西横浜の通り沿いに建つ一軒の家。ここは、電気工事店を営むお施主さん家族の住まいです。

かつては事務所と自宅が別々に建っていましたが、建物の老朽化をきっかけに、一体型の新しい住まいへと建て替えました。

もともと人の行き交いでにぎわっていたこの通りも、近年はマンションや住宅への建て替えが進み、少しずつ活気を失いつつあります。そんな中で「もう一度この街を明るくしたい」という思いが、今回の建て替えの原動力になりました。

昔ながらの商店と新しいマンションが入り混じる街で、新旧どちらにも寄りすぎない中間のかたちを目指しました。

用途ごとに必要なボリュームを積み重ね、テラスや軒下のような外部空間を組み合わせることで、周囲との距離感を保ちながら、建物が立体的に街とつながるようにしています。

1階にはお施主さんの電気工事店と貸店舗、2・3階には家族の住まいを配置。
貸店舗には軽飲食店を想定しており、店先に人が行き交う風景が生まれることを願って計画されました。

2階の扉を開けると、家族4人が暮らす住居スペースが広がります。
ラワン材を基調にしたあたたかみのある雰囲気で、ほっと落ち着ける場所です。

この家の中心は、リビングを横断する約6.5mのキッチンカウンター。

食事をしたり、テレビを見たり、ソファに座って寛いだりと、家族が部屋にこもることなく自然に集まれる空間になっています。ワイワイ過ごす家族の暮らしの姿が、そのまま空間に落とし込まれています。

こだわりの調味料やお皿を並べた広々としたキッチンでは、料理好きのお母様が家族や友人のために料理をふるまいます。時には知人が集まり、まるでおばんざいやさんのようなあたたかい空気が漂うことも。
お施主さんが気に入って選んだという、機能性とデザイン性を兼ね備えた『ハンマーヘッド水栓』も、空間の中でしっかりと存在感を放っています。

カウンター下にはたっぷりの収納を設けました。『木のつまみ』が愛らしいアクセントに。

こちらはキッチンカウンターの向かいにあるソファスペース。お施主さんは、このソファに座って過ごす時間が好きなんだそう。紅茶を飲みながら猫と遊んだり、ギターを弾いたり、いつの間にかうたた寝していたりするそうです。

3階には子どもたちの個室のほか、テラスにつながる畳のスペースがあります。外の光や風を感じながら、寝転がってくつろげる場所です。お施主様が子どものころから愛用してきた品々も並び、この場所に長く暮らしてきた家族の歴史も大事にしていることが伝わってきます。

水まわりにも、家族のこだわりがしっかり詰まっています。
同時に2人が並んでも余裕のある広々とした洗面にはラワン材の『クロップドミラーキャビ』を設置。ミラーの内側には、たっぷりとした収納があるのので、家族それぞれの洗面グッズを収納できます。

特にお風呂は、温泉好きのご家族がこだわった場所!ヒノキの香りが漂う癒しの空間。まるい『ミルクガラス照明』が、やわらかなアクセントになっています。

ウィリアム・モリスの壁紙が目を引くトイレは、真鍮のトイレットペーパーホルダーに合わせて、やわらかな黄色味でトーンを統一。猫用のトイレも設けられ、家族みんなに優しい空間です。

お施主さん自らもショールームを巡り素材を選んだというこの住まい。
家族の人柄が感じられるにぎやかさと、街に開いた大きな窓やテラスを通じて、外に広がる街を感じる暮らしが息づいています。

単なる「住む場所」ではなく、まちと家族、商いと暮らしがゆるやかに交わる場。
そんな豊かで居心地のよい暮らしの空間が、この家には広がっています。

株式会社吉田裕一建築設計事務所

古来より伝承されてきた日本建築の伝統や様式に敬意を払いながら、新鮮な発想で本質的なものづくりを行うことを信条としています。地域ごとの気候風土や文化、といった私たちの生活に関わるさまざまな事物の連関の中に建築を作ることもあらためて位置づけ、人と地球のふるまいが調和した建築によって古くて新しい風景をつくりだしたいと考えています。

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テキスト:小尾

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