景色を縁取る、その存在
はじめて訪れたある住まい。廊下の先、目の前に飛び込んできたのは、ガラス越しに広がる光あふれる空間と、そこに佇むアンティーク家具や小物たち。そんな、視線の先の景色を印象的に引き立てていたのが、部屋の入口に設けられた、スチールの框ドアでした。
空間を仕切る建具というよりは、開口部いっぱいの大きなガラス面で景色を縁取る、ピクチャーフレームのような存在。金属だからこそ叶う細いフレームがつくりだす抜け感、静かな強さを秘めた佇まいが、奥へと繋がる空間に確かな輪郭を与えてくれます。
レバーハンドルに手を掛けたときの、スチールドア特有の確かな手応え。それは、憧れの店に初めて足を踏み入れた時の、期待と少しの緊張が入り混じった懐かしい記憶を呼び起こしてくれました。
日本の住空間に馴染む、プロポーション
記憶の中のスチールドアは、店舗の顔になるような重厚で無骨な印象のもの。その雰囲気をそのままサイズダウンして住宅に取り入れるようなケースもありますが、この『オーダースチールドア』が目指したのは、主張するのではなく、住宅に違和感なく馴染むすっきりした佇まい。
日本の住空間のスケールに合わせて設定したフレームの見付幅は25mm。無骨すぎず、華奢すぎもしない、作為的でない素直なプロポーションを追求しました。
剛性のあるスチールゆえに可能となるその細いフレームと大きなガラスの開口部は、実際の開口寸法以上に、空間の広がりを感じさせてくれます。
スチールの持つ硬質な印象を和らげてくれているのが、フレームを構成する角パイプのコーナー部の表情。尖りすぎていない、わずかなアールの丸みが、床や壁、家具を構成する木や石、カーテンやソファのファブリックといった、建具をとりまく素材たちと調和する鍵となっています。
また、中空構造の角パイプを採用することで、スチール特有の心地よい重みを残しながらも重量を適度に軽減。扉を支える丁番の存在感まで、すっきりと仕上げました。
本来、特注のスチールドアは、図面起こしから、制作元との調整、製作と納期もコストもかかる、設計者にとっても少々ハードルの高いアイテム。「オーダースチールドア」は、10mm単位のサイズオーダーや枠の有無、形状、仕上げの選択といった自由度を持たせながら、設計へ落とし込みやすいプロダクトを目指しました。
このドアから、空間の可能性を広げる
選べる形状は、「片開き」と「親子」タイプ。
定番の「片開き」は、木製の框戸と比べると、わずか4分の1程となる細い見付幅が際立ちます。光が届きにくい廊下や玄関ホール、階段室などに取り入れれば、ドアを閉じた状態であっても奥のリビングからの光がダイレクトに届きます。建具で隔てるのではなく、透明なレイヤーを重ねる。そんなイメージで、空間に奥行きをもたらします。
「親子」ドアは、オフィスや店舗ではよく見かけるものの、住宅用としては珍しい選択肢。2枚の扉が重なる召し合わせ部分が重たい印象にならず、すっきり見えるのも、スチールドアだからこそ。その幅広く設定した開口部は、梁が大きく天井高がとれない空間にも圧倒的な開放感を生み出し、プランニングの可能性が広がります。
輪郭を色付けするか、素材でみせるか
アートを額装をする際、フレームの色や素材によって、作品の印象が一変するように、空間をどんな色で縁取るかは、そのインテリアを印象を左右する大切な要素。
「オーダースチールドア」では、現場塗装のベースとなる「錆止め仕上」と、金属そのものの質感を愉しむ「クリア仕上」の2つの仕様をご用意しました。
マットグレーの「錆止め仕上」は、狙った雰囲気に合わせて塗装ができます。
例えば、赤みのあるチークウッドのフローリングを敷き詰めた空間には、ほんのり緑がかったグレーをセレクト。チークのもつあたたかみ、ツヤ感を引き立てました。
一方、無機質でミニマルな白い空間では、壁と同色で塗装したドアを枠なしですっきり納めて。視覚的なノイズをそぎ落とすことで、フレームの繊細なシルエットを際立たせました。
スチール素地のタフで静かな質感を空間のスパイスとして効かせたいなら「クリア仕上げ」という選択肢も。細かな傷や溶接跡に軽くバイブレーション加工を施し、クリア塗装で仕上げました。ギラつきを抑えたシルバーの質感は、洗練された空間にも好相性。シャープで引き締まった表情をつくりだしてくれます。
空間ができあがった後に、建具を当てはめていくのではなく、このドアありきで、どんな空間をつくろうかと光の抜けや間取りの想像が広がる。そんな可能性を秘めた「オーダースチールドア」。
住宅のリビングドアの新たな選択肢として、どんな景色を切り取り、輪郭を与えていくのか、期待しています。
関連記事
オーダースチールドアの全16商品
ドア・扉に関連する商品コラム