作家さんの展示に足を運んで手に入れた一点ものに、旅先で選んだ器や、その土地の品々。さらにはポストモダン期の希少なデザイナーズ家具に照明たち。

時間を重ねて蒐集してきたとっておきは、思わず大切にしまい込んでおきたくもなりますが、今回ご紹介する住まいは、そんなコレクションに日々触れて、共に暮らす部屋へとアップデートされた空間です。

まず印象的なのは、ワンルームのようなのびやかさと開放感を感じるLDK。お部屋の中央のラインを境に、壁・床・天井の素材を切り替えて2トーンのように分けることで、仕切りを設けずとも、同じ空間の中に異なる居心地とメリハリを生み出しています。

ダイニング・キッチンスペースは、壁面と揃えて天井もシナ材で仕上げられました。

よく見ると木目の方向を変えて市松模様のような表情を持たせたり、目透かし貼りのラインを揃えて貼り合わせていたり。細部に施された丁寧な意匠には、モダンな旅館を訪れた時のような、和の情緒を感じてしまいます。

そんな端正な背景のスパイスになっているのが、パントリーの入り口枠に効かせた鮮やかな赤!小さな面積ですが、隣に飾られたアートの色彩とリンクするような見た目で、空間とディスプレイに一体感をもたらしています。

レンジフードは『フラットレンジフード』のステンレス。バイブレーション仕上げの反射を抑えた質感が、周囲の造作や物を引き立ててくれるよう。

キッチン本体は、温かみのあるラワン材で造作されています。周囲のシナ材の明るい色調に対して、あえて濃い色味を重ねることで、空間の奥行きと、落ち着きある雰囲気を引き出しました。

手元灯として壁面に佇むのはシャルロット・ペリアンの「CP-1」。可動式のプレートで光の向きを調整できるウォールランプを、キッチンに用いる事例は新鮮ですが、作業の手元をピンポイントに照らす構造として、とても実用的。

名作照明を愛でるだけでなく、実際の生活の中で使いこなす。コレクションが日常に息づいているこの家のコンセプトがそのまま現れたような一角です。

シンクまわりも、ウォールランプと同じブラックで統一されています。選んでいただいたのは『クォーツシンク』と『ハンドホース水栓』、『キッチンディスペンサー』。シンクの正面には、こちらも同じ黒のフレームで額装されたアートが飾られています。

ラワンの木肌に、引き締め役としての黒のあしらい。お施主様が一点一点選ばれてきた深みのある民藝の器や調理器具たちと調和する佇まいになっています。

大切な食器たちは、アンティークのガラス戸棚に。こんな風に背丈を抑えた棚なら、天板部分もディスプレイを楽しめるステージとして活用できますね。

キッチンから振り返ると、明るく開けたリビングの景色が広がります。

天井を下げて板張りにした落ち着きあるキッチンに対して、リビングは躯体のコンクリートを白塗装で仕上げて。この高低差と色のコントラストによって、実際の広さ以上ののびやかさが感じられます。

壁面に並んでいるのは、80年代フィンランド製のモジュラーキャビネットやエットレ・ソットサスの「マンダリン・チェア」など、ポストモダン期の希少な家具たち。

色使いやフォルムに特徴を持つ家具たちを引き立てるように、天井や壁のつくりは潔くシンプルに。リノベーション前の既存床をそのまま活かした無垢フローリングも、程よく黄味を帯びた飴色に変化していて、ヴィンテージ家具の持つ風格にも負けない、味わい深い足元になっています。

LDKの奥に位置するベッドスペースは、間仕切り壁をつくらず、カーテンでさっと仕切れる計画になっています。

床を一段高くした小上がりの設計にすることで、ワンルームでありながら視線の高さが変わり、それぞれの場所での居心地や視界を緩やかにコントロールしています。

ヘッドボードには読みかけの本を置ける十分な奥行きを持たせて。端正な木の佇まいの中で、ライトのターコイズグリーンが効いています。

個人的にとっても気になってしまったのが、天井付近にあるこちらのディスプレイコーナー。アルヴァ・アアルトがデザインしたアルテックのウォールシェルフを、神棚のように見立てる新鮮なスタイリングです!

