vol.1では、キッチンはパーツの組み合わせでできていること、自分自身が料理や家事をする中で、何を重視したいかによってこだわりどころを考える大切さをお伝えしました。vol.2は、水とのつき合い方を考える、[水]編です。色々な角度から、深堀していきます。
事例で見る | 自分にあったキッチンの水まわりの在り方
キッチンの中でも、水場の在り方は、料理の下準備に始まり、手洗いか食洗機か、片づけの水切りカゴをどこに置くか、料理以外の時間のお茶だしの水は浄水器?ペットボトル?グリーンへの水やりもキッチンで?など、使われ方が多岐に渡り、そのスタイルも人それぞれ。自分や一緒に使う家族にとって、何を重視するのかを突き詰めて出来た3つの事例を通して、何を重視したいのかを考えるきっかけにしてみてください。
case1. 鉤型のダイニングテーブル兼シンク。片づけからお茶出しまで、家族もゲストも手伝いやすく
建坪9坪弱。幅約4mの細長い敷地に建つYさん夫婦の戸建て。息子との3人暮らし。このフロアに入って最初に迎えてくれるのが、白いキッチン兼ダイニング。
ダイニングテーブルとシンクが一体になった、座る人とシンクに立つ人の距離が近いつくりです。3人で使うのに必要なダイニングテーブルの幅を確保して、そのままシンク側に延長すると通路幅が狭くなるので、シンク前は鉤型にしたのだとか。「回遊しやすく、表と裏、ホストとゲストの主従関係が生まれず、家族もゲストも自然に手伝ってくれます」とYさんもニコリ。
白い人工大理石で重量のある天板を支える脚は、サイズオーダーした工業用シェルフ。食洗機は露出置き。床は掃除もしやすさも兼ねたカラフルなモザイクタイル。遊び心とコストのメリハリの利いたキッチンです
ただ、家の竣工から10年が経ち、水事情にも変化が。当初愛用していた箱形のウォーターサーバーはメーカー廃盤に。最初から計画されていた、コンロ側の下部スペースに、買い溜めたペットボトルを置いています。防災用ストックを兼ね、回転させ利用中。息子は、中学でサッカーを始め、大容量水筒を使うので消費が早く、ペットボトルのゴミも大量発生で、そこはストレスなのだとか。ポット型浄水器も併用して、料理に使う水は、そちらを利用と、工夫を重ねています。
使われているアイテム
①天板
人工大理石(ホワイト)
②水栓
2ホール引出式キッチンシャワー混合水栓 220 / 34822000(ハンスグローエ)
③シンク
SUSオーバーシンク(IKEA)
④食洗機
F45B15PMS(ハーマン)
⑤脚と収納部
業務用シェルフ
棚は幅と奥行きをサイズオーダー。
テーブルに埋め込まれたカトラリー入れとカゴ。天板上をすっきりさせるため、天板に穴をあけ、カトラリーを入れるグラスと、小さなカゴを落とし込み。カゴの中身は、フルーツ、お菓子、野菜などが入るものが入れ替わります。掃除のたびに持ち上げてテーブルを拭く手間も、うっかり倒したりもなくお気に入りなのだとか。
case2:古家具の木天板からわき出る泉!?気分によって、パーティーシンクと作業用シンクを使い分け
蒐集してきた様々なアイテムが点在する広いリビングの中央に鎮座するのが、幅3mほどの木製のキッチンカウンター。実はこれ、古道具屋で購入した、呉服屋で使われていたという作業テーブルに、パーティーシンクとIHをはめ込んだもの。
「座り込む場所の近くに水がわき出るとワクワクしていいな。コーヒーのお湯も湧かせるといいな」と、思い切って大工さんにくりぬいてもらい、小さくても見た目の美しい水栓やシンク、IH設備をはめこみました。
食器や調理器具を洗うのは、後ろにある壁沿いの海外製の大型食洗機と実験用シンクを利用。
性格上、作業台も2つの水場も使い分けのルールは明確に決めておらず、その時の気分と近くにあって便利な方を使うというスタイル。常識にとらわれず、こんなに自由でいいんだと感じられるキッチンです。
パーティーシンクは、小さく水が張りやすいので、野菜を浸したり、氷を入れてビールを冷やしたりとデイリーに愛用。使い終わったあとは栓を抜いて水が勝手に流れていくので、ワインクーラーより楽なのだとか。
