8年前、75㎡の中古マンションを購入し、施主参加型の家づくりを提案しているHandiHouse projectと一緒にフルリノベーションした、夫のTさんと妻のNさん。プランニングや素材選びはもちろん、施工にも参加して、やりたいことを詰め込んだマイホームをつくり上げました。
フルリノベーション後もTさんは、その時々の暮らしに合わせてDIYで家に手を加え、toolboxでいう「アフターリフォームな暮らし」を実践してきました。
それから8年。当時2歳だった長女は小学校高学年になり、次女も誕生。子どもの成長とともに増える物や変化する暮らしに、次第にDIYでは対応しきれなくなり、住み替えを考えるまでに。一方で、子どもが地域で培ってきた人間関係を考えると、ここに住み続けたい。そうして、HandiHouse projectとの「2回目リノベ」に臨むことを決めました。
1回目のリノベーション時のプランはこちら。
個室は2つありましたが、その後8年のあいだに、リビング横の部屋はTさんのセルフビルドで解体され、DIYで二段ベッドを作ったり、新たに間仕切りを作ったりと工夫を重ねていました。
そしてこちらは「2回目リノベ」のプラン。今回のリノベーションでは、暮らしの中でストレスになっていた、「個々の部屋がないこと」と、「収納の少なさ」を改善することを大きな目的にしました。
しかし、それには「床面積」が必要。
この家の面積は75㎡。4人家族に妥当な広さに思えますが、ご家族の今の暮らしには、足りていないのが実情。じゃあ、どうするか。出てきたのは「ロフトをつくる」というアイデアでした。
そうして生まれたのが、こちらのロフト付き子ども部屋。
2.4mの空間を縦に有効活用し、ロフトの天井高さは1m、ロフト下は高さ1.2mと、どちらの空間も無理なく使える天井高さに設定しました。
ロフト上の広さは5.1㎡ほど。マットレス2つ分の広さがあります。下スペースは、収納ケースがいくつおさまるかまで計算して設計。ロフト床の裏にはハンガーパイプも取り付けて、子どもたちの衣服が収納できるようにしました。
子ども部屋には、姉妹のデスクも造り付けました。下部にワゴンが入れられるようカウンタースタイルにして、収納量を確保しながら、圧迫感を抑えました。
部屋を壁で閉じず、廊下まで子供部屋の延長として使えるようにしたのも工夫のひとつ。端がラウンドしたカウンターデスクは、子どもたちが走り回っても安心です。
壁で仕切られていない子ども部屋は、玄関直通。これなら、帰宅後のランドセルや荷物の片付けもスムーズですね。
ちなみに、子どもたちが大きくなって必要な時が来たら、廊下との間に壁を立てられる計画になっています。
子ども部屋の正面、玄関横の壁は、「収納コーナー」として刷新。壁に下地を入れ、フックなどの収納パーツを取り付けました。
インダストリアルなメールボックスは子どもたちのプリント管理用。その隣には、トレーを引っ掛けて小物を収納できるパーツトレー用パネルを設置しました。上部の『マリンデッキライト』が道標のように、プリント提出や持ち物の片付けを誘導します。
「1回目リノベ」でつくっていた、玄関横にある約3.7㎡の納戸には、しまいたいものに合わせて棚を造作しました。
「住んでいる家」のリフォームだからこそわかる、「何をしまいたいのか」「どれくらいの量があるのか」「どこにあれば使いやすいのか」をしっかり見極めて計画しました。
今回のリノベでは、アールのついた入り口も作り、もともとの天井から50cmほど下げた天井も作りました。なぜ50cm下げたのかというと……
こちらは、子ども部屋のロフト部分。奥に高さ50cmほどのスペースが広がっているのが、わかりますか?
実は納戸の天井裏も“隠し”収納スペース。キャリーケースや季節用品など、使用頻度の低いものをしまっておけます。
子ども部屋のロフトに上がると、納戸ロフトの反対側には、リビングへと続く“抜け道”が用意されていました。
ロフトの“抜け道”を通って、ハシゴを伝ってリビングに降りると、そこにあるのは新たにつくった小さな個室。
ブルーの塗装壁をアールがついた開口部が切り取って、どこか楽しげな雰囲気を生み出しています。
ブルーの壁は、PORTER’S PAINTSで塗ったもの。今回もTさんは工事全般に参加しましたが、塗装には娘さんたちや妻のNさんも参加しました。
各所のコンセントやスイッチには『アメリカンスイッチ』が使われていました。
半個室の中には、テーブルとしてもベンチとしても、棚としても使えるカウンターを造り付けました。
ここは、現在はパソコン作業部屋として家族で共有中。部屋は、シングルのマットレスひとつが置けるサイズでつくられており、家族が個室で過ごしたい場面が生まれたら、対応できるようにしています。
半個室の上部もロフトになっており、広さは約3.7㎡。立ち上がった壁がほどよいこもり感を感じさせてくれるスペースになっています。半個室と同じく、ここも人ひとりが寝転べるスケール。
玄関から廊下を通じてLDKへアクセスするルートと、リビングからロフトを通じて子ども部屋へアクセスするルート。75㎡の中に生まれた長い回遊動線も、家に体感的な“広がり”を生み出しました。
縦方向の空間利用は、リビングでも。ロフトへ続くハシゴの下には、小上がりベンチを作りました。「床面」と「収納」両方を確保するアイデアです。
他にも、小上がりベンチの隅に収納棚を作ったり、アイランド型だったキッチンカウンターを、あまり使っていない動線を潰して収納を付け足したりと、「床」と「収納」の面積を地道に確保。
収納場所がなく、リビングの床に置かれていたおもちゃや生活用品たちも、居場所を見つけることができました。
ラワンで造作した箇所は、『ワトコオイル』で塗装しています。
子ども部屋のロフトに、納戸ロフト、リビングの半個室ロフトに、小上がりベンチ。さらに主寝室にも、ベッドになる小上がり収納を造作しており、新たに作った収納分も含めると、稼いだ面積は約22.5㎡。75㎡+22.5㎡で合計97.5㎡。100㎡弱のスケールに住まいを拡充させることができたわけです。
「空間を縦に拡張する」というアイデアで、面積の限られたマンションの住まいを“広げた”今回のお家。そのベースを考えたのは、長年にわたり家族の暮らしと空間のあり方を観察し、DIYで工夫を重ねてきたTさんでした。
「こんなふうにできたらいいな」という妄想を出発点に、ご家族とHandiHouse projectが一緒に形にしていった今回のリノベーション。
暮らしの課題を伝えてプランを委ねるのではなく、そこに暮らす人自身が考えたアイデアを、対話を重ねながら住まいへと落とし込んでいく。「施主と一緒につくり上げていく」スタイルだったからこそ、この家ならではの解決策にたどり着けたのかもしれません。
実は、TさんとNさんがHandiHouse projectとの「2回目リノベ」を決意するまでには、さまざまな葛藤と紆余曲折がありました。8年間、暮らしと家に向き合い続けてきたご家族のストーリーは、HandiHouse projectのnoteで紹介されています。
中田製作所
中田裕一・中田理恵が代表を務める、神奈川県逗子に拠点を構える一級建築士事務所+施工会社。省エネ住宅「パッシブハウス」づくりに取り組む。
建築家集団・HandiHouse projectのメンバー。
HandiHouse project/ハンディハウスプロジェクト
合言葉は『妄想から打ち上げまで』。
家づくりが趣味になれば暮らしも豊かになる。
そんな思いのもと、設計・デザインから工事のすべてにおいて、施主も一緒に参加する空間づくりを提案している、建築家集団です。
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