今回ご紹介するのは、夫婦+子ども2人の家族が暮らす73㎡のマンション。

子どもたちは個室が必要な年齢で、子ども部屋2つと夫婦の寝室を確保した、3LDK+WICという間取りにリノベーションしました。

リノリウムの床と畳がシームレスにつながるLDK。

73㎡の面積は狭くはないものの、4人で暮らすには決して余裕たっぷりとは言えない広さ。それでも、できあがった空間からはとてもゆったりとした印象を感じます。

LDKは17.5帖と、広さだけを見れば一般的。ですが、それ以上の開放感を感じるのは、視界に入る要素を丁寧に整理しているから。

TVの背面は壁をふかして、裏に配線や換気ダクトを隠蔽。ふかし壁を利用してニッチ収納も造作。

例えば、壁と床天井の境目に巾木や廻り縁を貼らなかったり、ドアや収納扉を天井まで伸ばしたり。窓まわりの凹凸を垂れ壁や袖壁をつくって面を揃えたり。

空間の中に現れる「線」や「凸凹」を極力減らすことですっきりとした印象をつくり、水平に広がっていく視界の伸びやかさを生み出しています。

寝具を収納できる押入れを備えた畳スペース。布団2つが敷ける広さです。

開放感を生み出す工夫は、間取りにもあります。

リビング横の畳のスペースは、実は夫婦の寝室。就寝時は布団を敷いて、日中は畳リビングとして使える、フレキシブルな場所です。

天井にはカーテンレールが埋め込まれており、必要な時だけカーテンで仕切れるつくりに。壁で囲うのではなく、寝室もLDKの一部として取り込むことで、空間の広がりと視線の抜けをつくりました。

カウンターデスクの横には可動棚があり、使いたいものをその場にさっとしまえるつくり。

キッチンの向かいには、ちょっとした作業や仕事ができるカウンターデスクを設けました。隣にあるドアの奥は、ウォークインクローゼットです。

閉じた個室の中に機能を詰め込むのではなく、LDKを中心とした生活動線の中に必要な場所を散りばめることで、限られた面積を無駄なく使いながら、暮らしやすさもつくっています。

キッチンを囲む腰壁のコーナーやダイニングテーブルでも曲線を取り入れています。

もうひとつ、空間を構成する素材や色の主張を抑えているのも、ゆとりを感じる空間づくりのポイント。

床はグレーベージュのリノリウムと、ベージュの畳。リビング側の壁はクレイカラーの塗り壁風クロス、天井はあたたかみのあるホワイトの塗り壁風クロスで仕上げ、キッチンの腰壁や一部の建具にはシナ合板を採用しました。

ベージュとシナ合板を基調にしながら、やわらかく光を受ける素材使いで、整然とした空間にリラックスした雰囲気を添えています。

水栓は『浄水器付き切替混合栓 アングルネック クローム』、その両隣には洗剤用とソープ用の『キッチンディスペンサー』を設置。『ビルトイン食洗機』も採用しました。

そして、このLDKの奥行きと開放感づくりに大きく寄与しているのが、キッチン。

コンロとシンクを分けたⅡ型キッチンで、対面カウンターにしたシンク側カウンターは、吊り戸棚などの視線を遮るものを設けず、リビングダイニングへ視界が開けるようにしました。

引き出しもダストボックス用引き出しも、食洗機の面材も天板も全て『ユニキッチンシステム』で構成。カラーはホワイトベージュ。

一方、壁付けにしたコンロ側カウンターは、端から端まででなんと6.3m! 上部にはシナの『オーダー吊り戸棚』がずらりと並び、収納力は抜群。出しておきたいものと、隠したいもの、両方にしっかり応えるキッチンです。

コンロ側カウンターもシンク側カウンターも、キャビネットやパーツを選び、天板と組み合わせて構成できる『ユニキッチンシステム』を使ってつくられています。

この家のリノベーション設計を手がけたY/A Design.stdの安田雅典さんと秋元雅都さんは、「6mを超えるキッチンのデザインとコスト、そして今後のお客様の家での再現性も考えて、造作するのではなく『ユニキッチンシステム』を採用しました」と話します。

