家族と一緒に暮らしていても、忙しい日々を送っていると、気づけば、声を掛け合ったり、一緒に過ごす時間が少なくなっていくことってありますよね。

今回ご紹介する家は、帰宅した家族にキッチンから「おかえり」を言える、通称「おかえりカウンター」を設けた住まい。ところどころで家族の気配が行き来する住まいの工夫を紹介します。

約46㎡もある大きなルーフバルコニー。

購入の決め手になったのは、目の前に広がる生駒山の景色と広いルーフバルコニー。

この眺めと開放感をどう暮らしの中に取り込むかが、リノベーションの出発点となりました。

3LDKから、光と視線がのびやかに抜ける1LDKへと間取りを変え、開放感を部屋の中まで取り込んでいます。さらに、部屋を減らしただけではなく隅にある玄関まで光を届ける工夫が施されているんです。

リビングドアのガラスパネルが光を届けています

それでは、玄関からご紹介します。

ドアを開けてまず目に入るのは、玄関とは思えないほどゆったりとしたエントランスホール。実はこのエントランスホール、元々あった部屋を一つ減らし、広く作り替えたもの。

並んで脱ぎ履きしてもゆとりのある広さと、家族の衣類がすべて入る大きなストレージを確保しています。

玄関入って正面の壁は大谷石を使用し、玄関灯には『タイニーブラケット照明』を採用しています。表面に独特な孔をもつ大谷石。光を受けて美しい表情が帰りを迎えてくれます。

素材選びのこだわりは「質感や表情にクセがあること」「時間と共に変化していくこと」だそう。自然が生み出す素材の表情や他ではあまり見ない素材の組み合わせが、この家らしさを作り出しています。

もうひとつ目に止まるのが、壁にポツンとあいた小さな開口、通称「おかえりカウンター」。 手を離せない時でも「おかえり」「ただいま」と自然に声を掛け合えます。

カウンターに採用したのは『フリーカット無垢材』の杉。

顔を覗かせられるくらいのこぢんまりしたカウンターは、お弁当や忘れ物の受け渡しにも重宝しそうです。必要な分だけ小さく繋いでいるのが、この家らしいところです。

さらに、大きなルーフバルコニーから玄関まで光が差し込み、家族のいる場所へと気配をつなぐ。小さなカウンターでも大きな役割を担っています。

洗面水栓には『壁付けハンドル混合栓』を採用。

エントランスホールを進むとアーチの奥に洗面台が現れます。スムーズにアクセスできるので手洗いうがいが動線の中に組み込まれています。

『棚付きボックスミラー』にはラワンを採用。木のカウンターと合わせることで、洗面台というよりも家具のように空間に馴染んでいます。足元には抜けを作りつつ、収納も確保できました。

おかえりカウンターの向こう側にあるのが、家族の集まるキッチンです。キッチンには『木製システムキッチン』のラワンを採用し、その横には『モルタル天板』を使った造作カウンターを設けています。リビング側に向いたキッチンカウンターは作業をしながらでも、家族との時間を過ごせます。

独立したダイニングテーブルはあえておかず、キッチンカウンターをダイニングテーブルとして使っているそう。料理をする人と食事をする家族が同じ目線で時間を共有できるように設計されています。

お施主さんが「一番楽しかった」というのは、キッチンカウンターのタイル選び。深い青のタイルには、定番の白やグレーではなくオレンジ色の目地を合わせました。

青と対照的な色を挟むことでタイルが引き立てられ、さらに隣り合うラワンの赤みとも繋がる。木とタイルという異なる素材を、目地のオレンジ色が馴染ませてくれています。

『木製システムキッチン』には生活の道具が自然と置かれ、お施主さんらしい表情に。木やタイルなど表情豊かな素材を使うことで生活感が浮かずに馴染んでいます。

『フラットレンジフード』にはたくさんのステッカーが貼られ、自分だけの道具として素敵に使いこなされていました。

キッチンやレンジフードの無駄を省いたシンプルな形状が、実際の暮らしの中では生活を受け止める器になり、お施主さんのアレンジによって自分だけの空間になっていました。

キッチンとリビングの間には、空間を緩やかに分ける床段差が設けられています。

斜めに切り替えた一段の高低差は、ルーフバルコニーの掃き出し窓との段差解消を兼ねているそう。

床の段差が空間のアクセントになるとともに、斜めの床ラインが視線を誘導し意識が窓の外へと伸びていくような設計によって、広々としたルーフバルコニーまでが部屋の一部であるかのように感じられます。

リビングには経年変化を楽しめる杉の無垢フローリングを採用しました。

個室を減らしてつくった大きなワンルームは、普段は家族が同じ空間で過ごせる場所に。時にはカーテンで緩やかに仕切り、家族の気配を感じながら、それぞれの時間を過ごすこともできます。

さらに、リビングの左手にはたっぷりの可動棚。小物たちが自由にレイアウトされ、お施主さんの好きが溢れています。

リビングの一角には、壁で仕切られた半個室PCスペース。

仕事と家族の時間を無理なく切り替えられる空間になっています。

デスクランプには安全牌のマグネット。細かなところにお施主さんの遊び心を感じます。

少し休憩!と席を立つと、上部に開いたのぞき窓から家族の過ごしている姿をみることができます。完全な個室にしないことで、家族の気配を感じながら安心して作業に集中できそうです。

大きなルーフバルコニーから入る光が奥まで届く、明るく開放的な住まい。

家族がそれぞれの場所で過ごしていても、視線や声がゆるやかに行き来し、互いの気配が伝わる工夫が声を掛け合ったり、一緒に過ごす時間を増やしてくれています。

家族みんなが心地よい距離感で暮らせる、細やかな空間づくりが豊かな日常を大らかに受け止め、家族の仲をより深めてくれるような温かい住まいでした。

アートアンドクラフト

アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

テキスト:inoue

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