「家族4人の個室をしっかり作って欲しい、そのせいでLDKが狭くなってもいい」

お客様から開口一番頂いたご要望。「広々LDK」が定番化している中で、あえてその逆を行くご要望は私たちにとっても新鮮で型破りなものでした。「家族が集まる場所だから、LDKはできるだけ広く開放的に」、リノベーションを考える際に多くの人がまず口にするこの言葉。しかし、お子様の成長や在宅ワークが増えたりなどのライフステージ・ライフスタイルの変化で、「広々LDK」必須ではない選択肢もあるかもしれません。

今回ご紹介するのは、約60㎡という面積の中で「家族全員が自分らしく過ごせる場所」を追求した、ある家族の住まいの形です。夫婦と中学生・小学生高学年のお子様2人という4人家族。お子様はそれぞれ個室が必要な年頃になりました。家族の距離感をデザインする、機能ごとに空間を「小分け」にする贅沢という、あえてのコンパクトLDK。LDKを主役にするのではなく「4人それぞれの個室を最優先する」、まるでシェアハウスのような潔いプランです。

Before図面。洋室2つ、和室のついたリビングダイニング、独立したキッチンの3LDK。

住み始めた当初の間取りは3LDK。まだお子様も小さく、3LDKの間取りでも家族4人で余裕をもって暮らすことができていました。しかし、お子様の成長に伴い日に日に手狭感を感じる様に。さらに、コロナ禍を経てご夫婦ともに在宅勤務が増えたことで、間取りに限界を感じるようになったようです。家族の成長とライフスタイルの変化によってお客様がリフォームを決意された背景には、都市部マンションが直面する「間取りの限界」がありました。

「家族4人全員に、それぞれの個室をしっかり設えたい」 この切実なリクエストが今回のリノベーションの出発点となります。

ご要望を受けた時、私は「しっかりした個室と共有空間としてのダイニングキッチン、なんかシェアハウスみたいでいいな」と感じました。そして、妄想したのは広々LDKを諦めたネガティブな間取りというより、家族ひとりひとりが自分の個室を楽しむとてもポジティブな間取り。その結果出てきたのが家族でシェアハウスというテーマでした。

「家族4人の個室」と「共有スペース」を約60㎡の中にどう共存させたか、ご紹介したいと思います。

After図面。個室4つ、ファミリークローゼット、ダイニングキッチンの4SDK。

まず、間取りを3LDKから4SDKへと変更しました。
個室を増やす一方で、各個室のボリュームを抑える鍵となったのが「収納の切り離し」です。各室の収納を最小限に留める代わりに、家族全員で使うファミリークローゼットを新設。個室を「寝る・作業する」場所に特化させることで、数字以上の広さを生み出しています。

また玄関入ってすぐの場所にもクローゼットを設置。コートなど嵩張る衣類はこちらへ。
変形の玄関には圧迫感のないようフロートで靴箱を設置して、軽やかさを出しました。

 

左:玄関正面のクローゼット。『塗装ルーバー折れ戸 』を採用。
右:玄関の靴箱は『オーダー玄関収納』と『オーダー吊り戸棚』を組み合わせました。

「収納の切り離し」をもう一つ。本や漫画をたくさんお持ちのご家族だったので、廊下の壁一面を造作本棚で構成しました。個室に本棚を置くスペースを削減しつつ、家族が自然に本を手に取れる配置はまさにシェアハウスです。

左:壁一面に設えた造作本棚と個室の建具。横には読書を楽しめるヌックスペース。
右:廊下に面した洗面台の収納はしっかり隠せるものに。収納の把手には『把手の金物 』を使っています。

そして、その造作本棚の向かいには広い洗面台を設置。家族4人が同時に動き出す朝の時間は、水回りの混雑が最大のストレスでした。 そこで洗面脱衣室から洗面機能だけ廊下へ放出。約2メートルのワイドな洗面カウンターを設けることで、複数人での身支度ができる場所としました。洗面台下にはドライヤーやストック品をしっかり収納できる場所を確保。

