「部屋が細かく区切られているのが嫌」「玄関や廊下が狭いのが嫌」で、以前の家では戸を開け放って暮らしていたという、30代のご夫婦。
妻はリノベーションサービス「ゼロリノベ」を運営する会社の社員で、仕事柄リノベーションに興味があったというのもありますが、これまで暮らしてきた家へのストレスや不満を振り返り、「自分たちには普通の家が合わないんだろうな」と感じたことから、中古マンションを買ってフルリノベーションしました。
「できるだけ隔たりを設けず、光が巡る家にしたい」と希望していたご夫婦。以前は4LDKだった約83㎡の住戸は、扉で閉じられる個室がひとつもないワンルームへと生まれ変わりました。
その間取りはとてもユニーク。リビングは2つ、寝室はキッチンの隣にあり、窓辺には細長いフリースペースが点在。そして、アールの壁に包み込まれたリビングダイニング。ひとつながりの空間の中に居場所が点在するプランは、リノベーション設計を担当したデザイナーの「部屋にしなくても、空間に機能を持たせれば居場所になる」という提案に共感し、採用に至ったそう。
グレーの塩ビタイルの床が広がる室内は、ゲート状に開口したラワンの壁が、それぞれの居場所を緩やかにゾーニングしています。
この空間づくりの原点には、妻がデンマーク留学中に訪れたサマーハウス(夏の休暇を過ごす別荘)での体験もありました。そこで感じた木の壁に包まれる心地よさと、開放的な間取りに惹かれ、以来「理想の住まい」として心に残っていたのだそう。
その後、夫婦で「理想の住まい」を話し合う中で挙がったのが、北欧の建築家、アルヴァ・アアルトの自邸。空間が緩やかに繋がっていく間取りやラワン壁など、そのエッセンスも空間に取り入れました。
玄関を入ると出迎えるのが、「ひとつ目のリビング」。「狭い玄関が嫌」という夫婦の要望を反映した、広い玄関ホールも兼ねています。
ここは現在はセカンドリビング的に使用。夫婦ともにリモートワークなので、ここで仕事をしたり、音楽を聞いたりと、気分転換したい時に活躍しているそう。
ひとつながりのオープンな住まいの中で、セカンドリビングに落ち着いた居心地を生み出しているのは、梁下に取り付けたラワン張りの天井。
梁が太く存在感が大きかったため、梁を目立たなくするために板を貼り、飾り棚も兼用させました。
梁の向こうにはカーテンが吊るされており、その奥はウォークインクローゼットになっています。
ウォークインクローゼットには、服だけでなくアウトドア用品も収納。ハンガー収納と『メタルシェルフ』、無印良品のコンテナボックスを組み合わせて、整理収納しています。
カーテンを開ければ物が一覧でき、アウトドアにお出かけする際のパッキングも楽々。セカンドリビングに荷物を広げて整理や片付けをすることもできます。
リモートワークの居場所は窓辺にも。ラワン壁でリビングダイニングと仕切った細長いフリースペースは、夫婦それぞれの仕事場にしています。オンライン会議の時はカーテンを閉めて知らせるルールにしたり、居場所を変えて対応しているそう。
2つのフリースペースは、シングルベッドが置けるサイズで設計。もし将来子どもが生まれたら、子ども部屋として使えるようにしています。夫婦二人暮らしの今は、妻のフリースペースはグリーンを育てるインナーテラスとして、夫のフリースペースは筋トレスペースとして。それぞれの趣味を楽しむ場所としても活用しています。
不確定な未来に備えて完全な個室にするのではなく、「今」に合わせながら「変えられる可能性」をつくっておく。そんな間取りのつくり方が参考になります。
ふたつのフリースペースの間には、ヌックを設けました。ラワンの壁と棚に囲まれた空間は、ほっとひと息つきたい時の居場所。仕事の合間にここで休憩したり、オフタイムは読書に没頭したりしているそうです。
リモートワーク中心の暮らしでは、「ちょっと気分を変えられる居場所」があるだけで、仕事と暮らしを切り替えやすくなるもの。個室はなくても、こんな居場所があると十分なのかもしれません。
寝室も「個室」にはせず、ひとつの「居場所」としてオープンな空間にしました。位置するのはなんと、キッチンの目の前!