飲用水はペットボトルを買い溜め。料理の時は、水道水を使いつつも、お米を鍋で炊く時だけはペットボトルの水を利用。
食洗機は、調理器具も丸ごと入る幅600サイズですが、デリケートな器や銅鍋は手洗いしています。
使われているアイテム
①天板
手前:呉服屋の作業テーブル(古道具屋にて購入)
奥:御影石
②水栓
手前:VOLAキッチン水栓 台付混合栓
奥:型番不明(GROHE)
③シンク
手前:KDQS1113Y パーティーシンク(KINDRED)
奥:実験用シンク(TOTO)廃盤
④食洗機
W600、フロントオープン(AEG)
case3:水やりも洗濯も、明るい窓辺キッチンに水を使う家事ごとを集約させて
郊外の築古戸建てをリノベーションして暮らすSさん。掃き出し窓を床から900mm弱の高さまでタイルの壁を張り上げ塞ぎ、壁付けのキッチンを設置しました。
「壁に向かって集中して作業をするのが好き。子供ができて、対面キッチンにして様子を見たいという気持ちもちょっと分かったけれど、やはり私は……」と、壁付けキッチンが落ち着くそう。
狭い洗面兼脱衣所から、ドラム式の洗濯機とガス乾燥機の乾太くんもキッチン側に移動。忙しい朝、植物に水をやり、洗濯機を回しつつ、朝食の用意をしてと、水仕事が一気に行えるキッチンです。
ウォーターサーバーは見た目が気に入るものがなく、置き場もない。浄水器は導入したいが、切り替えもタイプも面倒くさいと思っていたところで知ったのが「水栓が選べる浄水器」の存在。これなら、好きな水栓に付けられる。常に浄水が出るけれど、洗い物は食洗機で行うし、と割り切りました。
ステンレス鍋なども一緒に平日は夜に一度、食洗機で洗っています。骨董市で買った器などは、手洗いで。
水栓は、ホースを毎回引きだすのは面倒なので、パッと引きだせる業務用スタイルの水栓に。植物への水やりもしやすくお気に入りなのだとか。
使われているアイテム
①水栓・浄水器
スプリングホース水栓 クローム
水栓が選べる浄水器 アンダーシンクタイプ
②シンク
デッキ付き板金ステンレス オーバーシンク(TOYOURA)
③天板
フリーカット無垢材 ブラックチェリー
無塗装品にDIYで亜麻仁油塗装。メンテナンスに蜜蝋ワックス。
④食洗機
ビルトイン食洗機 フロントオープン W450 前面操作タイプ+ステンレス面材・巾木セット(BOSCH)
木天板には、セラウッド塗装がおすすめ
木天板に憧れるけれど、長期的な視点でみると、水回りに木を使うのは心配と、採用を躊躇する方におすすめしたいクリア塗装が、「セラウッド塗装」。ウレタンクリア塗装よりも強く、耐水性、耐汚性、耐熱性があります。『フリーカット無垢材』のオプションで選択可能です。
飲用水は何使う?浄水の考え方で、水栓選びと収納計画に影響あり
当たり前に水道水が飲める日本。こだわり方は人それぞれですが、キッチンの飲用水用に浄水器を導入するのか、ウォーターサーバーの設置、ペットボトルを購入するなど、いくつかの選択肢がありますよね。どのタイプを選択するかによって、キッチンの見た目や収納計画にも影響してきます。
専用、切り替え、好きな水栓を浄水に?ビルトイン浄水器のタイプ3種類
キッチン水栓用の浄水器はいくつか種類があり、使い勝手や初期コスト、ランニングコストが変わってきます。浄水器の導入によって、カルキが除去されたたっぷりのお水で生野菜が洗えたり、流れたての水は気泡を含んでいるため、紅茶が美味しくいれられるのだとか。ちなみにカルキは汲んだ後時間が経てば少なくなりますし、お住まいの場所によって状況が異なります。それぞれの特徴を抑えた上で、自分にあった浄水のタイプを選びましょう。
①通常の水栓の横に「浄水器専用単水栓」を設置。
2本を使い分け。水道水は洗い物、浄水用水栓は飲料や料理用にと、明確に分けて使うことができます。
水栓2本分の導入コストがかかります。
②水道水と浄水を「1本で切り替える混合栓」
切り替えることで、見た目は1本ですっきり。
浄水切替え時に水道水と入れ替わるのを数秒待つ必要あります。
③通常の水栓に「浄水器」を接続し、浄水しか出ない仕様に。
