静かな住宅地に佇む、緑豊かな築50年のマンション。お施主様が心惹かれたのは、外観を彩るテラコッタ色のタイルと、四季を感じられる環境でした。

こうした心がときめくような理想の物件との出会いは、そう簡単には訪れないもの。実はお施主様も、内見直前に別の申込みが入ってしまい、一度は諦めかけたものの、後日たまたま販売が再開。そんな運命的なタイミングが重なり、始まった家づくりです。

完成した住まいに一歩足を踏み入れると、白やグレー、オークで整えられた端正な空間が広がります。敷地内の緑や自然光が優しく映り込む室内は、子育ての日常を感じさせない、洗練された静けさを湛えています。

 

張り出した形状がユニークな窓辺のダイニング。壁面には、デザイナーのおすすめで取り入れた「Vitsoe」のモジュールシェルフを取り入れました。

床の仕上げを変えることで、緩やかにゾーンを分けつつ、ひとつながりの大きな空間を確保したLDKは、25畳とたっぷりの広さ。起伏なくまっすぐに伸びていく天井が心地よい余白をさらに引き立てています。

そんな開放感あふれるLDKの主役として中心に佇むのが、存在感のあるテラコッタ色のアイランドキッチンです。

このキッチンを拠点に、ぐるりと回遊できる間取り。どこで過ごしていても、温かみのある色が優しく目に入る、この住まいの象徴とも呼べる場所です。

最初のイメージでお施主様は、テラコッタを差し色として、ポイント使いに留める予定だったそう。ここまで大胆にテラコッタ色を取り入れるプランは、デザイナーからの思いがけない提案によるものでした。

「このマンションの外観に一目惚れしたという、私たちの物件購入へ至った経緯をデザインに組み込んでくださったそうで。『すごく素敵。さすがプロだ!』と感動しました」

当初のイメージを心地よく裏切る嬉しいサプライズに、その場でほぼ即決。ここから家づくりは一気に加速していきました。

部屋の中心にあった、動かすことのできないPS柱は、ただ隠すのではなくテラコッタ色のタイルで囲うことで、美しい意匠として昇華させました。

選んだのは、表面の艶を抑えたタイル。大きな面を占めるからこそ、色味だけでなく質感も吟味することで、室内で使われている木部とも馴染み、自然と同居しています。

キッチンの下部収納は、ワントーン濃いテラコッタ色で塗装。同系色でグラデーションをつくることで、落ち着きを与え、空間を引き締めるメリハリが生まれています。

タイルや塗装扉の艶を抑えた仕上げに合わせて、レンジフードも『フラットレンジフード』のステンレス バイブレーションをセレクト。光沢を抑えることで、静かに空間に馴染んでいます。

「収納もしっかり確保したい」というお施主様のリクエストに応え、カウンター下やPS柱の側面など、スペースを余すことなく収納として活用。生活感の出やすい冷蔵庫や調理家電はタイル柱の裏側に配置。ダイニングなどくつろぐ時の視界から目隠ししつつ、スムーズな調理動線も両立しています。

厚みのある天板は、薄塗りの人造石研ぎ出し仕上げが可能な左官材「ビールストーン」で仕立てました。単一でない鉱石のような表情が、器や食材を引き立てる背景となり、日々の気分を高めてくれます。

この天板は、ダイニングカウンターも兼用。リビング側がスキップフロアになっている構造を活かし、ハイスツールではなくダイニングチェアで過ごせる高さに。迎える椅子の選択肢が広がるのが嬉しいですね。

お子様が成長した時には、勉強するスペースとしても活躍してくれそうです。

壁面の一部や床の見切りには、緩やかな曲線を持たせたつくりに。凹凸のない真っ直ぐな天井に、アール壁から落ちる影のグラデーションが美しく、単調になりがちな大空間の余白に柔らかなニュアンスを与えています。

直線でパツンと区切るのとは違い、各空間が自然と繋がっていく心地よさ。25畳のLDKをよりゆったりと感じさせてくれる、包み込まれるような安心感を演出しています。

そんなアール壁で仕切られた、キッチンの背面は、家族のプライベートな寝室へと繋がっています。

寝室を仕切っているのは、三連の造作引き戸。すりガラス越しに朝の光が入り込み、心地よい一日の始まりを予感させます。

この引き戸は、袖壁に完全に引き込むことができる仕様になっていて、日中はフルオープンにしてLDKと一体化させることも。のびのびと開放的に過ごしたい時も、個の空間に閉じて集中力を高めたい時も、気分に合わせて空間のあり方をフレキシブルに選択できる仕掛けです。