このレイアウトは、「朝日を浴びて目覚めたい」という希望から生まれたもの。腰壁の向こうはキッチンで、完全には仕切られていませんが、夫婦ともに「どんな状況でも寝れるタイプ」だそうで、生活時間も同じなことから、このスタイルで快適に過ごせているそう。
とはいえ、必要になった時にはキッチンとの腰壁の間に室内窓を入れたり、寝る場所を移すなど、「変えること」も視野に入れています。ここにも、今に合わせながら将来への余地を残すという、この家の考え方が表れています。
キッチンは、夫のリクエストを多く取り入れた場所。
壁はリノベならではの躯体現しに、キッチン本体はステンレス製の『オーダーキッチン天板』で厨房的な佇まいに仕上げました。壁に取り付けたHAYのプレートラックや『オーダーマルチバー』、レンジフードもステンレス製で統一。水栓とコンロ、食洗機もtoolboxのアイテムを採用しています。
下部をオープンにしたキッチンは、使い勝手に合わせてゴミ箱やワゴンを置けることに加え、キッチンに体を近づけて作業しても足が収納にぶつからないところが気に入っているそう。キッチン下には家電も置けるよう、電源も確保しました。
「家のどこかにタイルを使いたい」という想いは、パイプスペースを囲む壁をタイル仕上げにして反映。色の濃さにムラのあるグリーンのタイルはまるで木々の葉のようで、ラワンを多用した空間によく似合っています。
これは、脱衣室に続くパントリーからキッチンを見たところ。奥の天井際にエアコンがあるのがわかりますか?
寝室を高い壁で仕切らなかったのは、キッチンにエアコンの風が届くようにしたいという意図もあったから。パントリーを通じて脱衣室まで冷暖房の風が届くのは、嬉しいポイントですね。
そしてこちらが脱衣室。アールのラインでゾーニングしたのは、ダイニングにできるだけスペースを確保するため。ランドリースペースごとカーテンで隠せるつくりになっており、普段は開け放って使っています。
パントリーを中心にぐるりと回遊できるため、キッチンと脱衣室の行き来もスムーズです。
洗面は脱衣所から独立させて、オープンな場所に設けました。光がふんだんに注ぐ明るい場所で身支度ができ、お気に入りの場所だそう。
洗面器は壁付けの『ウェルラウンドシンク』を使い、こちらも足元はオープンに。洗面まわりの小物は、壁面に棚やデンマーク・Ferm Livingのキャビネットを取り付けて収納しています。
大きな円形のミラーと、オレンジが鮮やかなゴミ箱、グリーンのタオルフック、ブルーのペンダントライトは、こちらもデンマークのインテリアブランド・HAYでセレクト。ラグはフィンランド生まれのマリメッコのものと、北欧アイテムでカラフルに彩りました。
トイレは、この家で唯一「扉がある」空間。他の場所からは閉じていることもあり、ピンクのタイルと塗装壁で仕上げ、遊び心ある空間に仕上げました。
参考にしたのは、SNSで見かけたフィンランドのホテルのトイレ。ピンクのツートンカラーで彩られた空間が印象に残っており、その配色を取り入れたのだそう。
実はこの家には、収納にも扉がありません。玄関の下足入れも、できる限り空間を広々と感じられるよう、オープン棚にしました。
オープン棚にしたのは、「扉を開ける」ワンアクションをなくす意図もありました。「見えない場所にしまってしまうと使わなくなる」という考えから、帽子やバッグなども有孔ボード壁のフックに掛けて、「見せる収納」にしています。
造り付けの収納は少ないものの、広いウォークインクローゼットが納戸的な役割も果たしているので、家の中を広々と使うことができます。
仕切りのないひとつながりの空間は、家具のレイアウトで居場所の性格を変えられるのも魅力。「家具を置く楽しみ」もあります。
セカンドリビングに置いたUSMハラーのサイドボードは、クリーム色の壁の色との相性を考えて、ベージュをセレクト。クリーム色の塗装壁は、濃い茶色にオイル塗装したラワン壁ともよくなじみ、クールな印象になりがちなグレーの床にも、やわらかな雰囲気をもたらしています。
ダイニングテーブルは、アアルトがデザインしたアルテックのもの。設計デザイナーから提案されたプラン図の中にこのテーブルが描かれており、それがしっくりきて購入を決めたのだとか。
裾の広がったドレスのような形状が優雅なペンダントライトは、デンマークのガラスブランド・HOLMEGAARDのヴィンテージ品。ダイニングやキッチンには、アクセントとなる照明を取り入れつつ、天井に取り付けたベースの明かりには、スッキリとした筒形デザインの『シーリングスポット』を採用しました。
約83㎡のワンルームに、さまざまな居場所を散りばめた住まい。大らかなカーブを描くラワンの壁が、それぞれの場所を緩やかに分けながら、住まい全体を包み込んでいます。
「部屋」によって過ごし方を固定するのではなく、その時の気分や目的に合わせて居場所を選ぶ。そんな暮らしを支えるため、間取りだけでなく、ダイニングやセカンドリビングにフロアコンセントを設けるなど、実用的な工夫も施されていました。
光や風、木のぬくもりを感じながら、その日、その時の気分に合う場所を選んで過ごす。森の中で心地よい陽だまりを見つけて、そこに暮らしの場をつくっていくような楽しさと、暮らしに合わせて変えていける自由を備えた住まいでした。
ゼロリノベ
株式会社groove agentが運営するリノベーションサービス。「大人を自由にする住まい」をコンセプトに、家を買うことで自由になる「家のさがし方」「家のつくり方」を提案。
東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪を中心に、資産性のある中古マンションの「物件さがし」から「リノベーションの設計・施工」までワンストップで提供しています。
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