通常の混合水栓に浄水器を直接経由させる方法です。常に浄水が出るため、洗い物にも浄水を使うことになります。洗い物は食洗機をベースとされる方、こだわりたい水栓を採用したい方におすすめです。
- カートリッジ交換のメンテナンス費用がかかります。
- 繋ぐのは「水」になります。お湯は浄水されません。
- 浄水器比較表一覧はこちら
①浄水器付き専用水栓
②ビルトイン型 浄水切替え水栓
③ビルトイン型 水栓が選べる浄水器
各自セルフで。誰が使うかにより配置と動線に配慮を「ウォーターサーバー」
冷たいお水やお湯をさっと出せるのが魅力のウォーターサーバー。キッチンに立つ人と動線がかぶらず利用できる位置に置くのがおすすめ。事前にメーカーにアタリをつけ、設置場所に電源の用意を。家族や来客が多いお家では、カップやお茶のティーパックなども本体の近くに置いて、ドリンクバーのように提供しやすくしているお家も。
ストック置き場のこともお忘れなく
ウォーターサーバー会社との契約内容によりますが、ストックの水は2コセットで届くことが多く、常に1コ分のストック&空になった回収待ちの容器の置き場も、セットで考えておく必要があります。
防災ストック兼用も。「ペットボトル」は、置き場とごみ捨て用のスペース確保を
気軽に取り入れやすいペットボトルの買い置き。防災対策を兼ね、ストックを定期的に入れ替えて利用してるお家もあるのではないでしょうか。箱で大量購入する場合、かなりの重量になるので、収納置き場は、耐荷重のある棚に載せる配慮を。
また当然ながら、ペットボトルのゴミが都度発生するので、大きめの専用ダスクボックスのスペースを予め考慮しましょう。ポット型の浄水器も併用するなど、使用頻度、用途によって工夫が必要です。
ストックの水置き場におすすめのアイテムたち
洗い方で?見た目で?選ぶ。自分に適したスタイル別の水栓とシンク
「水栓」は、キッチン本体、シンクのデザインが決まったら、バランスを合わせて最後に選ぶというイメージがあると思いますが、天板に付けるのか、壁付けなのか、見た目のデザイン以外にも、操作性、清掃性がそれぞれ異なります。自分には、どんな組み合わせのスタイルがあっていそうか、各事例の使い手の声を紹介します。
さっと使えるホース出しっぱなしの厨房スタイル水栓。木天板にSUSシンクをかぶせて濡れゾーンを棲み分ける
野菜を洗ったり、植木鉢に水をやったり。都度ホースをひっぱりださず、サッと作業できるのがいいと選んだ厨房スタイルの『スプリングホース水栓』。業務用は、住宅スケールには背が高過ぎるのですが、この家で使っているのは家庭用のリサイズされた大き過ぎずのサイズ感。ステンレスのデッキ付きのシンクは、水切り置き場があって木天板を濡らさず安心です。
にぎって伸ばす、プッシュで出すを片手で。アイランドのSUS一体シンクをぐるっと360度利用
電気センサーではなく、水栓上部のプッシュボタンを押して水のオン・オフをコントロールできる水栓。子供が小さいうちは、食事中も立ち上がって水を出すことも多いので、シンクだけの対面カウンターに360度どこからでも手が届き、ホースも掴んでのばして手元ボタンでプッシュするだけの水栓が活躍。手の延長のように水を操れます。
洗うと飲むを切り分ける、切替え水栓とWシンクを用途に応じて使い分け
1本ですっきりした見た目を保ちつつ、通常水と浄水の切替えができる水栓。洗い物は通常水、飲用に使う時は切り替えて浄水に。クォーツのWシンクとセット使いです。水栓の首を振ったり、ホースを引き出して左右に使い分け可能。大きいシンクは洗い物専用にして、小さいシンクはグラス洗いや、時に水を溜めて飲み物を冷やすなんて使い方が可能に。パーティー時にも活躍してくれます。
天板とシンクが一体型でない場合、シンクを天板に上からかぶせる「オーバーシンク」、天板下に設置する「アンダーシンク」2つの方法があります。
オーバーシンクは現場で上から落とし込むので、配送搬入や施工性がいいのが特徴。アンダーシンクは、すっきりした見た目となりますが、シンクとの間に汚れがたまらないよう、チリ(シンク縁の天板の出っ張り)の設定などにご注意を。
