世田谷美術館や浦添市立図書館の設計で知られる、内井昭蔵。菊竹清訓事務所の出身で、人と自然と建築が馴染みあう空間づくりを大切にしていた建築家です。

そんな内井昭蔵が設計を手掛けたマンションが、施主夫婦が惚れ込んだ物件。一年ほど売り物件が出るのを待ち、46㎡の部屋を購入しました。それまでに住んでいた家よりも面積は狭くなるものの、このマンションに住みたい気持ちが勝ったそう。

リノベーションの設計は、このマンションの部屋のリノベーションをいくつか手掛けている、HandiHouse projectに依頼しました。

玄関を入ると、黒いフレームのガラスドア越しに窓外の緑が覗きます。リビングの風景が“額装”されたように際立って、奥の空間へと期待が高まります。

自転車を置ける広さは、左側の壁にあった既存の下足箱を取払うことで確保しました。下足入れは右側の壁面に造作。プッシュオープンタイプの扉を採用して、扉と壁面をフラットにおさめることで、すっきりとした見た目にしています。扉に取り付けた「PUSH」のプレートは、手で押した時の扉の汚れ防止にも役立っているそう。

玄関ホールの横にある洗面は、『ウェルラウンドシンク』と『アメリカンスイッチ』、ステンレス製のミラーキャビネットで構成。ミラー上にあるシルバーの直付け照明は、既存のものを磨いて再利用しました。塗装し直して活かした既存のドアやドアノブと相まって、レトロクラシックな雰囲気に仕上がっています。

HandiHouse projectは「施主参加型の家づくり」を提案しており、壁のタイルは、施主夫婦がDIYで貼ったもの。フローリングも施主夫婦が貼りました。

家具やインテリアにこだわりのある施主夫婦。デンマーク生まれのアイラーセンのソファや、北欧ヴィンテージ家具店で買ったエクステンション式のダイニングテーブル、カール・ハンセン&サンのYチェア、スイスのモジュラー家具・USMハラーなど、以前の家に住んでいた頃から使っているお気に入りたちを連れてきました。

そんな暮らしが映えるよう、床はナチュラルな色合いのナラフローリング、壁は白のペンキ仕上げと、内装はシンプルに仕上げています。

装飾性を控えたことは、天井際まで高さのある窓や、余計な凸凹の少ない端正な空間形状など、建物の元々の良さを感じる空間づくりにもつながりました。

窓外の緑がよく映える木のキッチンは、新たに造作したもの。以前は窓を背にした壁付けのI型でしたが、窓外の緑を眺めながら作業ができるよう、コンロとシンクを分けたⅡ型のレイアウトにしました。水栓は「浄水器付き切替混合栓 グースネック クローム」を採用しています。

引き出しの上部を少し開けたデザインが、奥まった場所にあるキッチンに軽やかさを生んでいます。手をかけやすく、中身がちらりと見えるので、どこに何があるか当てがつくのもいいですね。

壁の足元に巾木を付けず、部屋を仕切る引き戸のレールも床に埋め込むことで、すっきりとした印象に。ライティングレールも壁と並列に取り付け、水平垂直のラインが小気味よい空間をつくり出しています。

元2LDKの間取りは、2つあった個室をクローゼット一体型の寝室にして、1LDKにしました。

視界の抜けを遮らないよう、オープンスタイルを選択したクローゼットは、ディーター・ラムスがデザインしたヴィツゥ「606 ユニバーサル・シェルビング・システム」をイギリスから取り寄せました。過剰な装飾のない空間に、よく似合っています。

シンプルに仕立てた空間には、照明もよく映えます。

寝室とダイニングは、ダークカラーのウッドブラインドを閉めて明かりを灯すと、昼間の開放感とは打って変わって、一気に親密な雰囲気に。

寝室はレ・クリントのクラシックペンダントモデル161、ダイニングはルイス・ポールセンのPH5とPH3 1/2-2 1/2 フロアランプ。ソファ横にはルイス・ポールセンのAJフロアと、内装や間仕切りでスペースを差別化するのではなく、明かりによって居場所ごとの居心地をつくっています。

料理でも、“素材”が良ければ調味料はそこそこでいいように、環境、建物、家具や照明が活きるバランスを見極めたリノベーション。家具が主役で、空間はその舞台。装飾性を極力抑えた空間にすることで、両者の魅力が一層引き立つ住まいになりました。

(撮影:佐藤陽一)

スタジオピース一級建築士事務所

スタジオピース一級建築士事務所

「施主巻き込み型」のプロジェクトスタイルで、住宅や店舗の新築・リノベーションを手がける、加藤渓一が代表を務める一級建築士事務所。設計だけでなく、プロジェクトによっては施工まで一貫して請け負っています。
建築家集団・HandiHouse projectのメンバー。

HandiHouse project/ハンディハウスプロジェクト

HandiHouse project/ハンディハウスプロジェクト

合言葉は『妄想から打ち上げまで』。
家づくりが趣味になれば暮らしも豊かになる。
そんな思いのもと、設計・デザインから工事のすべてにおいて、施主も一緒に参加する空間づくりを提案している、建築家集団です。

紡ぎ舎

建設会社で大工の経験を積んだ、一級建築士の秋山直也が代表を務める設計施工会社。建築家集団・HandiHouse projectのメンバー。
https://www.instagram.com/aki_708

テキスト:サトウ

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