周囲の光や景色を淡く映し出し、こだわりのインテリアや日々の食卓を鮮やかに引き立ててくれる「アルミニウムキッチン」。
扉付きでしっかりとした佇まいは、一見すると施工難易度が高そうに感じるかもしれませんが、実はこのキッチン、アルミニウム素材の特性を活かした、合理的なつくりになっています。
まず、現場の施工において何よりメリットになるのが、パーツがフレームと面材に細かく分かれて届くこと。完成品で届くキャビネットキッチンに比べて、搬入のボリュームが小さくなります。
重さもステンレスの約3分の1と、圧倒的な軽さ。狭い通路や階段を使っての搬入時の手間や負担削減も期待できます。
すべてのパーツは、コンマミリ単位の精度で工場カットされて届きます。現場で細かく切ったり削ったりといった「現場合わせ」の微調整が必要ないため、熟練の技がなくても、高い精度で仕上げることが可能なつくりになっています。
今回組み立てていく「アルミニウムキッチン」は、こちらの写真にある「対面型 コンロ&シンク」対面側 扉ありタイプです。
手順としては、まず「キッチン本体側」と「カップボード側」のフレームをそれぞれ組み立てて連結させます。骨組みができあがったら「パネル」や「天板」を取り付け、コンロや水栓などの機器を設置。最後に「引き出し」や「開き扉」を取り付ける、という流れで進んでいきます。
全体の概要を掴むと、いかに構造がシンプルで合理的に設計されているかが分かります。ですが、実際の現場での施工性や、細かい部分の収まりは果たしてどうなのでしょうか。
そこで今回は、商品開発メンバーが実際に自分たちの手で組み立てを行い、検証してみました。入社2年目という若手ながら製品を熟知した2人が、このキッチンならではのメリットを肌で体感しながら進めた、リアルな施工検証の様子をレポートしていきます。
キッチンの“骨格”。アルミフレームを組み立てる
まずはキッチンの骨格となる、フレームを組み立てていきます。こちらの工程は作業ボリュームがあるため、主に気を付けるべきポイントに絞って解説していきます。
このアルミフレーム、家庭用のキッチンとしては見慣れない部材ですよね。でも実は、絶対に変形が許されない工場の精密機械の土台として、長年日本のモノづくりを支えてきた、実績ある素材なんです。頻繁に組み替えが必要になる工場の生産ラインに対応するため、溶接なしで、誰でも素早く頑丈に組み替えができる構造になっています。
今回のキッチンにおいても、組み立てに必要な道具はトルクスドライバーとプラスドライバー、六角レンチのみ。
連結も下記の通り、とてもシンプルな手順で完了します。
写真でみていくとこんな感じです。
各部材には、連結すべきパーツを取り違えないように、番号がふってあります。同じ番号を合わせて、ボルトが締めやすいように部材を床に寝かせます。
アルミフレームの溝には、ボルトの受けとなる「ナット」があらかじめ仕込まれています。その「ナット」のビス穴に合わせて「横つなぎフレーム」を置きます。
ドライバーでボルトを緩く締めて「横つなぎフレーム」を仮留めします。
本締めの位置まで「横つなぎフレーム」と「ナット」をセットでスライドさせて移動。位置が確定したら再びドライバーで本締めします。
基本的な連結の仕方は、たったこれだけ。最初は電動ドライバーの扱いに慣れなかった二人ですが、一度やってみればすぐにコツを掴み、スムーズに組み上がっていきます。
基本はシンプルな組み立て方法ですが、場所によって注意すべきポイントがいくつかあります。順を追って見ていきましょう。
引き出し・開き扉が付く面は15mmセットバックが必要
「キッチン本体側」の引き出しがセットされる面については、フレームの端から15mm奥へ引っ込めた(セットバックした)位置に「横繋ぎフレーム」を取り付けていきます。
この取り付け位置がずれてしまうと隙間ができたり、扉のガタ付きの原因となってしまうため、少しだけシビアになる必要がある場所です。
背板がつく面は、フレーム同士を面合わせ(フラット)に
先ほどの扉が付く面の対面、「背板」が付く場所は、フレームの端と「面(つら)」をピッタリ合わせて「横つなぎパーツ」を取り付けます。
こちらも、取り付け位置がズレてしまうと、キッチン全体の歪みに繋がってしまうため、位置合わせはシビアに行う必要があります。より真っ直ぐに揃えるために、先ほどの治具のフラットな面を当て木のように使いながら位置合わせをしても良いかもしれません。
フレームの溝に「ナット」が入っていない時の対処法
アルミフレームには、ボルトの受けとなる「ナット」が予めセットされていますが、稀に運搬途中の振動などで抜け落ちてしまうことがあります。
その場合は、一緒に梱包されている「Tナット予備」を使って対応できます。
フレームの連結作業は少しだけ力仕事に
基本ポイントを抑えてしまえば、フレームの組み立てはどんどん加速していきます。ただ、中央の「横つなぎフレーム」を連結するときだけは、これまでのように部材を床に寝かせることができません。
少し入り組んだ狭い場所に手を伸ばして、ボルトを締めていくことになるため、ちょっとだけ体幹が試される場面です。
引き出し側と同じ手順で、開き戸側のフレームも無事に組み上がったら、2つの大きなユニットを連結していきます。
実際にやってみると、ここは2つのユニットをぐっと引き合わせて、隙間をなくしながらネジを締めていく必要があるため、想像していたよりも力がいる作業でした。
今回は2人協力しながら作業できたのですが、必要に応じてクランプなどを用いながら組み立てていくのが、きれいに仕上げる近道かもしれません。
6箇所のネジをすべて締め終えれば完成です!
