海外製の水栓、食洗機、ビルトインオーブンなど。デザインはもちろん、機能的なものが多く、いいですよね。
でも、職人さんの立場からすると、国産メーカー品に比べて慣れていないから不安という方も多いと思います。
今回はそんな不安を解消すべく、ちょうど、キッチン水栓が壊れ、交換予定だったスタッフ邸にて、海外製の『ハンマーヘッド水栓』を水道屋さんに取り付け交換してもらった様子をレポートします。
今回取り付ける水栓とキッチンの紹介
取り付けるのは、『ハンマーヘッド水栓』。
私も自宅で使っていますが、水を操ってる感じがすごく面白い水栓なのです。その操作感が伝わる動画をご覧ください。
ヘッド上部についたボタンのプッシュ操作で水のON/OFFをコントロール。詳しくは、こちらをご覧ください。
交換する舞台は、築5年の戸建て。セミオーダーで引き出しタイプのキッチンです。
元々、ホース引き出し式の水栓を使っていたのですが、パーツの一部に不具合がでて交換することに。
シンク手前についている引き出しは、簡単に外せるので、引き出した状態で作業をしていきます。
交換対応をしてくれたのは、水道屋の岩井さん。
普段は、国産メーカーの水栓を扱うことが多く、たまにこだわりのお客様宅で海外製もつけますねという経験値。「ハンマーヘッド水栓」は、今回で2回目となる取り付けです。
ハンマーヘッド水栓取り付けのざっくり手順
取り付け方を見ていく前に、ざっくりとした手順と、箱に入っている本体及び付属品一式を何に使うのか、説明をします。新規の取付も、交換対応も、手順は同じです。
①水栓本体をキッチン天板の水栓穴に差し込み固定。
②ハンドホースのホースを繋ぐ。
③床から立ち上がった給水・給湯管と、水栓側から2本垂れ下がっている給水・給湯ホースを繋ぐ。これで水とお湯が出るようになります。
④ホースの長さ調整。引き出したい長さを調整します。
※②と③はどちらを先に行っても大丈夫です。
プロの方は、「え、普通じゃん」と思ったかもしれません。
そう、基本的に、海外製で特殊な操作性とはいえ、この水栓、国産品とやることは変わらないのです。海外製でも怖くない!
取り付け穴があいた状態からスタート
では、はじめていきましょう。
一般的に水栓は交換しない前提で、かつ漏水しないようにしっかり取り付けられていることが多いもの。特に古い物件だと昔の金具が錆びついていることもあり、うまく取り外せないこともあるそうです。そんな時は、水栓の根元をカットして取り外すこともあるのだとか。
今回はまだ築浅のキッチンだったので、既存の水栓も錆びて固まることなく、さくっと取り外すことが出来ました。(カメラをセッティングしてる間に作業が終わってしまい、写真なし……汗)
まずは、ホースに黒いパッキンを通して、天板上から水栓穴にホースを差し込みます。
はい、はまりました。キッチン天板裏から固定していきます。
キッチンに潜り込んで見上げた天板裏はこんな感じ。
キッチン天板の裏側から金色の「水栓締付けナット」などを回して取り付けていくのですが、狭い部分は手が入り込まないため、棒の先に取付金物をのせて締めつける「立水栓用の締め付け工具」を使って回していきます。
上から順番に、「グレー樹脂製プレート」「滑りプレート」「ワッシャー」「金色の水栓締付けナット」を重ねます。
(グレーの樹脂製プレートは、取り付け面の天板の厚みが45mm以上あるなら取り付ける必要はありません。)
では、いざ出陣!というか、潜り込み!
