建てた当時は家族みんなで暮らしていた家も、30年の時を経て、家族のかたちは変化。子どもたちは巣立ち、現在は60代のお母さまがひとりで住んでいます。

元々の間取りは、1階にLDKと水回り、2階に寝室がある、ごく一般的なつくりの木造2階建て。日中はほとんど1階で過ごす一方、洗濯ものを干すのと寝るためだけに急な階段を上り下りする暮らしを送っていました。設備機器の老朽化も進んできたことから、「これから先も見据えて、1階だけで暮らしが完結する家にしよう」と、設計士である実の娘さんの設計で、リノベーションをしました。

以前は2階で就寝していたのを、1階の和室を寝室に。ホールの間仕切り壁を無くし、玄関からLDKへダイレクトに空間がつながる、開放的な間取りに一新。洗面脱衣室は、室内干しもできるよう、広々と面積を確保して、トイレも同じ空間にまとめました。

こうして、寝る・洗う・干す・しまうまでを1階に集約。2階へ上がらなくても、日々の暮らしが成り立つ間取りに変わりました。

そして、もうひとつ今回のリノベーションで大きく変わったのが、料理好きのお母さまが毎日立つキッチンです。

以前は奥まった位置にあったキッチンを、アイランド型のオープンキッチンに。料理をしながらテレビが見られる配置にしました。

シンクがある側を対面、コンロがある側を壁付けにしたことで、キッチン上空は見晴らし良好。高い位置からものを取り出す負担も考えて吊り戸棚は設けず、レンジフードも薄型の『フラットレンジフード』を採用。視線を遮るものを抑え、すっきりとした空間に仕上げています。

また、作った料理をそのまますぐに食べられるよう、アイランドキッチンのまわりにはカウンターを造作。ダイニングまで運ぶ手間をなくしました。子どもたち家族が帰省した時には、みんなで並んで食事がとれるカウンター長さを確保しています。

キッチンと食事の場をひとつにまとめることで、リビングも広く使えるようになりました。

対面にしたシンクに立つと、玄関まで見晴らしが広がります。

玄関ホールとLDKの間仕切り壁をなくした分、玄関引き戸は断熱性の高いものに交換。たたきには、靴を履くときに腰掛けたり、荷物を一時置きしたりできるベンチも設えました。

オリジナルで造作したキッチンは、天板に『オーダーキッチン天板』を採用。シンクだけの天板、コンロ開口だけの天板、天板のみの仕様も選ぶことができるため、今回のような造作キッチンにも使いやすいアイテムです。水栓には、見晴らしを邪魔しないほっそりとした佇まいの『ハンドホース水栓』を採用しています。

キッチンの下部は、シナ合板で造作。ウレタンクリア塗装を施し、本来の明るい色味を活かした表情に。引き出しの把手には『アングル把手』を使っています。

木目にほどよい主張のある床のタモフローリングに対して、キッチンは木目の穏やかなシナ合板を合わせることで、木同士が主張し合わない素材使いにしています。

そして、「1階で家事完結」のために欠かせなかったのが、こちらの空間。かつてはキッチン・浴室・洗面脱衣所があったスペースに、新しいユニットバスと、洗面脱衣所をゆったりと配置しました。

広さを確保したことで、以前の洗面脱衣所では狭くて置けなかったという、念願のドラム式洗濯乾燥機も導入することができました。タオルや普段着は乾燥機で。乾燥機が使えない衣類は、天井から吊るしたハンガーパイプに室内干し。2階のベランダまで、洗濯ものを干しに行く必要がなくなりました。

洗面台は『人工大理石の洗面カウンター』、水栓は『壁付けセパレート混合水栓』をセレクトしました。

幅1500mmのロングサイズでオーダーした洗面台は、シンクの左右に十分な作業スペースがあり、身支度をする際はもちろん、洗濯ものを畳む台として使う際にも便利なサイズ。下部とサイドには棚も造作し、タオルや日用品のストックもここに収納できます。ロボット掃除機のベースも、しっかり確保されていました。

各所の窓は内窓を設置しており、築30年の建物の断熱性能も向上させています。

そして洗面脱衣所には、トイレも一体化させました。

ひとり暮らしということもありますが、将来、車椅子を使ったり介護が必要になった時のことを考えて、あえて扉はつけない仕様にしています。

玄関ホールの間仕切り壁をなくしたのも、LDKと寝室への移動をスムーズに、そして将来の利便性を考えてのこと。かつて和室だった寝室も、ベッドが置きやすいフローリングの部屋にして、押入れと床の間をハンガーパイプ収納のクローゼットに変えています。

30年暮らしてきた我が家で、これからも長く快適に暮らすための工夫が各所に施されていました。

住み慣れた家を、今とこれからの暮らしに合わせて更新する。今回のリノベーションは、将来への備えでもありながら、料理や家事など、日々の暮らしを心地よくするためのものでもありました。

料理を楽しみ、帰省してきた家族と囲む食卓を楽しみ。自分の時間も、家族と過ごす時間も心地よい、これから先も長く付き合っていける住まいになりました。

ArcheWorkShop|アルケワークショップ

大阪 阿倍野の設計事務所です。型の決まったセミオーダー設計ではなく、その土地、クライアントの御意向、周辺状況により最善の形を見つけて設計しています。

テキスト:サトウ

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