途中、扉のセットバック寸法を間違えてしまい組み立て直すなど、ちょっとしたハプニングはありつつ、2時間ほどで組み立てることができました。今回の「対面型」はキッチン2台を組み立てているようなボリューム感でしたが、「壁付け」タイプであれば作業量は半分ほどなので、フレームの組み立てだけであれば、1時間ほどで終わってしまうかもしれません。
まだアルミのフレームが組み上がっただけの段階ですが、キッチンの輪郭がはっきりと見えてきて、完成形にかなり近づいたような気がします。
今回の組み立てでは、作業スピードアップのために電動ドライバーを導入していましたが、結論から言ってしまうと、手回しのドライバーで進めるのが確実でおすすめでした。ボルトがどこまで締まったかという感覚は、やはり手で回した方がダイレクトに伝わると感じます。
特に、トルクスや六角穴付きボルトは、プラスネジと違い「限界が来ても工具が滑って逃げてくれない」という特徴があります。電動ドライバーのパワー任せに勢いよく回転させすぎると、ネジが切れてしまったり、アルミ側のネジ穴を痛めてしまう原因に。
もし電動を使うときは、最後の半回転を締め心地を確かめながらギュッと手で本留めするのが、失敗しない大切なコツです。
仕上がりの要は「水平出し」。フレーム脚を床に固定する
続いては、組み上がったフレーム脚を床に固定していく工程です。
ただ、今回はショールームに設置する仮設のキッチンということもあり、この記事の中では実際に床への固定は行っておりません。実際の施工環境とは異なりますが「本来はこういう流れで進むんだな」というイメージとして見ていただければ嬉しいです!
床に固定する前に、まずは給排水管とガス管が立ち上がっている場所に「配管隠し」の部材を入れ込んでおきます。
この「アルミニウムキッチン」は、床とキャビネットの間に隙間を持たせた、軽やかな見た目が特徴。奥まで視線が抜けることで空間の広がりを感じさせてくれるのですが、その隙間の先に見える配管がちょっと気になる……という場合に、程よく目隠しできる、専用のパーツがオプションで選択できるようになっています。
「配管隠し」を仮置きしたら、キッチンを設置する正確な位置にフレーム脚を合わせます。ここで登場するのがフレーム脚の先についてるアジャスター。少しずつ回しながら、キッチン全体のレベル調整(水平出し)を行っていきます。
しっかり水平が取れたら、フレーム脚を床に固定していきます。フレームに予めセットされている「床固定用金具」を床の位置までスーッと下げて、ネジを締めて固定します。
ちなみに、今回組み立てているのは「対面型」ですが、「壁付け型」は背面側に金具がついています。こちらも大きな手順は同じで、アジャスターで水平を取ってから、壁にビスで打ち付け固定する流れになります。
最後に、先ほど仮置きしておいた配管隠しを固定すれば作業が完了。これでキッチンの位置ががっちりとフィックスしました!