本棚・ヌックと洗面で、廊下のスペースをしっかり活用。

左:洗面台横のニッチは歯ブラシや化粧品など小物を収納するスペースとして設えました。
右:
洗面台渋滞対策のため、トイレの中にも手洗い器を設置して機能を分散しました。

狭くてもいいと割り切った共用部の要のLDK。リフォーム前は独立型だったキッチンですが、ダイニングと一体化させ、効率的な動線を確保しています。収納力を補うために全面引出しの『ユニキッチンシステム』を採用しました。

広々としたL型のキッチン。

上部には棚板と一体化させたオーダー吊り戸棚』を設置しました把手で開けられる仕様に変更しています。

吊り戸棚隣のガラスは、個室のあかり窓になります。

把手には『アングル把手』を採用しています。1.2mmの板厚なのでこんな感じで縦使いもできちゃうんです。

「狭さを感じさせない」ための工夫は、設備選びにも。ダイニングキッチンの主役はあくまで家族。存在感を放ってしまうエアコンやレンジフードはすべて天井へ埋め込んで視覚的なノイズを徹底的に排除することで、実面積以上のゆとりを感じる空間に仕上げました。

天井埋込カセット形エアコンで、すっきり。

IHの上には『天井スリットファン』を採用、整流板とその周りの天井と側面を『マットカラーのキッチンパネル』で仕上げています。背面の『水彩タイル』と部屋全体の仕上げであるグレージュカラーのクロスで色味を揃えつつもマテリアルを切り替えることでのっぺり感なく統一感を出しました。

レンジフードの代わりに、天井面にすっきりと納められた埋め込み換気扇『天井スリットファン』を採用。視界を遮らないキッチン空間が実現できます。

そして、LDKを狭くしても確保した個室のご紹介。決して広くはありませんが、タイニーハウスのような狭くてもウキウキする空間を目指しました。

部屋のサイズに合わせた造作のベッド台と吊戸棚を設置。普段使わない季節物はベッドの下、使用頻度の高い部活動の道具などは吊り戸棚へ。ちょっとした上着やカバンをサッと掛けられるハンガーパイプもあると便利だったりします。

天井の一部と壁の仕上げはシナ合板目透かし張りとコルク貼り。ピンを刺せばポスターを飾れたり、後々必要となれば棚板もつけられる機能性を持ちつつもホテルの一室のような雰囲気を漂わせる空間としました。

枕元には『フラットレセップのE17と『フロストLED電球 の眩しさのないスノーを調光スイッチとともに設置。寝る前にちょっと読書をしたり、明るさを絞ってムーディーな雰囲気にしてみたり、普通の個室とはちょっと違うギミックを入れ込んでいます。

タイニーハウスのようなギミック満載の個室。

最後に、お客様こだわりの可動式あかり窓です。

各個室の建具の上部や一部壁に取り付けた開口部。個室が閉じられていてもなんとなく家族の気配を感じたり、ずっと篭りっぱなしで空気が悪くなってしまうのを避けたいとのご要望から生まれました。個人の空間を尊重したいけど家族の繋がりはしっかり持っていたいというお客の色がすごく出ている場所になっています設計した私もお気に入りです。

建具の上部と、壁に取り付けた開口部。ガラスが入っていて開閉できます。

約60㎡という限られた面積の中で、「LDKを広く」という定石を捨て、一人ひとりの時間を尊重するプランを選んだことで、逆に家族それぞれの個性が溢れ出すような住まいが完成しました。

「家族だからいつも一緒」ではなく、「個が充実しているからこそ、集まったときがもっと楽しい」。

そんなシェアハウスのような軽やかさと、オーダーメイドならではの密度が同居するこの家で、お客様家族がどのように過ごしていくのか今からとても楽しみです。

TBK
オーダーメイドリフォーム
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東京23区および近郊
ツールボックス工事班|TBK

ツールボックス工事班|TBK

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担当:匂坂

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