大切に継がれてきたものだけが持つ温かく穏やかな空気に満ちた部屋。

この心地よい静けさは、そこに置かれた家具だけが醸し出すものではありません。お客様が長く愛用されてきたチェストやテーブルなど、北欧ヴィンテージ家具が持つ深みから、色の軸を抽出し、家全体で内装のトーンを揃えていきました。

外からの日差しを受けてじんわり光を湛えるのは、サペリの床。高級家具の素材としても知られる、美しい艶と深みのある赤褐色の色合いが、空間のベースを支えています。

梁や配線のないすっきりと広がる天井が、伸びやかで気持ちいい。

大切に使われてきた家具に、決して引けを取らない存在感。特別な装飾をしなくても、この床と家具があれば空間が完成してしまうかのような、圧倒的な佇まいがあります。

そんな足元と家具を際立たせるように、壁と天井は明るいホワイトで仕上げています。コントラストの強い配色も、境界にヴィンテージ家具の深い色味が入ることで、程よく調和しています。

リビングソファの正面は、テレビの大きな画面ではなく、アートを飾るとっておきの壁面。天井にはライティングレールも仕込まれていて、これからどんな照明コレクションがここを彩っていくのか、想像するだけで楽しくなります。

そんなリビングと繋がるのは、この部屋のために仕立てた造作したキッチン。設備機器特有の冷たさや、水回り感を一切感じさせないのは、細部のつくりまで丁寧に設計されているから。どこかの家具屋さんに並んでいても遜色ない、しっくりと空間に溶け込む佇まいです。

キッチン扉に選んだのは、柔らかなアイボリーのカラーメラミン。そこにしっとりとした質感の人工大理石の天板を合わせています。

そして、この組み合わせをグッと家具らしく見せているのが、特注で仕立てた木の把手の存在です。

見た目に柔らかく、握りやすいボリュームも持たせた絶妙な形は、この部屋のためだけに一から制作されたもの。

他にも側面の小口や足元の台輪部分にタモの木目を効かせるなど、細部までこだわりが注がれています。日々、使うほどに愛着が深まっていくようなキッチンです。

レンジフードには、キッチンの見た目を邪魔しない、ただの箱の様な存在感の『フラットレンジフード』を。

壁面には深みのあるブラウンのタイル。よく見ると、二丁掛の間に短い小口平を挟む変則的なパターンで仕上げられています。

すべてを同じサイズで貼り合わせるよりも、リズムと動きが生まれて、まるで織物の柄の様な遊び心を感じさせてくれますね。タイルのたっぷりとした艶が、壁付けの手元灯や外からの自然光を綺麗に映し出し、空間に良い変化をもたらしています。

シンクや水栓にも、質感へのこだわりが光ります。『クォーツシンク』に『ハンドホース水栓』の組み合わせ。

水栓はマットなブラックを選ぶことで、背面のタイルの色合いに溶け込むような見た目に。こうした色味や質感の選択も、この場所を「作業場としてのキッチン」ではなく手に馴染みのよい家具のように感じさせてくれる理由なのかもしれません。

リビングと同じサペリの床に導かれるように伸びる、玄関からのアプローチ。天井をラワン貼りにすることで落ち着きを与えています。この心地よいこもり感が、その先に広がる明るいリビングに向かうまでの期待感を高めてくれる様です。

建具は既存のドアに使われていたドアノブを再利用してアップデート。手持ちの家具と予めセットだったかの様な、深いチェリー色が印象的です。

玄関横にある個室の壁は、コーナーを斜めに切り取り、窓のようにガラスブロックがはめ込まれていました。このガラスブロックが通り道となり、玄関横からの柔らかな自然光を届けてくれます。

玄関ドアからシームレスに続くのが、こだわりの土間空間。自転車など外で使うものをそのままスムーズに格納できたり、趣味のバイクグッズをまとめておける場所になっています。

奥に置かれたスチールロッカーは、特注したかのように空間サイズぴったりに収まっています。お持ちの家具に合わせて間取りを計画できる、リノベーションならではのジャストフィット感です。

そして、この土間を特別な空間にしているのが、どこかヴィンテージマンションの共用部を思わせる、深みと艶のある赤茶色のタイル。土間の定番であるモルタルではないチョイスが、空間全体の色の軸を崩さず、お気に入りの愛車を一層魅力的に見せてくれています。

タイルの艶に映り込む、外の光と色彩。爽やかな青い光との対比が綺麗。

この赤茶色のタイルは、右手側にある、収納の奥までたっぷりの広さで使われています。

室内のサペリの床と同じトーンで揃えられているため、空間が分断されず、奥へと広く繋がっていく様な心地よい連続性が生まれています。

マンションの玄関はどうしても狭さを感じてしまう場所ですが、こうして土間を贅沢に広げることで、ドアを開けた瞬間に、ゆったりとした印象をもたらしてくれそうです。

廊下の中腹に位置するのが、ウォークインクローゼットと洗面脱衣室です。一歩中に足を踏み入れると、深みのある煉瓦色に包まれます。

家のベースにある「色の軸」に、全身が包まれることで、ガラリと気分が切り変わるような、特別な空気が流れています。

さらに、洗面脱衣室の床には、サウナをこよなく愛するお客様の声を手がかりに、水濡れに強い床タイルを採用しました。お風呂上がりにも安心して歩けるよう、日々の使いやすさにも配慮されています。

ふたつの床材を繋いでいるのは、真鍮色の床見切り材。小さなディテールが、質感を引き上げてくれます。

そう言われてみれば、サウナや温泉に入る前の心地よい足触りを思い出す様な床。足音が吸い込まれていくようなくぐもった感覚も、足裏から伝わる凹凸も、非日常を感じさせる仕掛けです。

イエローオークのタイルで囲まれた洗面スペース。質感豊かな壁と天井にぼんやりとした光が広がり、温かみのある雰囲気を演出しています。

洗面台には空間の横幅に合わせてサイズオーダーした『人工大理石の洗面カウンター』を。そこに『壁付けセパレート混合水栓』の「ブラック」を合わせることで、印象をキリッと引き締めています。

この洗面室を彩る煉瓦色は、寝室にも。住まい全体の「色の軸」がここでも徹底されています。

ヘッドボード側の壁から天井にかけて、ぐるりと大胆に貼り分けた煉瓦色のクロス。低めの位置に2灯配置した壁付け照明の灯りと相まって、心地よい仄暗さをもたらしています。

包み込まれるような、安心感をもたらす色彩は、眠る前のひと時を、静かで穏やかな気持ちへといざなってくれそうです。

お気に入りの家具が持つトーンを、そのまま空間の内装に宿した家。軸となる深い色のバランスはぶらさずに、多様な素材へ切り替えていくことで、場所ごとに異なる居心地が生み出されています。

家づくりにおいて「愛着ある家具をどこに置くか」という計画は、ほんの始まりに過ぎません。色彩計画や質感の組み合わせ、さらには足裏で感じる確かな足触りや、心が安らぐ照明の仄暗さに至るまで、住む人の「好きな雰囲気」を観察することの大切さに気づかせてもらえる事例です。

(撮影:Akari Kuramoto)

ORGAN CRAFT/オルガンクラフト

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「革新を続けるプロフェッショナルチーム」を掲げる建築・空間づくりのチームです。
不動産エージェントと連携し物件購入前の相談や内見同行から伴走し、理想の実現を専門家視点でサポート。横浜・東京・大阪を拠点にした設計・施工だけでなく、新潟の自社工場でのオーダー家具・什器製作まで一貫して手がけ、空間全体を一つの思想でデザインします。
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テキスト:岩崎

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