コンクリート壁一面に大量の本を収納して、作業デスクも設けたい
増えゆく本や雑誌、分厚いメーカーカタログなどの収納場所をなんとかしたい。これまで、ダイニングテーブルで簡単なPC作業もしていたけれど、いっそデスクスペースもちゃんと整えたい。
そんな思いがあった、工務店Drawer 田中さんがニ拠点オフィスとして利用するワンルーム。「燻蒸フローリング」にコンクリート壁を白塗装したラフな雰囲気のリノベーションしたお部屋は、以前、コラムでもご紹介させてもらいました。
今回は、家具も置かれずに余白のスペースとなっていたコンクリート壁を有効活用することに。床から支える脚を設けず、壁から板だけがすっと突き出たような本棚とデスクカウンターをつくるため、『キャンチブラケット』を採用いただきました。
『キャンチブラケット』は、斜めのブレース材がなく、棚下まで使いやすいすっきりとした形状が特徴。ブラケット1本あたり75kgの耐荷重があるため、本やカタログをしっかり収納したいという今回のニーズにぴったりハマりました。
サイズバリエーションが豊富で、棚板サイズから、奥行き650mmのデスクカウンターサイズまで対応しているので、今回は、D280の棚サイズとD480のカウンターサイズの2サイズで、取り付けを行っていきます。
取り付ける壁は、RC構造の築古マンションの一室で、お隣の住戸との戸境壁にあたる部分。コンクリート躯体に直接白塗装を施した壁。いわゆる躯体壁といわれるもの。石膏(プラスター)ボードに壁紙や塗装で仕上げた壁と違い、画鋲なども簡単にささらない硬い壁です。
石膏ボードの壁の場合、下地を探したり、ボードアンカーを使って棚を設置することができ、こちらの記事でもご紹介していますが、今回は素人には難易度が高そうなコンクリート壁。プロは、どう立ち向かうのでしょうか。
ちなみに、今回のように、硬いコンクリート壁にドリルで穴を開けたりビスを打っていくと、かなりの振動音がします。マンションの管理規約の確認の上、お隣、上下階、斜めに隣接する方には事前に断りを入れておくのがおすすめです。
まずは、位置だし。部屋の中でのバランスを決める
計画するのは、ベッドの縁から窓際の壁まで、約2700mmある壁面。天井高さは、2500mmです。
両サイド、少し余白を残して、壁から板だけが浮いた雰囲気で設置したいとのこと。1860mm幅の板で、奥行きのあるデスクカウンターと、その上部に2段の本棚がくる設定に。
まずは、両サイド均等になるよう余白となる部分の距離を測って、マスキングテープを仮貼り。遠くから、部屋全体のバランスをみてみます。
ちなみに、デスクカウンターは、奥行き515mm。使っている椅子に合わせて、天板高さを決定。その上部に来る本棚は、奥行き320mm。1段目の棚は、座った時に手を伸ばして取り出しやすく、かつ邪魔にならない高さに。2段目の棚との間隔は、A4の書類や雑誌が取り出しやすい高さを狙ってと、上の図のように寸法を落とし込んでいきました。
躯体壁に、下穴をあけていくのですが、ドリルで穴をあけていくと、ポロポロと粉がでるので、あとで掃除がしやすいよう、壁際だけマスカーで養生をします。
田中さん、作業に入る前にすっとキャップを装着。室内なのになぜ?と思ったら、印をつけるためのシャーペンを耳上で固定しやすくするためでした。TBK(ツールボックス工事班)のメンバーもキャップをかぶってる率が高いのですが、ただのおしゃれだと思ってところに、ちゃんと意味があったとは⋯⋯。
ブラケットの取り付け位置を決める
棚づくりで高さ設定の他に、もう一つ決めておく必要があるのが、ブラケットを板に対して、どんな間隔で取り付けるか。強度にも、見た目にも影響してくるポイントです。
今回の「キャンチブラケット」は、600〜900mm間隔でつけることを推奨。棚板とカウンターが、幅1860mmとなるので、1段に4本ずつ設置することに。
「はじっこからは、100mmくらいはあけるのがバランスよさそうやな」残りは、均等に割ってと、計算しながら、マスキングテープの上にブラケットを付ける芯となる場所の印をつけていきます。
作業効率アップのコツは、治具づくりにあり
「キャンチブラケット」は、壁に対して、3箇所をビスで止めていく仕様です。
と、ここで田中さん、届いたブラケットが入っていた段ボールのはじっこを切り出して、何やら型をつくりだしました。
この型紙につけた3箇所の穴に、ぐりぐりと穴を空けておきます。これで、ビス位置をプロットしていくとのこと。
今回は本棚2段とデスクカウンターの計3段分を同じ縦ラインに揃えたいので、レーザーで垂直の基準線を出しておきます。
レーザーを持っていない場合は、長めのタコ糸の先に5円玉をぶらさげて、垂直線をだす方法が、お手ごろにできておすすめです。
そこに合わせて、さきほどの型紙を合わせたら、あとは、ビス位置に3箇所の印をつけるだけ。たしかに、1箇所ずつ重いブラケットを壁に当てて、垂直を確認しながら穴に印をしていくより、圧倒的に速い!
