5・6階を自己利用、1〜4階を賃貸として貸し出しする予定で大阪・天満にある6階建ての小さなビルを取得したオーナー。一般的に賃貸物件は「駅からの距離」や「新しさ」といった条件で選ばれがちですが、このビルはリノベーションによって「個性」という新たな魅力を生み出すことで、長く選んでもらうことを目指しました。
オフィスへの入口は、タイル壁に掲げられた「ヒツジビル」の看板が出迎えてくれます。この看板・ロゴはデザイナーをしているオーナーのご家族が制作したものだそう。まず、この愛嬌のあるファサードにグッと心を掴まれました。
中に入ると、白黒配色で統一されたテナントガイド、ポスト、床タイルが静かに存在感を放つ、シックな内装が広がります。木製ルーバーの天井や茶色のタイルが入ることで温かみも演出。
落ち着きの中に個性を感じる空間がオフィスへ向かう気分を高めてくれます。
3階のオフィスフロアは、フォトスタジオが入居済み。床材を剥がし、水回り部分に木やタイル素材を使うことで、コストを抑えながらもチャームポイントをつくり出しています。
シンプルな空間だからこそ、家具や備品の素材が際立ちます。部屋の一角に添えたキッチンは、『木製ミニマルキッチン』のラワンを使い、木の質感を取り入れて、仕事の合間にもホッとした安らぎを感じられるようにしています。濃い色のタイルが空間を引き締めるアクセントになっています。
洗面スペースには、キッチンと同じラワン材でつくられた『ミニマル洗面台』を取り入れました。正面に設置した『木製ラウンドミラー』は、その曲線が雰囲気を柔らかくしてくれています。
巾木にも濃色の木材を使用することで、温かみを演出し、空間の統一感も生んでいます。
2階には、デザイン事務所が入居しました。
シンプルな内装で仕上げられた空間を、入居者がお気に入りの家具を置くことで自分らしく彩っています。
こちらは建物の顔になる、1階店舗のみそ汁スタンド。
23㎡という小さい区画ながら、ワンオペレーションのお店を想定して募集し、入居が決まりました。
オフィスフロアと同じく木とタイルを使った内装でも、このフロアは白とナチュラルな木目を採用。ビル全体で統一されたマテリアル使いが、ビルの個性につながっています。
開放的な屋上は、入居者たちの団らんスペースです。
ここにはなんと、BBQができるセットも!人工芝と植栽を配置し、緑を感じながら楽しめる場所になっています。木製ルーバーで室外機を目隠しし、視界にも一工夫しました。
実はこの物件、「ペットが飼えるオフィスビル」でもあるんです。オフィススペースはもちろん屋上もペット同伴可で、洗い場も備えています。外気に触れながらペットと過ごす憩いの時間も入居の楽しみになりそうです。
「ありふれたビルを魅力的にする」というテーマでスタートしたリノベーション。
ビルの個性を感じる内装だけでなく、入居者が自分の色を映し出すことができたり、憩いの時間を楽しむことができたりと、他にない魅力で長く入居者を楽しませてくれそうです。
「仕事場だけど、ここでの暮らしを楽しんでほしい」そんなオーナーの思いが伝わってくるビルリノベーションでした。
写真:増田 好郎
株式会社アートアンドクラフト
建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。
大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。
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