撮影:西村祐一

50㎡・1LDKのマンション。ご夫婦と子ども、3人で暮らすお住まいです。

ご夫婦揃って子どものころから、家の中にピアノがあるのが当たり前。通りがかりにちょっと弾いたり、テレビのCMの曲をすぐに真似して弾いてみたり。そんなふうに、暮らしの中にピアノがあることが、ご夫婦にとってはごく自然なことでした。

撮影:西村祐一

初めての打ち合わせで「テレビを見ながら、ピアノを弾いています」と聞いて、“この家族にとって、ピアノはまさに生活の一部なんだ”と強く感じたと言うのは、この家のリノベーションを手掛けた松本光索さん。
プランニングは、「ピアノをリビングの真ん中にどんと置くこと」から始まりました。

撮影:西村祐一

とはいえ、50㎡の空間にグランドピアノを置くとなると、その存在感はかなりのもの。普通に間取りをつくると、どうしても部屋が窮屈に感じられてしまいます。

そこで思い切って、ピアノをリビング・ダイニングの中心にどんと置き、そのまわりにキッチンや家具、クローゼットを少しずつ角度をつけてレイアウト。家具のサイズや形も、ピアノの“ボリューム感”に合わせるように、ばらつきを持たせて、リズムのある空間に仕上げました。

撮影:西村祐一

角度をつけたクローゼットの間にできた隙間は棚にして有効活用。玄関の上り框も斜めに合わせるこだわりも。

撮影:西村祐一

キッチンの背面にある、大きな収納。実はこれ、「動かせる」んです。

撮影:西村祐一

動かせるので、暮らし方が変わったら、キッチン以外の場所で使うことも。50㎡という限られた広さの中での暮らしに自由度を持たせるための工夫です。

中を隠す布は、マジックテープで固定。中央も上下に“バリバリ”と開閉できる仕様になっています。

撮影:西村祐一

ピアノの正面にレイアウトされたキッチン。
「料理をしながらピアノを眺められるように」そんな奥さまの想いから、お部屋の中でも一番の特等席になりました。

薄いボディが特徴の『フラットレンジフード』を採用して、ピアノへの眺めを遮らないようにしています。

撮影:西村祐一

キッチンの腰壁には、『ピクセルタイル』を全面に張って。

「キッチンの面材や収納扉には、扱いやすいメラミンや合板を使用していますが、腰壁まで同じ素材にすると、どうしてものっぺりとした印象になってしまいます。そこで、ほどよいテクスチャーがあり、サイズ感もアクセントになるピクセルタイルを選びました」と話す松本さん。

空間全体のカラーは、存在感のあるピアノとの対比を意識して、白を基調に。明るく、軽やかな雰囲気に仕上げています。

撮影:西村祐一

寝室はしっかり個室として確保。天井際には透明のアクリルを採用し、圧迫感を軽減して、空間の広がりを感じられるように工夫しています。

撮影:西村祐一

最後にご紹介するのは、洗面室。
こちらも他の空間とトーンを揃え、洗面台の引き出しにはラワン材を、天板にはポリランバーを組み合わせています。壁の立ち上がり部分には、やわらかな表情をもつ『古窯70角タイル』をあしらい、洗面ミラーの下には、アクセントになる小ぶりの『真鍮タオルハンガー』を添えました。素材それぞれの質感が重なり合う、やさしい雰囲気の空間に仕上がっています。

撮影:西村祐一

コンパクトな空間の中に、夫婦の好きなピアノを無理なく取り入れるために、レイアウトに“斜め”というアイデアを加えた今回の住まい。

限られた空間でも、“好き”と“暮らしやすさ”を無理なく両立させた、ご夫婦らしさが詰まった事例でした。

KOSAKU

建築家・松本光索率いる京都を拠点とする設計事務所。用途や規模にとらわれず、建築から家具、素材の実験に至るまで、空間に関わるさまざまな要素をデザインの対象とする。プロジェクト毎に現場に滞在し、リサーチ、デザイン検証を重ねることで、その場がもつ固有の空間性を生み出すことをテーマとしている。

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テキスト:小尾

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