プロの仕事って「段取り勝負」とよく言いますが、こういう風に作業をしやすくするため、位置を誘導したり、工具を固定させるための補助ツール「治具(ジグ)」をささっと手作りして、効率的に進めていくところが、さすがなんですよね。勉強になります!
感心している間に、印付けが完了していました。
固定はコンクリートプラグ、コンクリートビス、どっちにする?
続いては、固定方法。石膏ボード壁の場合は、壁の裏の下地を探してそこへビスを打ち固定しますが、今回はコンクリート壁。“どこへ固定するか”ではなく、“どう固定するか”がポイントになります。
方法は、大きく分けて2つあります。
コンクリートプラグ:樹脂製アンカー(別名:カールプラグ)を壁に埋め込み、そこに木ビスを打つ方法。ビスが強固に固定されます。ただし、下穴を開ける、プラグを埋め込む、ビスを打つと、3ステップ必要。
コンクリートビス:ネジ山が高低2段になって、コンクリートに食い込むビス。下穴を開けて、コンクリートビスを打ち込みます。コンクリートプラグに比べて、プラグを埋め込む1工程分少ないので作業が早い。ただし、締め付ける力が強すぎるとビス頭が飛んでしまうこともあるため、力加減には注意が必要です。
今回は、見えてくるビス頭の意匠にもこだわりたかったので、コンクリートプラグ+ステンレスビスを使って固定していきます。
ちなみに、「キャンチブラケット」は、オプションでステンレスの黒ビスを一緒に購入することもできますが、今回は、棚板やブラケット全体の雰囲気から、田中さんが用意したステンレスビスを合わせることに。
使うステンレスビスはM5×30mmサイズ。そのサイズに合わせた、樹脂製のプラグも準備しました。
壁にプラグを埋め込むための下穴をあけて、埋め込んでいきます。
硬いコンクリートに下穴をあけるには?
相手が木であれば、インパクトドライバーのドリルビットを使って穴あけも可能ですが、コンクリートが相手となると、専用のドリルが必要です。
・振動ドリル: 「細かな振動」で削りながら穴を開ける。
硬度の低いモルタルや煉瓦、タイルなどの穴開けに向いています。
・ハンマードリル: 内部のピストン運動による「強力な打撃」で削りながら穴を開ける。
分厚いコンクリートのはつりなど。
結論からいうと、コンクリートには「振動ドリル」よりパワーの強い「ハンマードリル」がおすすめ。
なんですが、今回は、せっかくなので両方のドリルを使って作業する様子を見せてもらいました。まずは、振動ドリルから。
使うプラグごとに、穴開けに必要なドリル径の記載があるので、その指定の太さのコンクリート用のドリルビットを使います。今回はΦ7mmのビットを用意しました。
印として、穴をあけたい深さ分、ビットの先端にマスキングテープを巻いておきましょう。
田中さん、見慣れない蛇腹状のカバーのようなものをドリルの先端に装着しました。
ホームセンターで見つけた「吸塵アダプター」なるもので、これをつけていると、下穴をあける時に出る粉塵がこの中にたまり、粉が周囲に飛び散らずに済むそうです。
ただし、そのまま壁に押し当てると、ドリルの先端が覆われてしまうので、蛇腹部分をちょこちょこ引き下げて確認しながら、作業を進めていました。
押し込む時は、両手でぐっと力を掛けて、壁に完全に垂直になるように押し込んでいきます。
無事穴があきました。穴の中にも、削れた粉がつまっているので、粉を飛ばしてから、ここにプラグを埋め込んでいきます。
無事、1つ目の穴が完成!これで、ビスを打ち込む土台がやっと出来たというわけです。
ちなみに、このカバーをつけても、多少は床下に粉が落ちていくのですが、先ほどのカバー中には、たんまりと粉が貯まってました。効果抜群です。
途中、硬い部分に阻まれ、振動ドリルのビットが折れる⋯⋯
順調に作業を進めていきましたが、途中、同じコンクリートの壁でもすごく硬いところがあったようで、振動ドリルのビットが折れてしまいました。コンクリートは、砂と砂利を混ぜて固めたもの。石の硬い部分に当たってしまったのかもしれません。
「こらあかんわ⋯⋯」と、王道の「ハンマードリル」が登場。パワーが強いので、その後は、さくっと作業がすすみました。
ブラケット1つに対してビス固定は3箇所。1段に対して、ブラケット4箇所×3段分あるので、合計36穴分の下穴あけを繰り返します。なかなか、大変ですが、根気強くがんばりましょう。
ちなみに、コンクリートビスの場合は?
