「ガランとした空間」と「しっかり閉じた場所」の相反する要望を70㎡に
今回の住まいは、築43年のマンション。「ガランとした空間に住みたい」そんなお施主様の希望から、リノベーションが始まりました。
思い描いていたのは、何もない部屋ではありません。出ているものはできるだけ少なく、収納は扉つきでしっかり隠せるように。大きな空間に家具をゆったりと配置して、広がりや余白を楽しめる。そんな「ガランとした空気感」を求めていました。
自分の惹かれる理想をはっきり持っていたお施主様が新しい暮らしの場所に選んだのは、窓が多く、最上階ならではの天窓もある住まい。光や開放感をつくるポテンシャルを秘めている一方で、もともとの間取りは2LDK。部屋は細かく仕切られていて、思い描いていた空間とは少し違います。
内装も木目調が中心でしたが、好きだったのは、コンクリートの躯体現しのようなラフな表情や、グレーや白を基調とした雰囲気。
「せっかくなら、自分の好きな素材や仕上げに変えたい」そう考えていたところ、既存のものを活かしながら住まいをつくるツールボックス工事班|TBKの考え方に共感し、ご相談いただきました。
「ガランとした空間」と聞くと、すべてをひと続きにしたワンルームを想像するかもしれません。
ただ、日々の暮らしに目を向けてみると、寝るときには音を気にせず過ごしたい、在宅ワークのための集中できる場所が欲しい、多くの服をしまう、収納も欠かせない……など「何もないワンルーム」にしたい訳ではなく、暮らしに必要な機能はきっちりと分けながら、メインの空間には開放感を残す。
要望を整理していく中で見えてきたのが「余地のある部屋」という考え方でした。
決まった家具の配置や暮らし方を最初からつくり込むのではなく、これからの暮らしに合わせて使い方を変えられる。そのために、必要な機能は小さくまとめ、LDKをできるだけひと続きの空間として残す。
2LDKから1LDKへ。
思い描いていた「ガランとした空間」を、そんな間取りに置き換えていきました。
必要な場所は、小さくまとめて
まずTBKが間取りで検討したのは「必要な部屋をコンパクトにまとめる」ことでした。
なかでも、今回プランを考えるうえで頭を悩ませたのが、ワークスペースのあり方です。
在宅ワークをする場所だから、ある程度はこもれる「閉じた空間」にしたい。でもただ壁で囲ってしまうと暗くなり、メインとなるLDKの「ガランとした空気感」も損なわれてしまいます。
そこで意識したのが、「閉じているけれど、開いている」 という一見相反する状態を配置の工夫で叶えること。
選んだのは、玄関近くのスペース。ワークスペースはLDKのすぐ隣に配置して、空間としての心理的な繋がりは保ちつつ、お互い直接見えない場所にレイアウト。
ワークスペースの扉にはガラスを採用。すぐ隣にあるLDKの入口にもガラス建具を使い、視線は交わさなくても、光は行き来するようにしています。
開放感をつくるのは、空間の広さだけではありません。部屋の奥まで光が届くことも、そのひとつ。
既存の窓や、最上階ならではの天窓から入る光の通り道も考えながら、必要以上に壁や仕切りを増やさないようにしました。
ワークスペースだけでなく、トイレや寝室も、それぞれ必要な機能を保ちながらコンパクトにまとめています。
例えばトイレは、個室として独立させず、洗面脱衣所とひとつの空間にまとめました。ホテルのような一体感のある水まわりです。
個室をひとつ減らして面積を節約する、というだけではありません。仕切りがなくなることで光が奥まで届き、実際に訪れてみると、明るさも広がりも想像以上。ひとつひとつを分けるよりも、むしろ気持ちよく使える空間になっていました。
寝室も、ベッドが入るぎりぎりの大きさまでコンパクトに。着替えのためのスペースを確保しながら、必要最小限の広さに抑えました。
そうして必要な場所を小さくまとめることで、LDKはできるだけ仕切りを設けず、ひと続きの空間として残しました。
「ラフさ」を作り出すための、地道な作業
できるだけ広く残したLDKでは、既存の躯体壁や梁を表しにすることに。
もともと躯体現しの表情が好きだったお施主様。どこかでコンクリートの躯体や梁を見せたいという希望がありました。
TBKがこういった要望をいただいた時には、ただ、すべてを躯体現しにするのではなく、どこをどれだけ見せるのか、お施主様の暮らしや全体のイメージに合わせて考えています。
梁は、リビングとダイニングを物理的に仕切るのではなく、ひと続きの空間の中にゆるやかな境界をつくるために。リビング側の壁は、テレビや低い収納を置き、暮らしの中心となる場所だからこそ、躯体を見せることで空間のポイントにしました。
