「新築では納得のいく間取りやデザインに出会えない」と、中古マンションリノベーションを選択した30代のご夫婦。広島市内にある約75㎡の中古マンションを購入し、内装仕上げの素材や色、家具のひとつひとつまでじっくりこだわって選び抜いて、時を経ても色褪せない住まいをつくり上げました。

お施主様ご夫婦が参考にしたのは、欧米のヴィンテージなインテリアデザイン。リビングダイニングのフロアには、オークのパーケットフローリングを採用しました。赤みのあるブラウンのオイル塗装を施し、重厚感のある佇まいに仕上げています。

空間に合わせて選んだというダイニングテーブルと椅子は、ミッドセンチュリー期に生まれたイギリスの家具ブランド「G-PLAN」のもの。ペンダントライトはポール・ヘニングセンの「PH5」で、こちらも同時代のプロダクト。家具を長く使うのが当たり前だった文化と時代の中で生まれた上質な家具が、格調を感じさせるフロアにとてもよく似合っています。

キッチンまわりのフロアは、グレーの磁器タイル。キッチンはシンクとコンロが二手に分かれたⅡ型のレイアウトで、ダイニングに面した腰壁には『クラシックリブパネル』のラウンドをお使いいただきました。

クラシックリブパネル』は、お好みの塗装で仕上げられる無塗装品と塗装品があり、こちらのキッチンで使っているのは塗装品。曲面の陰影が際立つよう、ツヤありの塗装が施されています。コンロ側の壁に貼られた深緑のタイルの光沢感も相まって、華やかさが感じられます。

艶のある深緑と木の組み合わせが鮮やかなキッチンは、ずっと眺めていたくなりそう。そんな視界を邪魔しないよう、キッチン水栓にはほっそりした佇まいが特徴の『ハンドホース水栓』が使われていました。

コンロ側のオープン棚の背面はサンドベージュのクロスで、飾った器や雑貨が引き立つようにしています。森や山を彷彿とさせる素材と色の組み合わせが、スーッと深呼吸したくなるような空気感を醸し出しています。

キッチンからの景色もいいんです。すっきりとした眺めをつくっているポイントは、テレビを壁掛けにして、床の隅を見せていること。壁の上部を走る長い書棚も、水平に広がる視界を強調しています。

リビング側の壁にもサンドベージュのクロスを採用。真っ白よりも落ち着いた雰囲気で、赤茶のフロアや家具とよく馴染んでいます。

ソファは置かず、代わりに設けたのは小上がり。斜めに角を落とした形は奥様のアイデアで、空間に広がりが生まれました。畳は、床や棚板と同じ色でオイル塗装した木で縁で囲み、洋のダイニングと和の小上がりに一体感をつくっています。

小上がりの奥、四角く切り取られたような壁の両サイドには幅の細い棚が造られていて、ルーターなどの「露出させたくないけどリビングに置いておきたいもの」を隠しておくのにぴったり。美観を維持しやすいリビングづくりの参考になるアイデアです。

購入した物件は水回りがリフォーム済みだったので、浴室とトイレの便器は既存をそのまま利用。洗面室は、二人並んで使えるサイズの洗面台をつくれるよう、既存の配置のまま出入り口の位置を変更しました。

床と洗面台の天板は、石目調の仕上げを選んでシックな雰囲気に。硬質な印象を与える素材とバランスを取るように、丸を取り入れたデザインの『壁付けセパレート混合水栓』と洗面器を組み合わせています。

玄関からLDKへ続く廊下も、パーケットフローリングで仕上げられていました。新たに造作した収納と木の壁も濃い茶色でオイル塗装されており、ガラスブロックとのコーディネートが、ヴィンテージ住宅の趣き。

この土間収納はマンション共用通路側の窓に面しており、ガラスブロック越しに中の個室へ光が届きます。ガラスブロックは防音性が高いので、共用部からの物音を軽減できそうですね。

各個室の配置はほぼ変えておらず、玄関横の土間収納は、元々あった個室を縮小して生み出したスペース。スケルトンからのフルリノベーションでなくとも、間取りをちょっと操作すれば、こんなことができるんですね。

家づくりを振り返って、「自分たちの理想を丁寧に言語化していく過程も楽しかった」とお施主様。そうやって、自分たちの理想の暮らしにじっくりと向き合ったからこそ、「心から好きだと思えるもの」を選び抜くことができたのでしょう。

「トラッドスタイル」と呼ばれるファッションスタイルがありますが、この家はまさにそれだと思いました。流行に左右されず、いつの時代にあっても上質さを感じる「長く愛せる空間」での暮らしは、飽きることなくいつまでも心地よさを感じられそうです。

株式会社 SMART ONE DESIGN

株式会社 SMART ONE DESIGN

物件探しからデザイン・設計・施工までワンストップで手掛ける、広島県のリノベーション会社。完全オーダーのフルリノベーションのほか、セレクト型リノベーション、リノベーション済み物件の販売、建て替え相談にも対応しています。

テキスト:サトウ

関連する事例記事

「民藝品×ポストモダン」を軽やかにミックス。愛すべき蒐集品と共に暮らすための住まい
「民藝品×ポストモダン」を軽やかにミックス。愛すべき蒐集品と共に暮らすための住まい
穏やかなシナ材と白で構成された端正な内装に、住まい手の個性が映えるマンションの一室。アートと連動する差し色使いや、生活に溶け込むディスプレイコーナーなど、大切なコレクションを美しく設える内装の工夫を紐解きます。
赤い床と木のキッチン、モルタルのような土間空間。緑と暮らしが映える「背景」をつくるリノベーション
赤い床と木のキッチン、モルタルのような土間空間。緑と暮らしが映える「背景」をつくるリノベーション
観葉植物を育てるのが趣味という施主家族が選んだ住まいは、窓の外に木々の緑が広がるマンション。植物が映える素材を取り入れながら、眺める景色と愛でるグリーン、その両方を楽しめる空間へとリノベーションしました。
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
北欧ヴィンテージのトーンを纏って。愛着ある家具から始まった、好みを五感で味わう家づくり
お施主様の趣味であるサウナから着想を得た洗面室、愛車が映える広々とした玄関土間。長く愛用してきた家具のトーンを内装へ活かしつつ、多様な素材で切り替えることで、場所ごとに異なる居心地を生み出しました。住まう人の「好きな雰囲気」を家全体へ丁寧に浸透させていった家づくりをご紹介します。
内と外を曖昧に繋ぐ土間空間。40㎡のルーフバルコニーを活かす、大らかなアトリエのある住まい
内と外を曖昧に繋ぐ土間空間。40㎡のルーフバルコニーを活かす、大らかなアトリエのある住まい
玄関から広いルーフバルコニーまで視線が気持ちよく抜ける、赤土色の土間空間。間取りを大胆に見直しながら、視線や光、素材の見せ方を丁寧に整えたマンションリノベーション。ツールボックス工事班|TBKが設計施工を担当しました。