コンクリートビスを使う場合も、下穴をあけるまでの作業は同じです。下穴の太さは、ビス径の一回り小さいサイズが推奨。今回の場合は、4mmの太さのビスなので、3.5mmのドリルビットで下穴を開けるのがいいでしょう。
下穴をあけたら、ビスを打ち込むだけです。今回のようにビスで固定する数が多い場合は、プラグを埋め込む1工程、少しでも作業手間を減らしたい気持ちも分かります。が、ビス頭の形状も異なるため、見た目をトルか、手間をトルか⋯⋯。
ブラケットを取り付け
さぁ、やっとブラケットの取り付けまでやってきました。ビスをインパクトドライバーで打ち付けて、ブラケットを壁に固定していきます。
ちなみに田中さんは、静音タイプのインパクトドライバーをご愛用。「静音」とその名がつく通り、ビスを打つ際の音が、通常のものより静かで、パワーも強いプロ仕様なもの。店舗の現場や今回のようなマンションなどの共同住宅で作業する時に少しでもうるさい音を減らす配慮で、静音タイプを愛用しているそうです。
ここでまたまた道具にご注目ください!ドライバーの先についているビットですが、通常のシルバーの先に赤いビットが2段階で延長してついてる?長くないですか?これは、何のためのもの???
答えは、「ビット延長アダプター」。ブラケットの根元付近の穴位置にビスを打つ時に、ドライバーの本体がブラケットにぶつからないように、ビットの先端を長くするためのものでした。
普通のビット長さでもやってみてもらったんですが、田中さんが持っている小さめのインパクトドライバーの頭ですら、ブラケットにあたって、ちょっと打ち辛い。ビスが斜めに入ってしまいます。
ビットが長いと、打ちづらそうなイメージがありますが、今回は下穴も開けてあるところに打ち込むだけなので、実際そんなことはありませんでした。
ちなみに、このとき、ビスは最後まで回し切らず、でも固定はされたくらいの状態にしておきます。ブラケットの水平位置などを微調整するためです。
棚板を載せて固定
いよいよ、棚板を載せていきます。
最初に決めた、端のブラケットから棚板の端までの出幅を確認した上で、棚板を固定するビスも打ち込んでいきます。
ちなみに、田中さんは、奥行き320mmの棚板に対して、D280のブラケットを選択しました。ブラケットは、棚板の2/3以上の奥行きのものを使うというルールからすると、D240でも問題ありません。ただ、今回はラワンの棚板の木口にRを付けたチークをまいて、フロートした棚板そのものの存在感を強調させたので、ブラケットがすっと一体的に馴染む方がいいかなと、長い方を選ばれてました。
デスクカウンター用の長いブラケットも設置
最後にD480のカウンター用のブラケットを装着。田中さんが持っているインパクトのビスの先端が、先ほどよりさらに長くなっているのにお気付きでしょうか。
こんなに長いと絶対普通よりやりづらそう!と勝手に疑って、スタッフ土居も1箇所試しにやらせてもらいました。結果、全くそんなことありませんでした⋯⋯。疑ってごめんなさい!下穴もありますし、普通に打ちやすかったです。
カウンター用のブラケットを全て取り付けたら、天板を置いて、下からブラケットと天板をビスで固定していきます。
最後に壁のビスを本締めして完成です。
ついに完成!
撮影用に途中わざと手を止めていただくことがありつつ、2時間半で完成!
重い洋書や雑誌たちがたくさん載せてあっても棚はへっちゃら。安定感がありました。斜めのブレース材がないので、ブラケット下にも本が入るのは、うれしいところですね。
田中さん、取材させていただき、ありがとうございました!
この人につくってもらいました
株式会社Drawer | ドロワ
個人住宅、賃貸住宅、賃貸オフィスや店舗のインテリアデザイン及び内装工事を行う設計施工会社。
空き家を借り上げてリノベーションを行い、賃貸運用するサブリース事業も行っています。スチールプロダクトの企画・制作・販売も手掛けています。