また、今回はマンション最上階のため、天井には断熱材が全面に貼られています。断熱材を残す必要があるため、天井は躯体表しにせず、その代わりに梁と壁を活かすことに。
とはいえ、築43年ということもあり、解体してみるまで、実際にどんな表情が出てくるのかはわかりません。
いざ解体してみると、梁にはコンクリートを流すときの木枠の破片が残り、壁にはボンドの跡が残っていました。
そんな、いかにも古い建物らしいラフな表情も、今回の住まいでは残していくことに。
一方で、ただそのままにしておけばいいわけではありません。
生活するうえで支障がないように、金ブラシで表面を擦りボンド跡を取り除いたり、木の破片で怪我をしないように削って落としたり。危ないところや気になる部分には手を入れながらも、きれいにしすぎないように調整していきました。
「あくまでも自然に、やりすぎないように」。
どこまで手を入れて、どこから残すのか。その加減を見極めながら、TBKメンバーがひとつずつ手をかけています。
一見すると、何もしていないように見える躯体も、実は「自然に見える」状態をつくるための細かな調整の積み重ね。マンションがもともと持っていた古さやラフさを残しながら、今の暮らしにちょうどいいところまで整えました。
雑音をできるかぎり減らす
古い躯体のラフな表情を残した一方で、LDKの中にある梁や柱などの凹凸は、できるだけすっきり見えるように整えました。
ひと続きの空間だからこそ、視界に入る線や出っ張りが増えると、空間全体が少し騒がしく見えてしまいます。
そこで、梁や柱の見え方を確認しながら、壁や建具などの位置を調整。どうしても残る凹凸は活かしつつ、できるだけ視界に入る情報を整理していきました。
なかでも、細かな調整が必要だったのがキッチンです。
LDKの中でも存在感の大きいキッチンは、できるだけシンプルに見えるように計画しました。
例えば、レンジフードの位置。
今回はレンジフードは既存と同じ位置に設置しています。位置を変えるとダクト部分が見えてきてしまい、隠すにしても梁型をつくれば、その分だけ空間に凹凸が生まれてしまうから。
そこで採用したのが、コンロとシンクの位置を調整できる『アルミニウムキッチン』。
4メートルという長さだけ聞くと大きく感じますが、実際に空間に置いてみると、思いの外圧迫感がありません。必要な機能をしっかりと備えながらも、LDKの広がりを邪魔しない。そんな佇まいも「アルミニウムキッチン」の特徴のひとつです。
キッチンの横には、同じシリーズの「フレーム収納 カウンター2連」を組み合わせました。フレーム収納は、サイズオーダーができ、引き出しの数を自由に組み合わせられるため、今回のように位置関係に制約がある場合にも、納まりを調整しやすい仕様です。
さらに、既存のレンジフードのダクト開口部は四角形でしたが、新しく設置するレンジフードは丸ダクト。見た目にはほとんど影響しない部分ですが、きれいに納めるためには、見えない構造側での調整が必要でした。
見えないところをきちんと整えることが、最後の見た目の美しさにつながります。
シンプルに見えるものほど、つくる側は気を遣う。
そんな細かな調整の積み重ねによって、LDKの中に余計な線や凹凸を増やさず、すっきりとした景色をつくっています。
つくり込みすぎず、これからの暮らしへ
必要な場所を小さくまとめて、LDKにはできるだけ何も置かない。けれど、「ガランとした空間」は、何もないことが目的ではありません。
暮らしていくなかで、植物を増やしたり、家具を置いたり。そのときどきで、ちょうどいいと思えるものを選んでいける。そんな余白を残しておくことも、今回の住まいでは大切にしました。
必要なものは、きちんとある。けれど、最初からすべてをつくり込まない。
「ガランとした空間に住みたい」という最初の言葉を、ただ広いワンルームにするのではなく、必要な機能を整理することから考えていった今回のリノベーション。
暮らしながら、少しづつ選んでいける。そんな未来への可能性に満ちた住まいに整えました。
紹介している商品
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
オーダーメイドリフォームのご相談はこちら→TBKに相談する
リフォーム相談会定期的に開催中 詳細はこちら→コラムを読む
毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。
関連する事例記事