明るい昼間の空間をイメージして家づくりをすることは多いと思いますが、「夜の過ごし方」についてはどうでしょう? 休日の昼間を家族で心地よく過ごせることももちろん大切ですが、忙しい平日の夜こそ、ほっとひと息つけることが大事なのかもしれません。
ご紹介するのは、4LDKと細かく仕切られていた面積82㎡のマンションを、ゆったり2LDK+ファミリークローゼットという間取りにリノベーションした住まい。58㎡のルーフバルコニーからは森林公園の緑を眺める、好条件な物件です。
設計を手掛けたのは、福岡・北九州に拠点を置き、オーダーメイドキッチン・ オーダーメイド家具の製造・販売を行うSYNC-FURNITURE。自社で物件を購入してリノベーションした物件で、「北欧家具が溶け込む 落ち着いた空間」をコンセプトに掲げ、内装を計画しました。
北欧は冬が長く、夜の時間も長い地域。だからこそ、あかりで暮らしを演出する文化があります。この家では、そうした「夜の過ごし方」まで意識して空間をリノベーションしました。
その設計思想は玄関から。ドアを開けると、板壁をブラケットライトが照らす、ほの暗い玄関ホールが出迎えます。明るく照らしすぎないことで、気持ちを切り替えやすい場所にしました。
床は『土間タイル』のライトグレー、壁天井はコンクリート壁のようなざらついた表情のクロスを採用。あかりをやわらかく反射する素材たちでまとめて、陰影を感じる空間にしています。
廊下の壁は、ニヤトーの突板で仕上げました。空間ではなく壁を照らすように取り付けたライトが、木のあたたかみを強調。ダークグレーのクロスと相まって、玄関からLDKへ向かう間に、気持ちをゆっくりリラックスモードへ導いてくれます。
そうして辿り着くLDKは、木を多用した内装と控えめな明かりが、くつろいだ気分にさせてくれる空間。梁下には間接照明が仕込まれており、ざらりとした表情の左官で仕上げた天井に、光がじわりと滲むようにまわります。
YチェアやPP58チェア、北欧ヴィンテージのテーブルも、空間に親密な空気感を添えています。
“陰影を味わう”ための仕掛けは、キッチンにも。
キッチンを囲むアール壁は、『クラシックリブパネル』で仕上げました。滑らかな曲面の凸凹と艶感が特徴の「ラウンド」を使い、光と影のコントラストを際立たせています。
緩やかなカーブを描く壁は、リビングとダイニングをゆるやかに繋ぐ役割も果たしています。
本来、『クラシックリブパネル』は曲面施工対応の商品ではありませんが、今回は現場で加工を施し、カーブ面に施工しています。
こちらは施工時の様子。パネル裏面に凹型の溝を入れることで、下地の曲面に沿わせやすくしています。今回は、曲面部分に貼る板は、実(さね)部分もカットした上で貼り付けています。
曲げ加工の方法はひとつではなく、現場や納まりによってさまざま。『クラシックリブパネル』を曲面に施工したい場合は、施工会社や職人さんと相談してみてください。
昼間の自然光の中でも、『クラシックリブパネル』は光を穏やかに受け止め、やわらかく拡散します。
こうした立体的な意匠の木製リブパネルは、デンマークの首都・コペンハーゲンにある放送局で、音響効果を高める目的でつくられたのが始まりだと言われています。そんな背景もあってか、リビングダイニングに並ぶ北欧家具とも、自然に調和しています。
壁の一部に作ったニッチは、『クラシックリブパネル』の樹種に合わせてニヤトーで造作。ブラケットライトを添えて、板壁の表情とディスプレイの存在感を際立たせています。
よく見ると、ニッチのフレームや棚板の見付け部分は、丸みを帯びた凸型になっています。『クラシックリブパネル』の曲面との馴染みを考えて、このような仕上げにしたのだそう。家具屋が設計した空間ならではの、こだわりを感じるディテールです。
キッチンはリノベーション前と同じ位置のまま、レイアウトとデザインを一新。壁付けだったキッチンを、シンク側とコンロ側でキャビネットを分けたⅡ型にして、対面スタイルと作業面、収納量の確保を実現しています。
スモーキーピンクのメラミン仕上げの面材に、丸くくり抜かれたような手掛けがアクセントになったキッチンは、SYNC-FURNITUREがデザインから製作まで手掛けたもの。リビングダイニング側からは見えない箇所ですが、彩り豊かなキッチンは、足を踏み入れるたびに気分が上がりそうです。
ダイニングに対面したコンロ側からは、窓越しに抜群の眺めが広がります。レンジフードとダクトは頭上に造作した収納と一体化させて隠し、見晴らしを損なわないようにしました。
また、シンク側の壁には、平滑ではない表面と艶感が特徴的なタイルを採用。窓から届く自然光や間接照明の明かりを反射して、光を感じる工夫をしています。
洗面脱衣所には、北欧家具を思わせる洗面台が造作されていました。サイドボードの上にシンクを載せたような洗面台は、SYNC-FURNITUREがこの家のためにデザイン・製作したオリジナル。
LDKに予算を費やすため、洗面脱衣所は、リノベーション前と位置も広さも変えていません。その分、「洗面台」で空間の印象を丸ごと変えて、特別な空気感を感じられる場所にしていました。
バルコニーとルーフバルコニーに面したLDKには、昼間はたっぷりと自然光が差し込み、爽やかな空気が広がります。
ざらりとした左官仕上げの壁と天井、立体感のあるリブパネルといった素材たちは、夜の照明だけでなく、昼の光もやわらかく受け止め、空間の中に穏やかな陰影を生み出します。
昼間だけでなく、夜の居心地まで丁寧に整えられた住まい。時間帯によって移ろう光を愛でることができる空間は、時間をゆっくりと、親密に感じられそうです。
SYNC HAUS 01
設計・キッチン・家具デザイン制作:SYNC-FURNITURE
施工:くまがえ工務店
実施設計・施工サポート:CRAFT WORKS.
SYNC-FURNITURE
福岡・北九州に工房を構え、オーダーメイドキッチンや家具を手掛けるインテリアデザインスタジオ。工房2階でショールーム兼インテリアショップ「CLASSTA」を運営。空間プランニングからキッチン・家具の設計・製作までを行うリノベーションプロジェクト「SYNC HAUS」も展開。
CRAFT WORKS.
武末宗之が代表を務める、株式会社 CWTの住宅事業ブランド。住宅のリノベーションや店舗内装を中心に、オーダーキッチン、オーダー家具などの設計・デザイン・施工を手掛けています。武末宗之はTHE KITCHEN公認キッチンデザイナーとしても活動中。
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