兵庫県・川西の閑静な住宅街に建つ、築47年の木造平屋の改修計画。
予算の関係もあり、状態のよかった外壁と屋根はそのまま活かし、内部のみリノベーションすることに決まったものの、工事を進める中で見えてきたのは、床のゆがみとシロアリの侵入痕。そこで、思いきって床をすべて解体し、布基礎からスラブでしっかり補強することに。
その一部をあえて仕上げずにそのまま残すことで、土間仕上げのリビングダイニングに生まれ変わりました。
さらに、天井の一部も解体。梁や勾配を見せることで、もともと平坦な印象だった室内がぐっと立体的に。勾配天井から落ちる『ソケットランプ』のやわらかな光がリズムをつくりながら、空間をやさしく照らします。
木を基調としたキッチンは、天井を少し低めに抑えることで、手元に自然と意識が向かい、落ち着いてじっくりと作業できる空間に。一歩ダイニングへ降りると、視界がぱっと広がり、開放感あふれる心地よさを感じられます。
ところどころに設けられた段差は腰かけるのにちょうどよく、お茶を飲んだり、くつろいだり。家族がそれぞれ好きな場所に座り、思い思いに過ごせる小さな居場所が、家の中にいくつも生まれています。
壁面ごとに木・グレー・白とカラーや素材を切り替えつつ、飾りすぎずシンプルにまとめられた室内。経年変化を感じる梁の素材感が、空間に自然な深みを与えています。
平屋の中に、路地裏のような奥行きを感じる景色も生まれています。
モルタルの壁には、真鍮の『マリンデッキライト』を取り付けて。夜になるとシェードの影が浮かび上がります。
既存サッシを活かすため、断熱性能を補う工夫として南側の縁側はあえて残しています。光が差し込み、風が抜ける縁側は、内外をゆるやかにつなぐ緩衝材の役割を果たしながら、季節の気配を感じつつのんびり過ごせる場所に。
家の中を歩くたびに「ここもいいな」と、自分だけのお気に入りの居場所を見つけられる――そんな楽しさにあふれた平屋の住まい。
築47年の古さを味わいとして生かしつつ、立体的な広がりと家族それぞれの居場所が心地よく共存する空間は、毎日がちょっとした発見に満ちています。
写真:山内紀人
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