築30年ほどのマンションの1階。リビング側はとても日当たりのよい、62.58㎡のお部屋です。再販物件としてリノベーションをするにあたり、売主さんである地元の不動産会社兼工務店が設計を依頼したのは、ツールボックス工事班(以下、TBK)を独立したshkari 小林さん。
必要なところは最低限整えつつ、物件の購入者さんが後から壁をつくったり、床を貼ったりと自分好みに手を加えていくためのベースとして余白残しのスケルトンを丁寧にデザインする。そんな考えを元に、物件がリノベーションされていきました。
現地から一緒にインスタライブもやらせてもらったのですが、その物件を改めてご紹介します。
土間越しにワンクッションおいた個室つくり
玄関を入ると奥のリビングまで土間が広がるつくりになっています。ライトグレーのモルタル床と天井も躯体現しにダクトが通る、いわゆるなスケルトンリノベと思いきや、パキっと真っ白ではない塗装壁に、『木製ガラス窓』の細い木フレーム、『オーダーフラッシュドア』のシナの扉が、やわらかさを添えています。木部は「ルビオモノコート」で、すこしくすんだ色味に着色され大人っぽい印象に。
共用廊下沿いの外部に面した窓からワンクッション置いて、個室があるつくり。個室には、大きな「木製ガラス窓」で光と風を取り入れられます。
玄関脇の壁から壁まで幅1m程のスペースは土足のまま利用できる靴箱兼ちょっとした物置きスペースに。子供の外遊び道具や、アウトドアグッズなどの収納にもよさそうです。
ちなみに、この間取りにすると個室側のエアコンダクトがこの土間スペースを横断して外廊下側に抜けていくことになります。今回は、そのダクトが通るためにふかしいた壁のところに「フラットレセップ」を2灯埋め込み、縦使いで設置したのだとか。
約4畳程の小さな個室は、シングルベッド2台は並べられる大きさ。寝室に、子供部屋、ワークスペースにと活用できそうです。
玄関側から入る際になんとなく部屋の雰囲気は見えるけれど、足元まではしっかり見えない、そんな距離感となっています。
やわらかな木をアクセントにさしこんで
個室側は、壁の一面だけ、床から1050mmの高さにヘッドボードかわりにもなる腰壁を立ち上げました。まもなく発売予定の『スリットパネル』でリズム感を付けて。10cmほどの奥行きのある上部には、ちょっとした小物が飾れます。
実はこの壁、リビング側からのエアコンのドレン配管隠しも兼ねているそう。
部屋から室内窓越しに外廊下側を眺めたところ。外廊下から直接個室に面さないため、採光を確保しながらプライバシーも担保できています。
「木製ガラス窓」くせのないスプルース材のシンプルであっさりした木目は、外壁側のブラウンのアルミサッシに比べ、あたたかみのある窓辺の風景をつくりだしてくれます。
オープンな洗面空間は、モノ選びと納め方に工夫あり
玄関から続く廊下沿いには、オープンな洗面スペースがあります。お風呂場の脱衣所は、洗濯機も置かれていてコンパクト。来客時の使用も考え、あえて洗面は外にだしたそう。
リビング側から、朝は気持ちのいい光が届きます。
すっきりしつつ、なめらかなカーブが美しい『ウェルラウンドシンク』に『クロップドミラーキャビ』のサンドを合わせて。
「クロップドミラーキャビ」は、ミラーの内側に収納があるつくりなので、外寸の奥行きが180mmとややボリュームがあります。廊下幅が限られるため、既製の収納ミラーをそのまま付けると存在感が強くなりすぎる。そこで壁厚を利用してミラーの本体を半分程埋め込むことで、収納量は確保しながら出幅寸法だけを抑え圧迫感を軽減しているのです。これはナイスアイデア!
