キッチン・ダイニング・リビング・ベッド・ワークスペースが一体になったワンルーム。58平米あるのにワンルーム?最初に写真を拝見した時に不思議に思ったのですが、そのわけは「どこからでも猫を見ていられるように」という愛情からでした。

ホワイトのリネンやソファ、エイジング塗装した建具が、シャビーシックな雰囲気をつくっています。

腰壁や家具にラフな古材やインダストリアルな素材を使って、甘すぎないちょうどいいバランス。

キッチンの腰壁が空間をゆるく仕切って、生活感がでないレイアウトになっています。

シャビーシックなインテリアによく馴染んでいるのが、『フラットレンジフード』のホワイト。設備感のないミニマムな形状が違和感なく溶け込んでいます。

目立たないよう白く塗られることも多いダクトは、隠すのではなくあえてエイジング塗装をすることで、空間を格上げしています。

そして、天井下に設置されているのが、キャットウォーク。コの字に巡らされており、猫が広々と歩けるようになっているのです!

古材でつくったキャットウォーク。下面を白く塗装することで軽やかに見せています。それにしても可愛すぎる……。

キッチンにいても、ソファにいても、視線を向ければ愛猫がいる。1日のほとんどを過ごす場所を1箇所に集約することで、猫とできるだけ多くの時間を過ごせる家になりました。

両サイドにキャットタワー。のびのびと過ごして欲しいという思いが伝わってきます。

象徴的なトップオーバル窓は、既存の窓に内窓を取り付けたもの。丸みのある建具が世界観をつくり込んでいます。

ワークスペース脇の壁には、『ウォールディスプレイパーツ』で可動棚を設置。

黒皮鉄の被膜を落とした生地の状態の鉄でつくられたパーツなのですが、デスクにも古材をつかったラフな雰囲気によく合っています。

お施主さんが「ナイスアイデア!」と思ったというのが、パントリーの中につくった猫のトイレスペース。

パネルドアの下のパネルをくり抜いたので空間として違和感なく、猫は自由に出入りできます。中に換気システムを取り付けたため、ニオイも気にならないそう。

間取りにも工夫が。リノベ前は、玄関を入ってすぐ廊下があり、手前に勾配天井の納戸があったのですが、廊下をなくし、納戸とされていたスペースを“前室”としたのです。

左側の開口が玄関。右はウォークインクローゼットを通ってリビングに続きます。

デッドスペースとなりがちな納戸を導線に取り込むことで、猫の飛び出しが防止できたり、室温を一定に保てているそう。ウォークインクローゼットと玄関の間にあるので、身支度のスペースとしても活用できそう。

勾配天井には古材を貼って屋根裏部屋のような雰囲気に。ちょっと気分を変えたい時にも良さそうです。

そして、奥の扉の先は……と言いたいところですが、この先は窓。既存の窓にガラス入りの建具を合わせて空間に奥行きを出しているのです。

リビングのトップオーバル窓と同様に、既存の在り方にとらわれない面白いアイデアです。

リビングとウォークインクローゼットのどちらからも入れるレイアウト。

サニタリーはひとまとめに。トイレ壁の照明のゆらめきが雰囲気をつくっています。

そしてここにも、猫と生きる工夫が。リビングから仕切られた空間ではありますが、建具の上に小さな開口があるのに気づきましたでしょうか。

こちらはアクリルの窓になっていて、顔を出した猫を見られるようになっているんです。

お風呂上がりや身支度など、サニタリーで過ごす時間は意外と長いもの。そんな時も気配を感じられる素敵な工夫です。

よく見ると、ウォークインクローゼットに続く建具の上にもアクリルの窓が仕込まれています。

「どこにいても猫を見ていたい!」お施主さんの要望が様々な工夫で形になった、猫と生きるための家。潔いワンルームの間取りが、猫へのまっすぐな愛情を現しているように感じました。

ゼロリノベ(株式会社グルーブエージェント)

「大人を自由にする住まい」をコンセプトに、家を買うことで自由になる「家のさがし方」「家のつくり方」を提案するリノベーション会社。
東京・神奈川・千葉・埼玉を中心に、資産性のある中古マンションの「物件さがし」から「リノベーションの設計・施工」までワンストップで提供しています。

テキスト:庄司

関連する事例記事

住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
大阪の下町にある一部屋の宿。もとはごく普通の3LDKだった住宅を、間取りを一切変えずに「泊まれる場所」へと生まれ変わらせた宿の紹介です。
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
東京・練馬区の石神井公園のほとりに建つ、アーチが連なる不思議な建物。「なんのお店だろう?」と思いきや、実は住宅なんです。散歩の途中につい足を止めて見入ってしまうその佇まいは、そこに住む人だけでなく、植物や鳥までも受け入れる“器”として計画されたもの。そんなユニークな考え方のもとつくられた「鶴岡邸」をご紹介します。
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
タイムレスなミッドセンチュリーデザインに、下北沢カルチャーをプラスした空間。ホテルとして快適に過ごせるのはもちろん、仲間と集まって暮らすように楽しめる工夫もいっぱい。家族だけのマイホームとはまた違う、“仲間と過ごす場所”の事例が届きました。
外側は“堅牢”なコンクリート、内側は“柔軟”な木造で。「100年先まで住み継げる」若手建築家の自邸
外側は“堅牢”なコンクリート、内側は“柔軟”な木造で。「100年先まで住み継げる」若手建築家の自邸
mast一級建築事務所を主宰する建築家・根本昌汰さんの自邸。数百年先まで耐えられるコンクリートで外殻をつくり、その中に暮らしの変化に応じて柔軟に手を加えていける木造を入れ込むという、外と内で全く性質の異なる構造を掛け合わせた、独創的な住まいです。