キッチンの奥はパントリー。その先は子ども部屋とホールにつながる、回遊性のある間取り。

キッチンをゼロからオリジナルで造作するとなると、見た目のデザインだけでなく、収納計画や金物の選定、コンロや食洗機といった設備機器との寸法調整など、一つひとつ確認して設計する必要があります。さらに、大工や職人による現場造作も必要になり、手間もコストもかかります。

その点、『ユニキッチンシステム』は、金物まで組み込まれたキャビネットをサイズオーダーしたり、組み合わせたりしながら、空間やレイアウトに合わせたキッチンをつくることができます。既製品でありながら、6.3mという長さやⅡ型の構成にも柔軟に対応できる特徴が、今回のリノベーションにぴったりだったのだそう。

オーダー吊り戸棚』の間に浮かぶのは『フラットレンジフード』。ガスコンロ ガラストップ(BK)3口も採用いただきました。

柱がある部分は、『ユニキッチンシステム』でオーダーした天板を現場で切り欠き加工し、キャビネットの面が揃うようにおさめました。

柱部分のキャビネットのみ造作していますが、『ユニキッチンシステム』は、扉の面材に使われている高圧メラミンの色番号が公開されているため、造作部分にも同色の高圧メラミンを使用。既製品と造作の境目を感じさせない、ひと続きのキッチンに仕上げています。

淡いピンクを差し色にして明るい雰囲気に。水栓は『壁付けセパレート混合水栓』のサテンをセレクト。

素材や色を揃えながら、必要な機能をすっきりと納める考え方は、洗面空間にも共通しています。

洗面は、『ミニマル洗面台』のシナと『クロップドミラーキャビ』のシナで構成。サイズオーダーができる『ミニマル洗面台』を壁幅いっぱいに納め、幅1180mmのミラーキャビネットと組み合わせることで、既製品でありながら、まるで造作したような一体感のある洗面に仕上げています。

各部屋のドアもシナで統一。壁に添えた照明は埋め込みレセップを使い、電球だけが浮かんでいるような見た目にしています。

そして、余計な線や凸凹のないノイズレスな空間は、玄関ホールから始まっていました。

床には、LDKまでひと続きになるリノリウムを採用。床と壁がぶつかる部分は、入巾木と呼ばれる部材を使った「目透かし」と呼ばれる納まりにし、建具も枠のない取り付け方にしています。

床から天井まですっと壁が伸びていく、静謐な印象を覚える空間になっています。

面が揃っていない2つの掃き出し窓は、垂れ壁と袖壁で凸凹を無くし、水平に広がる景色を強調しました。

4人家族に必要な機能や、日々の暮らしやすさにしっかり応えながら、ゆとりを感じる余白をつくり出した今回の住まい。

既製品を、単にコストを抑えるための選択肢として取り入れるのではなく、その特徴を設計的に読み解き、サイズや素材、納まりまで丁寧に計画することで、洗練された佇まいをつくり上げました。

暮らしの動線や、空間の中の線、素材と色。特別な仕掛けを重ねるのではなく、ひとつひとつを整え、束ねていく。そうした設計の積み重ねが、暮らしの現実と心地よさを無理なく両立させています。


撮影:植村崇史

Y/A Design.std 一級建築士事務所

Y/A Design.std 一級建築士事務所

奈良県生駒市・愛知県名古屋市を拠点に、住宅設計・マンションリノベーションを手掛ける、安田雅典と秋元雅都による一級建築士事務所です。設計だけでなく、営業や現場管理まで経験した二人の建築家が、デザインや使い勝手はもちろん、予算や施工性、見積調整まで全体を見渡しながら、住まい手とともに家づくりを進めていきます。

土地を買う前、中古物件を選ぶ前、ハウスメーカーや工務店で迷っている段階からの相談にも対応。家づくりにまつわるさまざまな迷いや悩みを、一つひとつ紐解きながらサポートしています。

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