玄関からキッチンまで、広く赤茶の土間を引き込んで。(写真提供:ルーヴィス/撮影:中村晃)

境界を曖昧にする「土」の存在

玄関から室内へ、大胆に引き込まれた土間空間。そこで時間を過ごしてみると、今まで当たり前と思っていた「家の中と外」という線引きが、問い直されるような感覚を覚えます。

土足でも、靴を脱いでも、家主が好きに線を引ける。置く家具だって固定のものでなくていい。旅先で目にした軒先のように、その日暮らし的な設えで、気ままに居場所をつくっていく。

そんな、自由で曖昧な過ごし方が、土間の上では自然と叶います。生き物として心地いい過ごし方を、無意識のうちに求めているのかもしれません。

夕暮れ時に河川敷で過ごすような、自然の中に身ひとつでいる伸びやかさを思い出します。

これまで、土間空間といえば、モルタルグレーのイメージが主流でした。そこにもうひとつ、新たな選択肢としてご紹介したいのが、温かみのある土色の『クリンカータイル』です。

公共施設のアプローチなどで、長年使われてきた存在を、あえて室内の広い範囲に。外の空気を内包した床が、家の中に健やかな居場所を生み出します。

ここは玄関なのか、アトリエなのか。役割に縛られない間が、過ごし方を広げてくれる。(撮影協力:OSTR)

「素」の焼き物

特徴は何といってもこの土肌の色。「土」と聞いて真っ先に思い浮かべるような、大地の深い色をしています。

アフリカの赤土を思わせる「クレイレッド」。見た目にもその機能性にも、力強さを宿した床です。

瀬戸や多治見の土を高温で焼き締めることで、雨水が染み込みにくく、外床用として耐えうる硬さと強度を持たせた「クリンカータイル」。

中身の密度の高さゆえに、叩くとキンッと金属のような乾いた高音が響きます。この音を表す言葉「Clink」が名前の由来になっているんだとか。

窓辺に「サンドベージュ」を。オークの床材との自然な繋がりは、この床が「土の色」だからこそ。

表面は釉薬を使わず、焼き締まった土肌の色をそのまま活かしています。長年摩耗しても美しさを損なわないための実用的な選択です。

安定した品質の中にも、原材料と火によって起こるわずかな色むらが秘められている。それによって広い範囲に敷き詰めた時にものっぺりせず、土らしい自然な表情が空間に静かな奥行きをもたらしてくれます。

土の他にも、ガラスや陶器片など様々な素材が混ざってできている床。光が差し込むと微細な粒子が輝き、まるで微生物の世界が広がっているかのような奥深さを見せてくれます。

親しみやすさを覚えるのは、見た目の温かさだけではありません。身体が触れた感触も、素焼きの器のように、ざらりと土らしい質感を残しています。

手のひらに吸い付くようなひんやり感と、その奥からじんわり温度が伝わってくる。素材そのものが熱を優しく伝えてくれる感覚があります。

穏やかなアースカラーと、人肌に近い感触。この製法だから生まれる表情が、硬質なタイルの上に居ながら、自然の中に身を置いた時のような、野生を感じさせてくれる理由なのかもしれません。

 

半永久的に使える頑丈さを、台所の足元へ。ラワンの柔らかな木肌ともしっくり馴染みます。

規律ある素朴

窓辺の一部をインナーテラスに。小さな範囲でも間延びせず、きれいに収まる150mm角のサイズ。

もうひとつ、このタイルの特徴として挙げたいのがサイズ感です。

150mm角という中判なサイズは、100mm角ほど意匠に​寄りすぎず、​300mm角ほどあっさりでもない。​現代の​住宅スケールの中で、​程よい緊張感とリズムを​与えてくれます。

輪郭は真っ直ぐに、きちっと整形されていて、手仕事のような不揃いさはありません。床に敷き詰めた時には、目地が一直線に揃います。

広い面で際立つ、整ったグリット。素朴なだけじゃない、整然と空間を引き締める役割も担います。(写真提供:ルーヴィス/撮影:中村晃)

そして、厚みはずっしり13mm。屋内用のタイルでは中々見かけない分厚さです。

例えば、空間の境目に段差をつけた時や、ベンチのように垂直に立ち上げた時。厚みが小口として現れることで、土の塊からそのまま切り出したかのような、確かな量感を感じさせてくれます。

掃き出し窓へのステップとベンチを兼ねた造作。土間から続く心地よい一体感と、アクセントになる存在感を放ちます。

見た目からもずっしりと重さの伝わる断面。中身までぎっしり土が詰まった塊であることを伝えてくれます。

土が持つ素朴さや力強さの中に、キリッと均一に揃う精度が同居していること。

このバランスが絶妙だからこそ、ステンレスやコンクリートといった無機質な素材とも喧嘩せず、互いの良さを引き立て合うことができるように思います。

もう一度「土」を思い出す

広縁のような空間の足元に。無防備になる寝床のすぐそばにあっても、ほっとする佇まい。(撮影協力:OSTR)

子どもの頃に慣れ親しんでいた「土」の感触。

都市部のマンションの暮らしでは、その感覚を思い出すことも少なくなったと感じます。コンクリートに囲まれた家の中で、土はいつしか、日常から切り離された存在になってしまったのかもしれません。

けれど、旅先で土壁の古民家に出会ったり、手触り感のある陶器に触れた時、心が動かされることはないでしょうか。普段は意識をしていなくても、潜在的に土の心地よさを懐かしんでいるような気がします。

そんな置き去りにしていた大切な感覚を、間接的に思い起こさせてくれる「クリンカータイル」。これからの住まいに気の良いゆとりを運んできてくれるはずです。

家の入り口から暮らしの中へ。光をまとい、心地のいい風が通り抜けていく。(写真提供:ルーヴィス/撮影:中村晃)

担当:土居、青 / テキスト:岩崎

床タイルに関連する商品コラム

土間タイル
土間タイル
¥4,800/㎡
気負いなく整然と
程よい色むらのある、お手頃価格の正方形300角タイル。様々なシーンにすっと馴染む、ベーシックな4色展開です。
ピクセルタイル
ピクセルタイル
¥12,300/㎡〜
最適解像度の壁
壁面の可能性がひろがる「15角」のモザイクタイル。キッチンはもちろん、リビングや寝室など広い壁面に施工するのがおすすめです。
ハニカムタイル
ハニカムタイル
¥8,200/㎡
蜂の巣レトロ
どこか懐かしさを感じる六角形のモザイクタイル。釉薬のムラや質感が特徴的です。
T番タイル
T番タイル
¥7,800/㎡
つくろう陶器の白壁
toolboxタイルの定番品として取り揃えた、正方形の白いタイルです。ニュートラルな白さと、表面に揺らぎのないプレーンな質感で、広い面を塗り替える感覚で使っていただけます。定番の100角とコンパクトな場所にもはまりの良い75角、コーナーを収める役物をラインナップ。