フレームから立体に!背板とサイドパネルを取り付ける
キッチン位置が固定できたら、次はアルミフレームに「背板」と「サイドパネル」を取り付けていきます。
まずは「背板」の取り付けから。
フレームには元々、棚板を載せるための「棚受け六角ボルト」がセットされています。そのままでは「背板」を差し込む際に干渉してしまうため、一度取り外しておきます。
「背板」を手前側から差し込んだら、フレームに合わせてセットし、付属の「スリムヘッドネジ」で固定していきます。
「背板」を全て取り付けたら、先ほど一旦取り外しておいた「棚受け六角ボルト」を元の位置に戻しておきます。
続いて「サイドパネル」の取り付けに移ります。「サイドパネル」取り付けに使用するのはこちらの「M3×14 六角穴付き皿ボルト」です。
こんなにも繊細なボルトを、私は建材界で初めて目にしたのですが、それもそのはず。元々は精密機械の内部やデザイン家具など「ネジ頭を目立たせたくないけれど、絶対にガタついて欲しくない場所」に用いられる部材なんです。
空間の中で常に目に入る場所だからこそ、できるだけフラットに。固定した後もミニマルな点として見えるだけにしたい。そんな美しさにこだわったからこその選定です。サイドパネルがアルミという軽量な素材だからこそ実現できた収まりでもあります。
固定する場所は「サイドパネル」一面につき6箇所。あらかじめ空いているボルト穴に合わせて、フレームに固定していきますが、アルミフレームは組み立て中の段階では、わずかに斜めに傾きやすい(菱形になりやすい)特性があります。まずは「サイドパネル」が斜めにならないようにフレームに添えます。
6箇所すべての穴にまっすぐボルトを差し込んでいきます。いきなり1箇所ずつ締め込むのではなく、6箇所それぞれを浅く手回しで仮留め、順番に少しずつボルトを締め込んで本留めするのが、部材を傷つけずに美しく仕上げる秘訣です。
実は今回の組み立て時、電動ドライバー用の六角ビットを準備していなかったため、六角レンチを使って全て手回しで挑むことに。サイズが小さく繊細なボルトな上に、地道な力作業が求められる場面に思いのほか大苦戦!
もし電動ドライバーを使う場合も、勢いが強すぎると、六角穴にビットがしっかり噛み合う前にギュンッと回ってしまい、空回りしやすくなります。そのため、一度、手回しで全体を浅く仮留めしてから、最後に本締めしていくのが良いと思います。
ちなみに、今回は「対面型」なので現場での取り付けが必要ですが、「壁付け型」の場合は「側フレーム」に「サイドパネル」が一体化した状態で届きます。そのため、この6箇所のネジ留め作業はまるごと不要になります。
1mmにこだわる繊細な「チリ調整」。天板と機器を取り付ける
次は、いよいよ天板を載せていきます。天板にも納品時には傷が付かないように、ピッタリ養生シートが貼られています。取り付け作業の邪魔にならないよう、あらかじめ端を1cmほど剥がしておきます。
軽量で歪みが少なく、シャープなアルミニウムに対して、シンクと一体の天板には、熱や傷に強いタフなステンレスを採用しています。今回の「対面型」は2,188×900mmと大きなサイズだけあって、しっかり重みを感じます。
これまでのアルミニウムの圧倒的な軽さに感動していた二人ですが、この場面は気合いを入れて持ち上げて、今までよりも慎重にフレームの上へと載せていきます。
天板を載せたら、次は「チリ(天板の出っ張り具合)」の調整です。この「対面型」の場合、左右の両サイドが1mm、前後3mmのチリを取ることを想定してつくられています。
天板を少しずつ動かし、微調整していきます。
全体のバランスを見て、位置が確定したら、いよいよ天板を固定します。天板の裏側から、付属の「天板固定用ビス」を使って、インパクトドライバーなどで打ち付けて固定してください。
天板が固定できたら、ここからはコンロや水栓などの各種機器を取り付けていきます。
コンロと水栓の設置が無事にできたら、シンク前面に目隠しのためのパネルを取り付けます。
大きな機器が収まり、だいぶキッチンの最終形になってきました。ここまでできれば全体の8割ほどが完成です。
キッチンの“守護神”!?引き出しを取り付ける
続いては、キッチンの「顔」であり、日々の使い心地にも直結する、引き出しの取り付けに移ります。まずは「内引き出し」をセットします。
セットの仕方はとてもシンプルで、まずはフレーム側にあらかじめセットされているレールを、最後まで手前に引き出します。
引き出したレールの上に「内引き出し」をそっと載せて、セットされたらそのまま奥へと優しく押し込みます。
この時、レールと引き出しが正しく噛み合ってないと、引き出した際にガタつきが出たり、スーッと静かに閉まる「ソフトクローズ機能」がうまく作動しません。念のため、何度か開閉をして、きちんとはまったか、動作に問題がないかを確認します。
「外引き出し」も同じ手順でセットしていきます。写真だと少し分かりにくかったかもしれないので、ここからは実際の手順を動画でどうぞ!
