今回の物件は、約半世紀前に建てられた兵庫県最古の団地のひとつ、「明舞(めいまい)団地」。

元の間取りは、1階にキッチン、浴室、洗面、トイレがあり、2階に和室2室と3畳の洋室がある3DK。1家4人が暮らせるように考えられたものですが、正直今の暮らしには合わないつくり。そこで、思い切って“1人暮らし”に照準をあわせ、リノベーションすることに。

Before

After

3部屋に分かれていた2階は、壁を全て取り払い、下の階にあったキッチンを持ってきてアイランドキッチンにして、階段をはさんでダイニングキッチンとリビングがゆるくつながったワンルームに。

元の間取りからは想像もつかない程の変わりよう。景色を眺めながら料理を楽しめるようになったキッチン。

2階をLDKにしたことで、眺望良し日当たり良好のリビングダイニングが出来上がりました。

暮らしのイメージを後押ししてくれるちょっとした棚が随所に散りばめられているのもうれしいポイント。

プライベート空間は1階に。元々浴室だった場所はウォークインクローゼットにし、ベランダにあった洗濯機置き場もこの中へ納めました。

右手にみえるのがWIC。オープン洗面で、広々気持ちよく身支度ができるようになりました。

日中は日の当たる2階で活動し、OFFの時間は1階でまったり過ごす。シンプルな間取りにしたことで、メゾネットの特徴が活きた空間に生まれ変わりました。

築55年の建物とは感じさせない変貌ぶり。

と、さらりと新しい間取りのご紹介をしましたが、実はキッチンを上階に持ってくるこの工事。普通はNGで、行うことが出来ません。

というのも、メゾネット上階に水廻りを動かすには、共用部である排水管から新しく横引きの配管を新設し、その配管を通す穴を壁に開ける工事が必要になるのですが、通常管理組合の規約ではどこもそのような工事は認められていないからです。

では、どうしてそんな工事ができたのか。それは、他でもない“住人の皆さんの後押し”があったから。

「規約を守り、空き家が増えていくことを受け入れていくか、それとも建物強度への影響がほぼないのであれば工事を受け入れ、若い居住者を呼び込める可能性を広げるか。」

提案を受け、管理組合で話し合った結果、今回はテストケースとして特別に許可することに決まったそうです。現在の明舞団地の高齢化率はなんと41.6%。超高齢社会になりつつある団地の中で、空き家が増えていくことへの危機感が背景にあったと聞きます。

「住環境を守ろう」とする住人の方々の思いによって実現された特別なリノベーション。完成物件は、相場を大きく超える価格で売りに出され、複数から引き合いがあり無事に売却されたそうです。

(ヤマキ)

株式会社フロッグハウス

神戸・明石のリノベーションに特化した工務店です。特に団地等の集合住宅や築古物件のリノベーションを得意としています。

紹介している商品

  • 写真の「フラットレンジフード アイランド型 W750 ホワイト」は仕様変更前のもので、現在販売しているものとは仕様が異なります。(仕様変更前:全艶塗装 → 仕様変更後:2分艶塗装)

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