大阪に拠点を構え、関西を中心に活躍するベテラン建築家の大西憲司さん。「いつか家を持つ時は父親に設計を頼みたい」と思っていた40代の息子さんから依頼に、父として、建築家として一肌脱ぐことになるのですが、息子夫婦とペットの愛犬が新居を構えるために購入した土地は、千葉の南房総。

大阪と千葉では、さすがに距離があるのでいつもお願いする工務店、職人さんたちには頼めないと、地元の工務店を探すところから息子夫婦の家プロジェクトはスタートしました。

敷地面積103坪の広い土地に建つ、33坪の戸建てです。

グランドレベルから8段ほど階段をあがった先に玄関がある、地面から少し浮き立ったようなシンプルな箱状の平屋。周囲の環境に馴染むよう選んだ、銀黒のガルバリウム鋼板の外壁に中央の杉板がアクセント。細長い水平窓がついています。中からの見え方がどうなってるか、気になりますね。

階段をのぼった玄関手前のスペースには、落下防止を兼ねたコンクリートの造り付けベンチが。お買い物をして帰ってきた時など、ここに一度荷物を置いて鍵を探したりできて良さそうです。

室内を拝見してみましょう。

玄関からワンクッションおいた、扉の先に広がるリビング、ダイニング。奥にキッチンがあります。

先ほどの水平窓は、リビングからの窓だったんです。外から見るとシンプルな箱型の形状でしたが、室内は、高低差あり、勾配天井ありで、空間の広がりが感じられます。

白と木がベースの空間に、窓先のグリーンのある景色が映えますね。

一段あがったダイニング空間がこちら。窓際にはカウンターデスクが。ここで、朝コーヒーを飲みながら仕事をはじめるとか、最高に気持ちがよさそうです。愛犬のマハロは、いつも自由に家の中を駆けずり回っているのだとか。

キッチンには、『木製システムキッチン』ラワンの対面型を採用いただきました。

ダイニングテーブルの天板や、カウンターデスク、その上のオープンな収納棚と、造作部をラワンで揃えることで、キッチンは既製品なんですが全体を造作でつくったような一体感が。

ダイニングテーブルの脚は、今回は、工務店さんが地元の業者さんを手配してつくってもらったそうですが、『角パイプフレーム脚』でも、幅・奥行き・高さを指定して同じような雰囲気のテーブルをつくることが出来ますので、ご参考までに。

そして、ライン状の照明が入ったすっきりしたキッチン上空、本来あるべきものがないとお気付きでしょうか……

レンジフードの代わりに『天井スリットファン』を採用いただきました。

天井側がすっきりなおかげで、窓の景色が引き立てられます。

キッチン上の少し高さを抑えた白い天井から、一段高くなったリビング側の木がアクセントの天井まで、遮るものがなくすっきり続いていく感じ。やはり、「天井スリットファン」はこういう高低差のあるキッチンにすごく向いていますね。

料理中は、ちゃんと煙を吸ってくれ、リビング側に煙が拡散することなく、快適に使っていただけているようです。

コンロ前に立った景色はこちら。

左側には、デッキと中庭が広がります。

晴れた日は外のデッキでごはんを食べるのも気持ちよさそうです。

中庭の横にある和室。こちらも天井と壁がラワンで包まれ、すっきり仕上げられています。リビングからオープンにつながっているように見える和室ですが、引き戸が壁の中にしまい込まれています。

中庭が見える高さを抑えた掃き出し窓は、写真ではガラス窓が引き込まれているのですが、框隠しのディティールですっきり。余計なモノが見えないようにする配慮が至るところに。

お庭の奥から家の方を見た景色がこちら。

正面の木サッシが見えるのが、先ほどの和室の空間。

右側のシルバーっぽい外壁の部分は、キッチン脇からL字に繋がる水回りの空間で、左側は個室が。実は、上からみるとコの字型の平面なんです。

キッチンの横を歩いていくと、洗面兼脱衣所とお風呂場の横には細長いランドリールームが。

洗面台の奥のRのついた袖壁、実はこれ、洗濯機の側面隠しなのですが、上の高さまで覆ってしまうと、奥が暗くなってしまうため、洗濯機の高さのところでRにカットしたのだとか。

ランドリールームには『ランドリーハンガーパイプ』を採用いただきました。

風呂から中庭を望んだ景色がこちら。

中庭は、塀を建てて、外部からの視線は遮っているので、プライバシーも保たれた中、この広い空を独り占め。あたたかい季節、窓を開け放って開放的にお風呂時間を楽しめそうです。ちゃんと網戸もあるので、虫の心配もないそうです。

実は、このお家が取材を受けたホームランディックさんのYouTube番組がありまして。そちらを見ると、各空間の詳細、すっきり見えるこだわりの納まり、設備や、外構回りから、外壁の素材、植栽、郵便受けの工夫などなど、戸建てを計画する方には気になる情報も盛りだくさん。

ぜひ、YouTubeも合わせてご覧ください。

ありがとうございました!

大西憲司設計工房

利便性や快適性だけを求めるのではなく、周辺の風景や場の持っている力を読み解きつつ、家族のライフスタイルにふさわしい、個性的な住まいを創造するのを得意とした、ベテランの設計事務所です。

テキスト:来生

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