仰向けになって、さきほどのリングたちを下からホースに通していきます。
さきほどの「立水栓用の締め付け工具」できっちり締め付けていきます。
ハンドホースを繋ぎます
引き出し式のホース水栓は、天板の下に長いU字のホースが垂れ下がっていて、ホースを引き出して使うと、連動して動きます。
商品を開封した状態では、ハンドホースは写真の状態で繋がっていないので、そこを繋いでU字にしていくわけなのですが、「最初から一体になってくれてたらいいのに……」と思ってメーカーさんに聞いてみたところ、
「一体になって届くと、U字の径が天板の穴径より大きくて、通り抜けられないんです」との回答。
な、なるほど!たしかに。
ということで、繋いでいきましょう。
ホース先端についている、保護用の半透明のキャップは外して捨ててください。
こちらのパーツを間につけて、ホース同士を繋いでいきます。
細かいパーツが多くて大変!この順番で入れてください。
片方のホースの先端に、先ほどの袋ナットたちをはめつつ
もう片方のホースを袋ナットを回して繋いでいきます。
新しい国産のキッチン水栓は、このホース同士の接続がクリップ式で簡単にカチャっと施工できるようになっているものもあるとのこと。それに慣れていると、面倒くさっと思うのでしょうか?
今回お願いした岩井さんは、「昔からの回すスタイルには慣れてるから、どちらでも手間の差は対して気にならない」とのことで、一安心。
まずは、手で仮留め完了。U字になりました。
お次に「モンキーレンチ」登場。
これで、最後はしっかりと袋ナットを締めつけていきます。しっかり締めつけないと、水漏れの原因になるので要注意!
都度仰向けになっての作業が大変。腕が鍛えられそうです。
水栓の給水・給湯ホースと床から立ち上がった給水・給湯管を繋ぐ
お次は、床から立ち上がった、給水管(青色)と給湯管(オレンジ色)を水栓側から垂れている2本の給水・給湯ホースにそれぞれ繋いでいきます。
今回の水栓は海外製なので、水栓側の給水・給湯ホースにアダプターをつけて、ネジの直径の規格を国内の管の規格と合わせる必要があります。それが、G1/2規格への変換アダプター「逆流防止付アダプター」。これを取り付けます。
シートパッキンもお忘れなく!
「パッキンは締めて削れるから、一回使ってから付け替える時は、新しいものにするように!これは絶対」とのこと。
「逆流防止弁付きアダプター」を付けた先に、小さい編みカゴのような「フィルターパッキン(一般にはストレーナーと呼ばれるもの)」を入れます。日本の水はキレイなのでまぁ問題はないと思うのですが、給水管から運ばれてくるわずかな異物などを取り除く役割のものです。
ちなみに、説明書にある、丸い逆支弁パーツが見つからず、付属品を探しまくったのですが、これは給水・給湯のホースナットの奥に最初から取り付けられているので、網カゴのような「フィルターパッキン」をはめるだけで大丈夫です。
またまた、回して繋いでいきます。
この給水・給湯ホースの接続も国産メーカーのものだと、施工性を重視した簡単クリップ式のものも多いそうですが……がんばって岩井さん!
スパウトの首振り角度を決める調整コマを取り付け
さて、ここまでは順調にきましたよ。
ここで、いま一度説明書をチェック。(ちゃんと日本語です、ご安心を!)