さらに、今回は現場造作アレンジで、壁に埋め込まれた部分に、小さな家具用コンセントを追加で作り付けていました。外にもドライヤーなどに使うコンセントがありますが、これなら、電動歯ブラシなどを充電しながら仕舞えます。これは埋め込み設置含め、マネしたい人が多そうです。
ミラー両サイドには、玄関土間と同じ「フラットレセップ」。電球だけがポコっと飛び出るカタチで、明かりをとって。
ミラー上部と側面の壁には2種類の『ホテル金物』を使い分け。壁の取り付け部に座面がないすっきりとした立ち上がりが効いていますね。
ニュアンスある色合いの塗装壁。洗面正面の水がかかる立ち上がりには、ほんのりピンクみの入ったグレータイル、隣のシナ「オーダーフラッシュドア」は、『ルビオモノコート』で少しグレーかがった色合いに。塗装、タイル、木部、金物。それぞれの色味を近いトーンで揃えつつ、素材感だけを変えることで、シンプルながらどこか上品な空気が生まれています。
すっきり廊下は、建具と設備の配置に配慮
廊下の洗面の背面には、同じく「オーダーフラッシュドア」のシナを引き戸として納めたバスルームがあります。こちらも、枠が見えてこないすっきりした納まり。水周りなので、廊下より一段高くなっています。
シナの扉の横にあるのは、インターフォンを収容したニッチの棚。インターフォンは、存在感が大きいのでなるべく目立たず、それでいて使いやすい場所に取り付けたいものですが、今回はうまく隠せる場所がなかったため、逆により存在感あるフレームの中に納めたそうです。
ドアやニッチを壁面とフラットに納めることで、設備ダクトなどは露出した廊下でありながら雑多な印象を抑えています。
ミニマルすぎず、設備すぎずなキッチン空間
そして、開放的なリビングルームとキッチン空間。キッチンの左奥のスペースは冷蔵庫置き場兼パントリーです。
キッチンは、壁付けで『ユニキッチンシステム』の引き出しタイプを。サイズオーダーをしつつ、壁際は、カーテンの引き込み用スペースにわざと少し空けてあります。手前側は、別途、作業台兼収納を用意しました。
正面の壁は、廊下の洗面周りともカラーのトーンが近い縦長のタイルを合わせて。「ユニキッチンシステム」は、微妙に異なる白系5色からメラミンの色を選べるのですが、今回はこのタイルに合わせて「グレーベージュ」を選択。
手元を照らす照明は、こぶりなペンダントライトを3連使い。ここは、ライティングレールが入っているので、物件の購入者さんが自分好みの照明を付け替えできるようになっています。
小林さん、「ユニキッチンシステム」を使ってくれるのは3件目なのですが、
「“建材感”を消してくれているキッチンであることがまずありがたい。その中でも『がんばってミニマルにしました』みたいな感じもなく家具として馴染んでくれるので、設計側としては重宝してます」とうれしい感想をいただきました。
もはや意匠?LGS露出使いのその訳は?
キッチン側からリビングをみたところ。広いリビングは、希望に応じて、梁下で仕切ってプラス1室つくれるように考えられています。
さて、最後に玄関からリビングに至るまで、写真に何度か映り込んでいるシルバーの縦ルーバーについて触れておきましょう。
そう、これ、現場の人にはお馴染の軽量鉄骨下地、LGSと呼ばれるもの。
「部屋全体でその部分に壁が欲しいなという人も、いらない人もどっちもいると思うんですが、何かあるのが落ち着くかなというところには、この形式のルーバーをいれました」と小林さん。
そのまま、このLGSを下地として面材を貼って壁にしてしまっていいし、あえてこのまま意匠として見せてもよし。再販物件という、見えない将来のお客さんに向けてつくった物件だからこそ出てきた、可変性を残したアイデアですね。
いわゆるスケルトン仕上げと言われる、シンプルなつくり。ところどころポイント使いされた木の要素や、全体の色づかい、細かな納まりとのバランスの中、本来は下地材であるLGSが、現場感もなく、空間をゆるやかに仕切る意匠として機能しているのも印象的でした。
購入者さんは、この空間にどう手を加えていくのか。楽しみですね。ありがとうございました。
然(SHIKARI)/ 小林 孝寿
TBK、ツールボックス工事班から独立。設計から施工管理まで一貫して行います。スケルトンベースでも上品に、素材の質感を引き立て、ディティールにこだわるのを得意としています。
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