夫婦+子ども2人のご家族がマイホームに選んだのは、築50年を超える平屋。奥さまのご実家が近くにあり、以前から気になっていた家だったのだそう。周辺には昔ながらの街並みが残り、その風景も含めて、この場所で暮らすことに惹かれたと言います。
リノベーション前の平屋には土壁の納屋が付いており、その部分は解体して減築。舗装されていた駐車スペースもアスファルトを撤去し、一面に芝生を敷いた広い庭へとつくり変えました。
庭に生える大きな柿の木は、この場所に以前からあったもの。長い時間この家を見守ってきた柿の木や、周辺に残る昔ながらの街並み。そうした「家の外」の環境まで日々の暮らしに取り込むように、庭先には大きな庇のあるテラスを設けました。
半屋外のテラスはリビングに面しており、掃き出し窓から出入りができます。奥さまが顔を覗かせている窓の向こうはキッチン。ごはんやおやつを窓から受け取って、そのまま“テラスリビング”のテーブルへ。家の中と庭を行き来しながら、食事やお茶を楽しめます。
窓辺には受け渡しに使える台を設け、その上には『ミルクガラス照明』を取り付けました。ちょっとしたコーヒースタンドのような設えが、窓越しのやりとりを楽しくしてくれます。
テラスがあることで、庭にも気軽に出ることができます。やわらかな芝生の庭は、まだ幼い子どもたちの格好の遊び場。走り回ったり、シャボン玉を飛ばしてみたり、夏にはプールを出してみたり。疲れたら、大きな庇がつくる日陰の下でひと休み。そんな、伸びやかな暮らしの風景が広がります。
「家の外」まで楽しもうという気持ちは、外構や外観にも表れています。
コンクリートの板材で段をつくった砂利敷きのアプローチに、舗装用の有孔レンガを敷いた玄関ポーチ。外壁には、時とともに風合いを変えていく焼杉を採用し、シグヴァルド・ベルナドッテがデザインした陶器のブラケットライトを合わせました。昔ながらの郵便受けは、リノベーション前のこの家に残されていたもの。古びた郵便受けに合わせ、インターフォンの支柱は赤錆仕上げの角パイプを使っています。
新しいものも、昔からそこにあるものも。これから家族と一緒に時を重ね、経年変化を楽しめる素材やアイテムが選ばれています。
そうした素材選びは、家の中にも引き継がれています。
高い天井と約2帖の土間が出迎える玄関には、玄関収納の扉に『木製パインルーバー折れ戸』を取り入れました。表層だけの木仕上げではない、無垢のパインで作られた折れ戸の素朴な素材感が、長い時間を経てきた木造平屋の空気に自然となじんでいます。
玄関ホールの正面に見えるのは、子ども部屋。ドアの上に設けた明り取りの窓が、視線を奥までつなぎ、開放感を生み出します。子どもたちが部屋を使うようになったら、明り取りの窓から漏れる光や気配で、様子が伝わるのもいいですね。
ドアは、この家をリノベーションした工務店・有限会社大鷹が、一つひとつ工房で作ったもの。『ワトコオイル』のミディアムウォルナットとナチュラルを1:1で混ぜた色で塗装したそう。こちらも、木そのままの表情が、空間にぬくもりを与えています。
リビングの一角に設えた洗面コーナーにも、小さな木のドアがありました。丸い陶器のつまみが、白い陶器のシンクとさりげなくリンク。2灯タイプのブラケットライトと柳宗理の「曲木鏡」が、愛嬌のある空間を大人っぽく引き締めています。
ちなみにブラケットライトは京都にある照明器具店のオリジナル品で、ヴィンテージのパーツを組み合わせて作られているのだそう。こちらにも陶器のパーツが潜んでいました。
マニアックな目線ですが、ここで目を引いたのがこちらのスイッチプレート。珍しい、横長の2口用プレートを採用しています。
実はこれ、昔から売られているもの。よく見る縦長のプレートとは違う、横一列にスリムにおさまる形が、タイル壁のラインに寄り添って空間をすっきり見せています。
そしてお待ちかね、リビングダイニングの様子がこちら。
もともとあった天井仕上げを撤去し、立派な梁を現しにした開放的な空間へと一新しました。断熱材を入れて仕上げ直した小屋裏は、あえて野地板を採用し、柿渋で染め上げて、元々そこにあったかのような風合いにしました。
フローリングに、木のキッチン、板張りの天井と、木の素材感に囲まれた空間ですが、窓辺と個室側の頭上を走る白い天井が、軽やかさを添えています。
そして視線を横に向けると、大きな開口の先にはテラスと庭。室内の伸びやかさが、そのまま外へと続いていきます。
木の素材感がたっぷりのキッチンは、オリジナルで造作。まわりには、白い『T番タイル』と『フラットレンジフード』を組み合わせました。薄いフォルムのレンジフードは視線を遮らず、キッチンからダイニングやその先の庭まで見渡せます。
料理をしながら家族と話したり、庭で遊ぶ子どもたちの様子を眺めたり。キッチンに立つ時間も、家族や外の風景とゆるやかにつながっています。
造作キッチンの天板に使ったのは、『オーダーキッチン天板』。対面にしたキッチンの背面には、ラワンの収納カウンターを設えました。
カウンターの一角には、電動グラインダーや手挽きのミル、キャニスターなど、コーヒーの道具がずらり。先ほどテラス側から見たキッチンの窓辺を「コーヒースタンドのよう」と書きましたが、あながち間違いではなさそうです。
ご主人がじっくり淹れたコーヒーをテラスで飲みながら、庭で遊ぶ子どもたちを眺めてひと休み。そんな時間も、この家ならではの日常になっています。
古い家が持っていたものを引き継ぎながら、自分たちらしい暮らしを重ね、新しい日々を紡いでいく。庭の柿の木や周辺の街並みの風景と同じように、ご家族の暮らしの風景もこの街の一部として時を重ねていくのでしょう。これから先も、この家と庭には、家族の新しい風景が少しずつ増えていきそうです。
有限会社 大鷹
三重県を中心に 住まいやお店のデザイン・工事を一貫して行っています。住まいもお店もワクワクする気持ちを念頭に、お施主さまに寄り添って日々コツコツ取り組んでおります。小さな会社ですので沢山のお仕事はお受けできませんが、あなたのワクワクする妄想を実現できるよう知恵を尽くします。お気軽にご相談下さい。
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