水栓のスパウトの可動域、左右にどこまで回るようにするかを選べるということで、その回転角度決めを行っていきます。
首振り角度は110度と150度から選べます。そして、同じ150度動くにしても、左右どこからどこまで動くか、種類がたくさんあります。
届いた時点は、一番上の状態にセットされています。
というか、首振り角度って最初から決まっていると思っていたのに、実は調整できたんですね。
壁付けのキッチンだと、標準の中心から左右均等に扇のように開く、説明書の一番上の角度が一般的でよさそうですが……
このお家では、カウンターに座ってご飯を食べることもあり、上の写真のように立ち上がって、「カウンター側からも水がだせるといいな」とのこと。なるべく首を振って、正面から左側に90度回る角度を選びました。
通常の取り付け工事だとお客さんは現場にいないので、前述の左右均等な角度に設定されることが多いと思います。特に対面キッチンで逆側から使うことも多い場合は、今回のように、事前に要望を伝えておくと良さそうです。
角度の設定は、先ほどの「スパウト回転角度調整コマ」を設定したい向きになるよう上からはめるだけ。スパウト上部をぐいっと差し込んで、固定完了です。
ハンドホースの引き出す長さを調整
最後に、ハンドホースを引き出す長さを設定していきます。
通常は、シンクの大きさに合わせて、シンクの縁まで水が届けばシンク内を洗うのには問題ないのですが、「ハンマーヘッド水栓」はホースをぐいーっと引っ張って、シンク脇に置いたお鍋やケトルの上で手元のスイッチをカチっとして水を注げるのが魅力の商品。
「それがしたい!」ということで、シンクの縁にお鍋を置いて、届くくらいの長さに設定してもらうことに。
この重しをU字のホースにつけて、どこまでひっぱれるようにするか長さを調整します。ドライバーで締めるだけなので、一度設定した後も、施主側があとで位置を変更することも可能です。
この辺かな?と決めた長さにマステを貼って、重しを固定します。
説明書にも注意がありますが、ホースの最下部から30〜40mmの位置に重しをつけるようにしてください。ホースのUの字の真下に重しをつけてしまうと、ホースが引っ張られ「Vの字」のような状態になってしまい、水の流れが悪くなってしまう懸念があります。
一般的な引き出し式のホース水栓は、使い方によって水がスパウト内のホースの隙間に入り込む場合もあるので、一応、キッチン下部に水受け容器を置くことを推奨しています。
この家も以前使っていた水栓の時に水受け容器を置いていました。
「ハンマーヘッド水栓」は、吐水口がハンマーヘッドの下部と離れているため、水がホース内に入り込む可能性はないため、水受け容器はなくても大丈夫なのですが、まぁ、どうせ容器があるし……と、そのままにすることに。
(ちなみに同じハンマーヘッド水栓を使っている我が家は置いてません!)
取り付け完了!
無事に取り付け完了です!
じゃーー。出ました!手前の縦のスイッチでシャワーに切り替えたところ。
このお家は食洗機もついてますが、漆のお椀などは手洗いをしています。
以前ついていた水栓はシャワーに切り替えができず、水ハネが気になっていたそうです。交換後は、シャワーの方が水の飛び散りがなくなって良かったとのこと。よかった!
さっそく引き出してみて、使い勝手を確認中。
最後は、外していた引き出しを戻しておしまいです。
カルキ汚れのメンテナンスについて
この「ハンマーヘッド水栓」は、吐水口の先端(グレーの細かい突起部分)を指先でこするだけで、カルキ汚れのお手入れができる仕様になっています。面倒くさがりには、嬉しい機能!!
私は、週末にしっかり水栓を拭き上げたりする時など、思い出したら軽く触ってお手入れしています。おすすめの清掃頻度をメーカーに聞いてみたのですが、水質によってかなり目詰まりの状況が異なるので、一概に言えないとのこと。
ま、本当に指で触るのは簡単なので、気になる方は、ちょいちょい触りましょう。
ちなみに、吐水口の先端は、付属品の赤いプラスチックのパーツを使って外すことができます。
最初の取り付け時にも、一応小さなゴミが入っていないか外してチェックした方がよいとのことで、チェック!問題ありませんでした。
前述の通り、この水栓は、この吐水口の先端部分を外さなくてもカルキ汚れのお手入れが出来る仕様なので、めったに外さなくていいと思うのですが、先端の中に入っている白い樹脂パーツは、3〜5年すると結構カルキでカピカピになるので、タイミングをみてパーツ交換するのがおすすめとのこと。詰まっていたら、柔らかめの歯ブラシなどで洗ってあげましょう。
年末にシンク横の大鍋で大量のおでんを仕込むのが恒例という、こちらのお宅。
今年からは、水を注ぐのも楽になりますね。
岩井さん、ご協力ありがとうございました。
(来生)