周囲の仕上げをシンプルにして余白を持たせたからこそ、部屋で過ごしているとこのユニークなディスプレイへと、自然に目線が惹きつけられます。

コレクター気質を自負する私にとっても、愛着のある細々とした品々を雑多に見せずにどう飾るのかは永遠のテーマ。こちらの住まいには、そんな悩みを軽やかに解決する場づくりのヒントが他にも散りばめられています。

先ほどのベッドスペースの対面にあるのは、お施主様が愛用していたキャビネットに合わせて設えたディスプレースペース。

キャビネットの足元、台輪の色に合わせて、床もブラックで統一し、家具と内装をリンクさせています。このひと工夫によって空間が引き締まり、棚の意匠がより美しく際立って見えます。

天板には、鍵や腕時計など、毎日の身支度の道具を囲うように、面白く愛らしい作品たちが所狭しと並べられています。

実用的なスペースの中に、お気に入りをぎゅっと凝縮して設える。コレクター心をくすぐるディスプレイ術です。

キャビネットの上部には、ラワン材で造作された飾り棚。棚板の継ぎ方や、金具を見せない固定の仕方など職人技の光るつくりに惚れ惚れ。

玄関横のシューズクローゼットには『アイアンハンガーパイプ』で吊るせる収納を確保。見せて飾る場所と、それを支える隠す収納が両面で計画されていることが伝わってきます。

最後に、リビングやキッチンだけでなく、プライベートな水回りにも個性が光る設えを見つけたのでご紹介します。

この住まいの遊び心を最も象徴しているのが、小さな場所に仕掛けられた差し色のテクニックです。

白と木を基調にした洗面スペースには、天板にカラーメラミンを採用。ダークグリーンに、ブラックの水栓や棚受けを合わせてキリッと引き締めました。

合わせたミラーは『棚付きボックスミラー』のバーチ。オープン棚だけでなく、ミラー上部のスペースにも小物たちが鎮座!好きなものに囲まれた場所なら、何気ない身支度時間もワクワクしたひとときに変わりそうです。

こちらは白を基調としたトイレ。既存の手洗い器を再利用しながら、カウンターにライトブルーの差し色を効かせることでイメージを一新させました。

飾るための内装といえば、真っ先に浮かぶのがモノトーンでまとめる方法。しかし、こうした色使いがあるからこそ、そこに置く物や合わせるアートの想像が広がり、最初からものを含めて設計したようなお揃い感が生まれます。

設える喜びを何倍にも膨らませてくれるような、見事なカラーワークです。

集めてきた民藝品や家具などの蒐集品に、日々触れる喜び。

この住まいには、ただシンプルに引き算をするだけではない、住人の個性を最大化するための内装の工夫が凝らされていました。

その空間に宿るユーモアは、愛する持ち物だけでも、美しい内装だけでも完成しません。施主の偏愛と、それに寄り添う設計・施工者との丁寧な対話があったからこそ、お互いが響き合う空間が生まれたのだと感じさせてくれる事例です。

(撮影:Akari Kuramoto)

ORGAN CRAFT/オルガンクラフト

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「革新を続けるプロフェッショナルチーム」を掲げる建築・空間づくりのチームです。
不動産エージェントと連携し物件購入前の相談や内見同行から伴走し、理想の実現を専門家視点でサポート。横浜・東京・大阪を拠点にした設計・施工だけでなく、新潟の自社工場でのオーダー家具・什器製作まで一貫して手がけ、空間全体を一つの思想でデザインします。
磨き続けた技術と知識をお客様の暮らしや社会へ還元することが私たちのものづくりです。

テキスト:岩崎

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