14年暮らした家を、もう一度見直す
今回リフォームしたのは、新築当初から暮らしてきた家のキッチン。
家を建てるときから、住まいについて自分で調べることが好きだったというお客様。当時はまだ施主支給が今ほど一般的ではありませんでしたが、キッチンも自分でいろいろと調べながら選んでいったそうです。
その頃からtoolboxのことも知っていて、当時の「家づくりメモ」には「toolbox」の文字が残っていました。今回リフォームを考えたとき、そのメモを見てtoolboxを思い出してくださったことが、ツールボックス工事班|TBKへのご相談につながっています。
そんなふうに自分たちで考えてつくり、長く使ってきたキッチンで、ある日吊り戸棚が落ちました。
落ちてしまった吊り戸棚は、扉を外して床に置き、オープン収納として使うことに。さらに、置き型のシンクまわりの木天板は腐食が進み、排水にも不具合が出ていました。
実家を処分する際に引き取ってきた食器も増え、収納場所にも少し困っていたところ。こうしたいくつかの不具合が重なり、キッチン全体を見直すことになりました。
打ち合わせの中で、TBKの担当者から「きっと今のキッチンが好きなんでしょうね」と言われたお客様。そう言われてみると、木の天板をはじめ、これまで使ってきたキッチンの雰囲気が好きだったことに、改めて気づいたといいます。
そこで提案されたのが、傷みが進んでいたシンクまわりだけを新しくするという方法。「それがいい!」と、すぐに思ったそうです。キッチンをリフォームするなら、すべてを新しくしなくてはいけないと思っていたところに、好きな雰囲気はそのままに、困っているところだけを解決する方法がある。そんな提案に、驚きと感動があったといいます。
だから、今回のリフォームで目指したのは、すべてを新しくすることではなく、これまで使ってきたものを活かしながら、今の暮らしに合わせて整えることでした。
長く付き合ってきた木の天板を活かして、シンク周りをつくり直す
今回のリフォームでは、キッチン本体を丸ごと入れ替えるのではなく、気に入っているものは残しながら、今の暮らしに合わなくなったところを更新することに。
TBKの担当者曰く「少し模様替えをするような」感覚で進めていきました。
そのひとつが、シンクまわりです。
長く使ってきた木の天板は、今も気に入っているもの。けれど、シンクまわりは水による傷みが進んでいたため、そこだけをステンレスに変更することにしました。
とはいえ、既存のキッチンに合わせて新しいシンクを取り付けるのは、簡単なことではありません。既存の天板を現場で加工し、そこにぴったり納まるようシンクを製作。寸法を細かく測りながら、ミリ単位で調整していきました。
以前は、木の天板が濡れないように水はねを気にしたり、濡れたものをシンクまわりに置かないようにしたりと、日々いろいろなことに気を配っていたそう。
「シンクだけではなく、シンクまわりも一部ステンレスになったことで、そういうことを気にしなくてよくなったんです。自分では当たり前に気をつけていたけれど、実はストレスだったんだなと気づきました」
そう話すお客様。以前は洗ったものをシンクの中に置いたラックで乾かしていたため、シンクが狭くなってしまうことも悩みのひとつでした。
シンクの縁に立ち上がりがあることで、木の天板に水が流れることもなく、濡れたものも少し傍に置いておくこともできます。見た目だけではわからない、日々の使い心地にも変化が生まれました。
キッチン本体も、今の好みに合わせて少しだけ模様替え。もともとのアイボリーから、少しグレーを混ぜた落ち着きのある白へ塗り替えました。色が変わるだけでも、14年使ってきたキッチンの印象はぐっと変わります。
さらに、ガスコンロやレンジフード、水栓、ガスオーブンなど、これからも使い続けるために必要な設備は新しく。
すべてを新しくするのではなく、気に入っているものを残しながら、今の暮らしに必要なところだけを更新する。
今回のリフォームは、そんな「残す」と「変える」のバランスを考えながら進めていきました。
暮らしに合わせて、収納のかたちを考える
実家を処分する際に引き取ってきた食器など、、これからも大切に使っていきたいものが増えたことで、収納も見直すことになりました。