デスクスペースと一体に備えた造作収納。埋め込み型の『フラットレセップ』が、ミニマルなワークスペースに溶け込みます。

限られた予算内で理想を叶えるため、当初、引き戸を既製品にする案も上がっていました。そんな中、出てきたのが、壁面収納を扉のないオープン仕様にするという、別視点からのコストコントロールのアプローチ。

何を削って、どこに予算をかけるか、優先順位を明確にすることで、一番大切にしたかった造作ならではの素材感をしっかりと残す選択をされました。

寝室の内側から見ると、建具の高さがあえて低く抑えられていることに気づきます。

これは、ご夫婦が訪れた金沢の宿『香林居』にインスピレーションを受けたもの。天井まで届くハイドアではなく、あえて高さを1.8mの襖を思わせるサイズ感にすることで、空間にほんの少し和の情緒をプラス。包み込まれる様なおこもり感と、心静まる安心感を生み出しました。

床の仕上げだけでなく、間仕切りの高さによって、過ごすモードを切り変えてくれる工夫です。

家族がそれぞれの場所で過ごしていても、気配が届く距離感。この家ならではの日常の風景です。

寝室の壁面収納はヒノキ合板を選び、少しラフな風合いを残した仕上がりに。

お施主様が当初から熱望されていた質感は、LDKから眺めた時にも、端正な白壁の中で美しいアクセントになっています。ふと視界に入るたびに、テンションを上げてくれるそうです。

こうした素材感を空間のフックとして効かせる工夫は、リビングの一角にも施されています。

アール壁の一部をそのままくり抜いたかのような飾り棚。こちらもヒノキ合板の美しい木目を効かせることで風合いを際立たせています。

壁面のカーブにピッタリ揃えられた棚板が、柔らかな印象。何を飾り、どう見せるかによって、リビングの景色も自在に変えていける様な、遊びあふれる収納です。

この壁面収納の裏側に回り込むと、そこは洗面スペースに。扉でしっかり区切るのではなく、アール壁の連続性によって、動線が自然と繋がっていく配置です。

洗面の明かりにも「フラットレセップ」を使っていただきました。器具の主張を抑えた形が、ミラーやカラー目地などこだわりの仕様を引き立てます。

壁面は、クリーンな白タイルに、テラコッタ色の目地の組み合わせ。実はこの配色、先ほどのキッチンタイルと反転した色の組み合わせになっています。

キッチンと緩やかに繋がるオープンな場所に設けた洗面だからこそ、こうした配色のユニークさが光ります。住まいに統一感をもたらし、自分の家への愛着を深めてくれる、オリジナリティ溢れる仕掛けです。

リビングには、お施主様が以前の住まいから愛用している大きなソファ。住まいが広くなったことで、元々好きだったインテリアへの愛着が更に深まったそうです。

運命的な物件との出会いを、象徴的なテラコッタのキッチンに落とし込んだ、唯一無二の住まい。

家づくりの過程を振り返ってお施主様は「全体を通じて“中途半端にしない”ことが、結果的によかったなと感じています」と振り返ります。

大胆なテラコッタキッチンの裏にある収納の工夫や、LDKの圧巻の広がりと、おこもり感のある寝室の心地よいギャップ。そして、デザイナーによる別視点からのアプローチによって、本当に残したかった素材感を守り抜く選択。

優先順位とコストのメリハリを明確にし、自分たちの「理想」を中途半端にしない。そのブレない決断があったからこそ、視界に入る全てに妥協したところがない、美しい住まいの景色が実現しました。

nuリノベーション

nuリノベーション

株式会社ニューユニークスが運営するリノベーションブランド。
“いい時間を、つくる。”をキャッチコピーに、ヒアリング重視のオーダー型リノベーションを提供。アドバイザー、設計デザイナー、施工管理のチーム体制で、物件探しから資金計画・設計・施工・インテリアまで、ワンストップで家づくりをサポートしています。

テキスト:岩崎

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