子育てがひと段落した、その先の暮らしをどう描くか。
今回ご紹介するのは、リノベーション会社「ASTER」が手がけたモデルルームです。

夫婦ふたりの時間を心地よく過ごしつつ、これからのライフステージの変化にも寄り添う、そんなセカンドステージを見据えた住まいをかたちにしました。

舞台となったのは、築年数は経っていながらも、自治体から優良建築物として認定されているRC造マンション。「古い=不安」ではない、物件選びの視点も含めて、空間づくりの参考になったら嬉しいです。

この住まいの大きな魅力は、130㎡というゆとりある広さと、窓の外に広がる緑と光あふれる眺望。今回のリノベーションでは、人生の第二ステージを迎えるご夫婦に向けて、“ちょうどいい暮らし”を整えるヒントを詰め込んだ空間を目指しました。

まず重視したのは、暮らしの中での「動線」の考え方です。

今回想定した家族像は、家の中でそれぞれの時間を大切にしながら過ごす、夫婦ふたりの暮らし。家事が好きで家の中を行き来することの多い奥様と、家で集中して作業する時間も大切にしたいご主人。そんなふたりの過ごし方が無理なく共存できるよう、間取りを計画しました。

廊下を介して各部屋がつながり、さらに、「キッチンーリビングーダイニング」、「洗面室―ウォークスルークローゼット―バルコニー」という、二つの回遊動線を設けています。
行き止まりのない動線が、家事の流れを自然とスムーズにし、日々の小さなストレスをやわらげてくれます。

まず動線計画の中心に据えたのは、奥様が家事の時間を多く過ごすキッチン。
家の中を行き来することの多い日常を思い描きながら、キッチンに立つとリビングの様子はもちろん、外の緑の風景まで自然と目に入るようにしました。

リビングと一続きにつながるキッチンは、対面式を採用。
床と壁はグレーのタイルでまとめ、空間全体を引き締めつつ、落ち着いて料理ができる雰囲気に仕上げています。

キッチン水栓は、『ハンドホース水栓』。収納の取っ手には、『アングル把手』を採用いただきました。

キッチンはⅡ型のレイアウトを採用。シンク側カウンターはステンレス製の『オーダーキッチン天板』で、IHヒーター側のカウンターはモールテックスで仕上げました。収納は「見せない」を意識し、調理道具や家電は天板下にすっきりと納めています。IHヒーターの上部には、『天井スリットファン』を埋め込み、目線高さだけでなく、頭上もすっきりとした見晴らしに。備え付けの照明も必要最小限に抑えています。

リビングの窓から広がるのは、気持ちの良い眺望。
街路樹の葉と、ベランダの植栽が重なり合い、季節ごとに表情を変える風景が楽しめます。窓を開ければ、やわらかな光と風が室内に届き、つい長く過ごしたくなる場所になりました。

リビングとダイニングは、ゆとりある一体空間に。
幅広の無垢フローリング、天井から床まで長さを持たせた柔らかなカーテンでゆったりとした雰囲気に仕立てながら、躯体現しの梁やモルタルをアクセントに効かせています。

天井まわりをすっきり見せるため、空調は床置きタイプのエアコンを採用。天井に本体やダクトなどの機器類を極力出さないことで、視線を遮らず、空間の広がりを感じられるようにしています。

そして、リビングで一際目を引くのが、熊本産の河内石で支えたモルタルベンチです。
腰掛けるだけでなく、テレビ台として使ったり、アートや本、植物を飾るシェルフのように使ったり。暮らし方に合わせて役割を変えられる、余白のある居場所として用意しました。

直線を基調としたシンプルな空間の中で、河内石の有機的な曲線がほどよいアクセントとなり、空間にやわらかさを添えています。

洗面水栓には『壁付けセパレート混合水栓』を採用いただきました。

洗面脱衣室は、タイル仕上げで落ち着いた雰囲気に。
壁いっぱいに設けた大きな洗面ミラーのおかげで、朝の身支度もゆったりとした気持ちで行えそうです。

洗面からつながるウォークスルークローゼットには、壁一面に収納を計画。
衣類や荷物をたっぷりと収められる容量を確保しました。ドアにはミラーを取り付け、身だしなみのチェックもここで完結。

ウォークスルークローゼットはバルコニーに続いており、洗濯物を取り込んだらそのままクローゼットへ収納。日々の家事動線がひと続きになるよう考えられています。

ご主人の仕事部屋は、集中できるように個室として計画。
外部の音を抑え、静けさを保った空間で、オンとオフを切り替えられる場所になりました。

寝室も、ゆったりと落ち着いて過ごせる静かな空間に整えました。
木のヘッドボードでくつろぎ感を添えつつ、窓まわりの床はタイルに切り替え、インナーテラスのようにグリーンを置いて楽しめる工夫も。

すべての窓には二重サッシを採用し、遮音や断熱にも配慮しています。

「子供が巣立った後のセカンドステージ」をイメージしながらつくられた住まい。“こんな暮らしができたら”という理想と、大人世代ならではの上質さやゆとりが表現されている素敵な事例でした。

ASTER |中川正人商店

ASTER |中川正人商店

熊本を中心に活動するリノベーション専門店。住宅リノベーションや店舗改装のデザイン設計・施工までを一貫して行っています。熊本市中央区九品寺に構えるインテリアショップ「conceptstore A.」と「KUHONJI GENERAL STORE(9GS)」では、家具やカーテン、照明を含めたインテリア全体のコーディネートも提案しています。

テキスト:小尾

関連する事例記事

線と色と動線を整えて、暮らしに余白をつくる。6.3mのロングキッチンがある、ノイズレスなマンションリノベ
線と色と動線を整えて、暮らしに余白をつくる。6.3mのロングキッチンがある、ノイズレスなマンションリノベ
子ども2人それぞれの個室に、夫婦の寝室、4人家族の暮らしを支えるのに十分な収納量。それらを73㎡におさめながら、いかに“ゆとり”を感じられる空間にするか。そんな課題に、コストや再現性にも目を向けながら取り組み、暮らしの現実と洗練された空間を両立させたリノベーション事例をご紹介します。
「民藝品×ポストモダン」を軽やかにミックス。愛すべき蒐集品と共に暮らすための住まい
「民藝品×ポストモダン」を軽やかにミックス。愛すべき蒐集品と共に暮らすための住まい
穏やかなシナ材と白で構成された端正な内装に、住まい手の個性が映えるマンションの一室。アートと連動する差し色使いや、生活に溶け込むディスプレイコーナーなど、大切なコレクションを美しく設える内装の工夫を紐解きます。
赤い床と木のキッチン、モルタルのような土間空間。緑と暮らしが映える「背景」をつくるリノベーション
赤い床と木のキッチン、モルタルのような土間空間。緑と暮らしが映える「背景」をつくるリノベーション
観葉植物を育てるのが趣味という施主家族が選んだ住まいは、窓の外に木々の緑が広がるマンション。植物が映える素材を取り入れながら、眺める景色と愛でるグリーン、その両方を楽しめる空間へとリノベーションしました。
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
お施主様の趣味であるサウナから着想を得た洗面室、愛車が映える広々とした玄関土間。長く愛用してきた家具のトーンを内装へ活かしつつ、多様な素材で切り替えることで、場所ごとに異なる居心地を生み出しました。住まう人の「好きな雰囲気」を家全体へ丁寧に浸透させていった家づくりをご紹介します。