今回の収納計画では、「これくらいの大きさがあれば入りそう」と感覚で決めるのではなく、お客様が実際に持っているものを一つひとつ確認。食器やキッチン用品の大きさを測りながら、どのくらいの奥行きや高さがあれば使いやすいかを検討していきました。
新しくつくった吊り戸棚は、上下で奥行きを変えています。下段は浅めのオープン収納にして、普段よく使うものを取り出しやすく。上段は引き戸を設け、使用頻度の低いものをしまえるようにしました。
収納量はしっかり確保しながらも、吊り戸棚が大きく張り出してキッチンを圧迫してしまわないよう、奥行きや高さを細かく検討しました。
そんなふうに収納を計画することで、ものが増えても、以前より軽やかに使えるキッチンになりました。
また、キッチン本体の隣には、バーチの積層合板で作ったカウンターを新設。ここには、食器やキッチンまわりのものをしまえる収納に加えて、ゴミや段ボールなどを置く場所も確保しています。
実はキッチンとカウンターの間には、あえて隙間を残しています。当初は段ボールを入れるためのスペースとして考えていた場所ですが、実際に暮らし始めてみると、網や薄い調理器具、トレーなどを置く場所として活躍しているそう。
キッチンに何をしまうか、どんな収納が必要か。計画の段階ではもちろん考えてつくります。けれど、実際に暮らしてみれば、使いやすい場所や、ちょうどいいものの置き方は少しずつ変わっていくもの。
14年間この家で暮らしてきたからこそ、自分たちにとって心地よい使い方もよく分かっている。新しく整えたキッチンも、暮らしながら少しずつ自分たちらしい使い方へと馴染ませているようです。
残すものに合わせて、新しく作る。
TBKではこれまでも、すべてを壊して新しくするのではなく、既存のものを活かしながら、残すところと変える部分を見極めたリノベーションに取り組んできました。
既存の間取りや内装をなるべく壊さず、「素材」として活かすことを試みた実験空間『studyroom#1』も、そのひとつです。
今回のキッチンリフォームも、そんな考え方につながるものでした。
既存のものを残すということは、ただそのまま使うことではありません。吊り戸棚の取り付けでは、以前落下したことを踏まえて下地を補強。レンジフードの交換で一部剥がれてしまったタイルも、全面的に貼り替えるのではなく、既存のタイルに合わせて部分的に補修しました。
残したいものがあるからこそ、そこに合わせて新しくつくる。
そんな細かな調整を重ねながら、14年使ってきたキッチンに、新しいものを馴染ませていきました。
変わったけれど、変わらない。家族の時間が続くキッチン
今回のリフォームで、キッチンには吊り戸棚や収納、シンクまわり、設備など、いくつもの新しいものが加わりました。
それでも、工事を終えたキッチンを見てみると、「新しくなった」というよりも、「なんだか前からこうだったような」そんな印象があります。
14年間使ってきたキッチン本体や木の天板を残したことに加えて、新しく加えたものも、これまでの暮らしや空間に合わせてつくられているからかもしれません。
けれど、見た目の変化は控えめでも、使う人の気持ちには大きな変化があったようです。
新しくなったキッチンをきっかけに、ほかの場所ももっとよくしていきたいと感じるようになったり、念願だったガスオーブンを迎えたことで、以前は少なくなっていたお菓子やパンを焼く時間を、また楽しみたいと思うようになったといいます。
リフォームによって変わったのは、キッチンの使い勝手だけではありません。家への愛着が深まり、この先の暮らしをもっと楽しもうという気持ちにもつながっているようです。
使う人がすでに知っている、この家の心地よさ。その感覚を大きく変えるのではなく、今の暮らしに合わせて少しずつ整えていく。
だから、変わったところはちゃんとあるのに、家の雰囲気は変わらない。
キッチンの機能は新しくなっても、ここが家族で料理をしたり、食卓を囲んだりする場所であることは変わりません。
これまでの14年に、新しくなった部分がすっと馴染んでいく。
そんなふうに、この家のこれからも続いていくのだと思います。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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