色を揃えて統一感アップ。ブラックコーデの水栓とシンク
ブラックのリノリウム天板、クォーツシンクと調和するブラックの水栓。ディスペンサーも含め、マットな質感と色を統一しました。リビングと距離の近いオープンなキッチン空間の中では、設備っぽさを感じさせない、使っていない時の静かな佇まいもポイントです。
ディスペンサー導入で洗剤ボトルは見せずにすっきり
オープンな対面キッチンで洗剤の置き場にお困りの方には、キッチンシンクや天板に設置する、埋め込み型のソープディスペンサーがおすすめ。シンプルなフォルムでキッチン空間がすっきりします。
水栓の雰囲気に合わせて、ディスペンサーのカラー選択も可能です。
天板回りは常にすっきり、壁付の水栓と天板&シンクで浮遊感を
シンクの上に浮遊するアートピースのような壁付水栓。黒いタイルがその存在を引き立てています。壁付水栓は、使うたびに水栓根元に溜まった水を拭くのが面倒という方におすすめ。壁をふかして配管スペースを設ける必要があるので、キッチンの天板自体の奥行きは浅くできます。そのふかした壁を10cm程度の奥行きの浅い棚として、スパイスなどの置き場にするアイデアも。
壁付水栓たち
壁付けのキッチン天板
国産?海外製?食洗機選びのポイントは、お皿だけでなく調理器具も洗いたいか
文化の違いが背景にある、海外製と国産の食洗機の違い
水資源が豊富な日本に比べ、節水が求められる欧米では、手洗いより節水できる食洗機を使い、1日分をまとめて洗う家庭が一般的です。食洗機は手洗いでは難しい高温のお湯と、少ない洗剤ですっきり食器を洗ってくれ、何より家事の軽減にもなるため、日本でも検討される方が増えています。
国内・海外ともに幅が45cmか60cmのどちらかのサイズとなりますが、海外製は容量が大きく、フライパンや鍋などの調理器具まで一緒に洗えるのが魅力です。国産は、容量が小さめのものが多いので、フライパンや鍋もまとめて洗うのは難しいですが、日本の場合は毎食後洗う文化であり、土鍋や木製の食器など食洗機で洗えないものも多いため、都度基本的な食器が洗えれば良い方におすすめ。価格が海外製より安価なものが多いのも魅了です。
食器乾燥のしくみにも違いがあり、海外製は高温洗浄後の予熱による自然乾燥が主流に対し、日本製はヒーターでしっかりと乾かす機能が付いています。
大きいサイズを選んでまとめて洗いを取るか、手洗いのサポートと捉えるか、お持ちの食器が食洗機対応かも考慮して、お値段と効率のバランスで考えましょう。
海外の食洗機は200V、国産の食洗機は100Vのコンセント設置が主流
国産と海外製では洗える容量や扉の開き方が異なりますが、事前の設備工事でも必要な設備工事の内容が異なります。
海外製の食洗機を使う場合は、電気工事で200Vのコンセント(ブレーカーへの専用回路)を用意する必要があります。
また、給水の接続も、海外製は「水」、日本製は「お湯」からという違いがあります。入れ替え工事でもそのまま既存の設備が使えず、設備工事から必要になるケースもありますので、事前に確認が必要です。
面材を揃えるか、露出ではめるもアリ!? 食洗機の納め方
食洗機の扉部分の面材と巾木は、キッチン本体とのバランスを考えて別途手配する必要があります。扉付きのキッチンのオプションとして食洗機が選べる場合は、同じ面材での納品が可能です。
露出で納める場合は、側面の見え方も意識して
キッチン下にキャビネットと並列して導入されることが一般的な食洗機ですが、単体で露出で設置することも可能です。その場合、側面は仕上げられてないので、あえてそのまま見せるか、側板を立てるのか、設計さんに相談を。
(写真提供:アトリエイハウズ)
飲用水の考え方、浄水器導入も含めた水栓選び、シンク、食洗機と、考えることが多岐に渡るキッチンにおける「水」との付き合い方。まずは、考えるべきポイントを頭に入れて、自分はどこにこだわるかを考えてみてください。
次回、vol.3は、コンロ選びやグリルの有り無し、オーブンなどを深堀りする火元選び編です。