下段の深さのある引き出しには、中にしまった背の高いボトルや調理器具が倒れてしまわないよう、補助のサイドバーを取り付けます。
引き出し本体がセットできたら、扉の面材を取り付けます。
最後に扉の裏側から、把手を留め付ければ完成です。
きちんとセットするために、細かなコツがいりますが、強い力や特別な道具は必要ありません。パーツを入れ込んでいくだけで、引き出しのセットが完了しました。
それにしても、この引き出しを動かしてみて驚くのが、金属製とは思えないほどの圧倒的な軽さと、スーッと吸い込まれるようなスムーズな開閉感です。
実は、その使い心地の秘密が、扉の面材の中身に隠されています。扉の内部に使われているのが、アルミ箔をハニカム構造に成形したもの。
コストや加工の難しさから言っても、一般的な住宅用のキッチンに使われているケースはほとんどないと思います。
わずか12mmという薄さの扉でありながら、毎日何度も開閉される場所だからこそ、長年の使用で反りや歪みが生じない精度と美しさを持たせたい。同時に、レールに負担をかけない圧倒的な軽やかさで日々の動作もスムーズに支えてくれるように。
なかなか披露する機会のない、見えない部分のこだわりですが、そんな使い手への配慮が込められています。
ダイニング側の顔となる、開き扉を取り付ける
続いて、先ほどの「キッチン本体側」の裏側、「カップボード側」でキッチンの「顔」となる、開き扉を取り付けていきます。まずは扉の中にある「底板」と「棚板」をセットします。
ちなみに、この「棚板」は入れたいものの高さに合わせて2段階で調整ができるよう、「棚受け六角ボルト」の取り付け穴が開いています。
「棚板」が全てセットできたら、開き扉の取り付けに移ります。扉の裏側には、あらかじめ2箇所にネジ留め用の穴が空いています。そこに付属の「スライドヒンジ」をセットしてネジ留めします。
扉のセットができたら、フレーム脚にセットされている金具に対して「スライドヒンジ」の片側をカチッと引っ掛けるようにして連結させます。
最後に、扉を押して開閉を操作する「プッシュラッチ」を取り付けます。納品時は、別々で梱包されていますので、扉の内側にある穴に、指でグッと押し込むようにしてセットします。
組み立て後に「ちょっと扉が前に飛び出している」という場合は「プッシュラッチ」の先端を右側にくるくる回して簡単に調整できます。
扉の出っ張りを微調整できたら、全ての工程が完了です。
ここまで要した時間は、およそ3時間30分!お昼休憩を挟んでの作業だったので、完成する頃には夕方近くになってしまいましたが、朝早くにスタートすれば午前中にパッと終わらせることも十分可能なタイムです。事前の材料準備からほぼ一日かけた二人にも、達成感で晴れやかな表情がこぼれます。
完成度を高める最後の微調整をして、ついに完成!
全てが組み上がったら、最後に、全体の完成度と美しい仕上がりをさらに高めるための、大切な微調整を行っていきます。
先ほどの「プッシュラッチ」があたる扉の裏側に、付属の戸当たりを取り付けます。
次に少し引いた角度から、扉の上下左右の隙間をチェック。もし扉の傾きが気になる場合は「スライドヒンジ」のネジを回すことで、細かな微調整ができます。
「キッチン本体側」の引き出し扉に傾きが生じている場合も、同じように上下・左右・前後と傾きを微調整することが可能です。
無事に組み立てが完了した「アルミニウムキッチン」は、その後、東京・目白ショールームに展示されてデビューを果たしました。
今回「アルミニウムキッチン」の組み立てに挑戦してみて、何より大きなメリットに感じたのは、大型家具のように電動ドライバー1本で組み上げられる構造のシンプルさでした。全てのビス穴が、工場で加工されて届くので、経験が浅くても、迷うことなく、精度高く仕上げることができたと思います。
とはいえ、キッチン本体の水平出しや、ミリ単位のチリ合わせといった、細かな匙加減には、やはり現場のプロが持つ経験の差が光る部分。どれだけ製品の精度が高くても、それを引き出すプロの手による施工は欠かせません。
今回はまだ現場作業の経験が浅いメンバーによる挑戦だったため、プロの施工者の皆様から見ると少しツッコミどころがあるかもしれませんが、そこはどうかご容赦ください!
それでも、パーツ単位で搬入できる軽やかさと、歪みなく組み上がる頑丈さ、そして誰が組み立てても狂いが少ない高精度なつくりは、間違いなくこのキッチンならではの強みです。
この商品が、これからの建築現場と、新しくキッチンを迎える皆様の暮らしを変えていくきっかけになりますように。
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