエスペースの一角にはカウンターデスクを設けました。

パソコンを開いて仕事をする場所としてはもちろん、趣味の本を広げたり、お気に入りの道具を並べたり。帰宅途中にひらめいたアイデアを帰ってきてそのままの勢いでカタチにすることだってできる特等席です。

デスク下の収納扉には、規則的な陰影が美しい『クラシックリブパネル』を採用。足元に品の良い立体感をもたらし、シンプルな壁面にクラシカルな落ち着きを添えてくれます。

どこか懐かしさ、素朴さを持ちながらも、150mm角のキリッとしたグリッドが空間を引き締めてくれる「クリンカータイル」、リブパネルの細やかな陰影、それを背景として支える白い壁面。ラフさと洗練さがちょうどいいバランスで調和したこの場所は、住まう人の個性を大らかに受け止める、自由な暮らしの土台となります。

集中できる仕事部屋にするのか、グリーンでいっぱいにしたり、趣味の自転車をカスタムしたりと、土足でラフに過ごせるスペースにするのか。住む人のライフスタイルに合わせて、どんな日常にも柔軟に染まっていく可能性を秘めた空間です。

アトリエスペースとLDKをつなぐ廊下には、天井いっぱいまでの高さでオーダーした『オーダー框ドア』。扉を開け放つと、ドア枠がないため天井が真っ直ぐ奥へと繋がり、視界を遮るものがありません。奥へ続くLDKまで視線が心地よくぬけていき、すっきりと開放的な空間を演出します。

大ぶりなガラスを嵌め込み、視界を遮るものを削ぎ落としたその佇まい。空間を分断することなく、緩やかにつなぐ役割を担っています。

反対側から見たところ。廊下の収納下部の扉付きの部分は『オーダー玄関収納』のキャビネット部分を利用。サイズオーダーができるので、このような造作収納のように使うことができます。上部の棚板はオーダー玄関収納の色味に合わせ、塗装を施しました。

ドア越しに見えるグレーの壁面は、玄関正面のニッチ壁の裏側。ここも収納になっています。

続いてご紹介するのは、LDK。和室を解体して、一体的な空間に仕立てました。

その中心に据えたのは、『ユニキッチンシステム』に『マットカラーのキッチン天板』を組み合わせたアイランド型のワークトップ。リビング側から見ると、余計な要素を削ぎ落とした真っ白な箱のように美しく、空間に馴染みます。

アイランドを中心に回遊できるレイアウトを保ちながらも、コンロとシンクを分けるII型キッチンを採用しました。収納は内側に設けることで、リビングから見た景色はよりすっきりと。生活感を抑えながらも、作業性はしっかり確保しています。十分な作業スペースを確保した天板は、ちょっとした軽食をとるカウンターとしても使うことができます。対面側からも自然と調理や片付けに参加しやすく、複数人で立ってもストレスなくスムーズに使いこなせます。

コンロスペースも、LDK全体のすっきりとした雰囲気に合わせて計画。

レンジフードには、無駄のないフォルムが空間にスッと溶け込む『フラットレンジフード』を採用。内側の壁面には、キッチンパネル特有の反射を抑えたマットな質感の『マットカラーのキッチンパネル』ライトグレーを合わせました。お手入れのしやすさはそのままに、プレーンな表情が光を柔らかく受け止めて、周囲の塗装壁とも違和感なく馴染みます。

手元を照らすのは、壁面から電球がぽっと浮き出ているような佇まいの『フラットレセップ』を採用。主張を抑えたアイテムをバランスよく散りばめることで、リビングと一続きの心地よいノイズレスな空間にまとまりました。

床材に採用したのは、『燻蒸フローリング』。

深い色合いと、ツヤを抑え強めのブラッシング加工が施された表面が、落ち着きのある表情を描き出します。すっきりとした空間の中で、床の持つ素材感が静かに引き立ちます。

最後に、リビングの壁面をフラットに仕上げるために行った工夫もご紹介します。

日本のマンションに多く見られる天井や壁面の梁による凹凸。この部屋も例外ではありませんでした。今回のリノベーションでは、この凸凹による視覚的なノイズを減らし、すっきりとした空間を目指しました。

梁のラインに合わせて既存の壁を前面にふかすことで、梁と壁面をフラットに一体化。壁を厚くしたことで生まれたスペースには、壁面をくり抜くようにニッチを設けました。テレビ台や収納として機能させながら、ディスプレイスペースとしても活用できるようにしています。構造上の制約を解消しながら、空間に実用的な奥行きをもたらしました。

買い手が見えない中での再販物件の設計。この部屋が持つルーフバルコニーのポテンシャルを生かしつつ、光を受け止める素材選定を意識して、丁寧に整えました。

現場からは、以上です。

ツールボックス工事班|TBK

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

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毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

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テキスト:前田

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