ラワン合板のキッチン、無垢材のカウンター、ヴィンテージ家具、ステンレスのキッチンパネル。古いものに新しいもの、和のテイストかと思いきや異国の雰囲気を感じるものも。本来なら主張し合ってしまいそうな要素が集まっているのに、全体として同じ空気を纏っているように感じます。
その理由のひとつは、色味やツヤ感といったトーンが統一されていること。そしてもうひとつが障子から差し込むやわらかな光です。
古さも新しさも、和も洋も、バラバラに存在していたものたちを、ぼんやりとした光がまとめて包み込み、境界線をぼかしてくれているように感じます。
また、住まいの中に散りばめられた曲線や斜めのモチーフにも注目です。
キッチンパネルとして取り入れたのはまあるく形どったステンレス。箱型のキッチンや冷蔵庫など、直線的で硬い印象になりがちなキッチンに、曲線がひとつ加わるだけで、空間全体の表情がふっとやわらぎます。
キッチンカウンターの腰壁とパントリーの衝立には『クラシックリブパネル』を使用。カウンターは材料を無駄なく使うために、あえてジョイント部分を増やして、全体に均等に配置しています。継ぎ目を隠さず、デザインのアクセントとして見せるグッドアイデアです。
ダイニングの向かい、リビングの大きな窓の向こうには、まっすぐに伸びる水平線。障子越しの光に包まれながら、自然と視線は窓の向こうの景色へと導かれていきます。
波の音や潮風がやわらかく流れ込み、移ろいゆく時間をゆっくりと感じられるような、心落ち着く空間です。
リビングのコーナーにはラワンの曲面の壁。
角を取ることで空間がなめらかに繋がり、実際以上の広がりを感じさせてくれます。
焼けた茶色の壁に、植物のグリーンがよく映え、時間とともに形や表情を変えていく様子も楽しめそうです。
玄関の扉を開けると、天窓のようなまあるく光る天井に、奥の空間へとなめらかに繋がる曲面の壁。何でもない住宅のようでいて、どこか迷路に迷い込んでしまったかのような不思議な感覚を覚えるエントランスです。
奥に足を進めると、天窓のように見えていたのは半円形にくり抜かれた天井でした。天井の一部が削られたことで2階へと視界が抜け、階段の先の景色をのぞいているような感覚に。
このように曲線や斜めのラインは、見た目のアクセントとしてだけでなく、空間の中での視線の流れをつくる役割も。直線的で工業的になりがちな日本の住まいの中に、やわらかさや奥行きを生み出し、立体的な広がりを感じさせてくれます。
また、この住まいでは窓の多くに障子が使われています。
交通量の多い立地だからこそ、プライバシーを守りながら光を取り入れるために、やわらかく閉じた空間を作るために障子を選んだそう。
障子越しのぼんやりとした光が奥へ奥へと広がっていく、包み込まれるようなやさしい雰囲気が心地良い。
1階には仕事部屋と寝室。
間仕切りはコストを抑えるために既存の襖の和紙を貼り替えたものを使用しています。
すべての襖を開け放つと家全体がぐるりと回遊できるひとつながりの空間に。 仕事部屋と寝室とで床の高さを変えることで、戸を開けているときも、つながりは感じながらも、自然とオンオフの切り替えができるような気がします。
ごく一般的な木造住宅の既存は活かしつつ、素材の組み合わせ方や光の取り入れ方、曲線や斜めのモチーフの見せ方などを丁寧に重ねるようにつくられた住まい。
ここで過ごす時間とともに、新しいものたちもまた古さをまとい、ゆっくりと表情を変えていく。そんな移ろいを楽しめる住まいが、静かに広がっていました。
(写真提供:大竹 央祐)
一色暁生建築設計事務所
兵庫県の海のそばに佇む設計事務所です。
毎日新しい発見があり、日々昨日とは違うストーリーが生まれては消えてゆく建築。土地の持つ空気、施主の心理を丹念に読みとり、その人にとっての楽園となるような建築をつくりたい。そんな思いで設計をしています。
紹介している商品
関連する事例記事