ずっしりの重さを軽やかに浮かせる
フランクロイドライトの落水荘のような、空中に大きく張り出したスラブ。壁からコンクリートの踏み板だけが突き出したような階段。重い塊が、片側だけの壁だけで支えられ、空中に軽やかに浮かぶ“キャンチレバー(片持ち梁構造)”は、その重力に逆らうような浮遊感と緊張感ある演出が驚きを与えてくれます。ただ、建築の世界のキャンチは、その裏で緻密に構造計算され成立しているもの。
そんな片持ちの造作を、もっと気軽に取り入れられるようにしたのが『キャンチブラケット』です。
棚板や天板を組み合わせ、壁面を活かした造作は、支える脚や側板をなくせるため、足元まで視線が抜け、空間に広がりが生まれます。それでいて、分厚い洋書や雑誌、重さのあるモノを載せても、ビクともしない耐荷重。この浮遊感と強度の両立は、「キャンチブラケット」だからこそ。
低い位置で使えば、ブラケットの存在をほとんど消しながら、天板だけが浮いているようなフロート感に。逆に、目線高さの棚で使えば、その無骨な輪郭ごと棚の意匠になる。そんな使い分けができる、懐の深いブラケットです。
実直に成立しています
なんといっても特徴的なのが、ブラケットの定番とも言える斜めのブレース材がなくても成立している、ピストルのようなカタチです。
分厚いスチールプレートを用いた一体構造。天板を支える長手のアーム部分を折り曲げることでリブのような役割を持たせ、強度をだしています。力のかかる座面部分は、縦長の6面体。どっしりとした構えで、その負荷を受け止めます。
実際に手に取ると、スチールプレートの厚みと密度が、手のひらにずっしり伝わってきます。
縦方向は低く抑えながらも、耐荷重はブラケット1本あたり75kg。下地がしっかりした壁に使えば、本をぎっしり並べた棚や、奥行きのある作業カウンターとしても、安心して使えます。華奢とは無縁の頼れる存在です。
元々は、カウンター下などで隠れて支える前提でつくられたため、製品としてはチャコールグレーのサビ止め塗装を施しただけ。ただ、そのマットで主張しすぎない質感が、工業製品らしさを引き立ててくれています。
ヨーロッパからの船旅を経て日本にやってくるため、表面にわずかな擦れが見られる場合がありますが、それくらいのラフさ加減がこのブラケットにはしっくりきます。
本からキッチンまでも浮かせるサイズバリエーション
このブラケットのもう一つの特徴が、そのサイズ展開。
D200からD580まで、奥行きを細かく刻んだ全7サイズ。使いたい場所、載せたいモノに合わせて、「あと少し浅くしたい」「ここだけ奥行きを伸ばしたい」、そんな造作の細かな調整に応えてくれます。
特に作業カウンターとして使える奥行き600mm以上に対応するブラケットの選択肢は、実はそこまで多くありません。最大サイズでは、奥行き650mmのキッチンカウンターにも対応できます。
オープンな場所に設置するキッチンや洗面の水回りは、いかにもな箱モノっぽさをなくして、足元すっきり、フロートで軽やかに見せたいシーンがあります。このブラケットを組み合わせれば、こだわりの天板だけが浮いているような、そんな水回り造作を実現してくれます。
浮遊感の、その裏側
自分たちのオフィス改装でも、このブラケットでコーナーづくりをしています。ただ、目線より低い位置で使うと、肝心のブラケットはほとんど見えません。デザインとしてはそれが正解なのですが、商品としては、なかなか写真1枚で魅力を伝えづらいアイテムでもあります。特別に、その裏側も合わせてご紹介します。
窓辺に設けられたカウンターは、見るからに重そうなタイルの塊が4m一直線に浮き立つようなデザイン。「これ、どう支えているの?」と、遊びにきた人たちが高確率で裏側をのぞき込みます。
店舗などでも、フロートのディスプレイを見かけると、ついその裏側の構造をのぞき込みたくなる。建築好きなら、そんな経験が一度はあるはず。
一般に、こうしたブラケットは、見えない前提でつくられていることが多いもの。ですが、これは、うっかりのぞき込まれても悪くありません。むしろ、その偶然の出会いから新たなファンが増えてくれたら、と期待しています。
組み合わせ次第では、棚板と一緒に塗装して一体化させるのもありかと思います。何を浮かせるか。空間をどこまで軽く見せられるか。いろいろな場所で、このブラケットならではの“キャンチな造作”が生まれていくのを楽しみにしています。