今回紹介するのは、卒業制作の一貫で実家のお母様の部屋を改装されたお客様。

大学卒業後、専門学校に進学して学んだ建築という分野で、お世話になった両親に感謝の気持ちを伝えたかった。というのと、進学後の進路として内装大工を志していたことから、将来の仕事にも通ずる家づくりを卒業制作のテーマにしたそうです。

改装の目的は、今まで寝るためだけにしか使えていなかった寝室を、お母様の趣味である、「刺繍や読書を楽しめるようにする」というもの。

意識したことは、居心地の良い空間にすることです。

「真っ白でまっさらな空間よりも、緩急やリズムを感じる空間に居心地の良さを感じる」ということで、段差や凹凸をつけたり、明るいところと暗いところの明度差をつけたりして、ひとつの空間の中にリズムや緩急を生み出すことを意識しました。

ベッドに対して、部屋の壁に沿ってL字のへッドボードを製作。

L字にしたのは、部屋の中でベットスペースという場所を確立させたかったのと、不便だったコンセントの位置を使いやすい場所に持ってきたかったから。

ウッドウォールパネル』ニレ板目のクリア塗装をヘッドボードの仕上げ素材として採用していただきました。

木という素材を選択したのは、エリアを区切るということを視覚的により強調させたいという考えがあったから。

木の温もりが近くにあると、リラックスできそうですね。

実は、このヘッドボードを作る大きな決め手になったのは、toolboxサイト内にあるhow to makeというDIY記事の「寝室にヘッドボードをつくってみた」を読んだことなんだとか!

記事を読んだことで、今まで圧迫感を感じたり生活感が出てしまいがちだと思っていたベッドを、あえて主役にしてみようと考えたそうです。

私たちが発信した記事をきっかけに今までなかった新たな考えを持ってくださったこと、とても嬉しく思いました。

掃き出し窓ではなく、跨いでベランダへ出ないといけなかった窓には一段ステップを設置。洗濯物を干す時に跨ぎやすい様にしました。

注目すべきは、その仕上げ。『土間タイル』のライトグレーと『水彩タイル』ボーダーの3色を、デザイン性をもたせて貼り付けているのです。

ここに土間タイルを採用したのは、暮らしを意識してのこと。

この窓が南向きの窓前ということもあり、フローリングが日焼けしないようにしたかったんだそうです。また、ベランダに干す前の濡れた洗濯物を置けるようにしたかったことと、植物を置いたり水やりを気兼ねなくできるようにしたかったことも挙げられます。

部分的に素材を変えることで、見た目だけでなく機能面もあげて、より過ごしやすくなっています。

大きなグレーのタイルをベースに、ポイントとしてカラーの水彩タイルが入ったことで、つくり手の遊び心が垣間見える気がして楽しいなと。ひとめ見た時から惚れ惚れしたアイデアでした。

フローリングは『スクールパーケット』。無塗装で販売しているものなので、リボスのビボスというオイルワックスで仕上げました。

巾木には、フローリングの端材を活用。

余ったフローリングを20mm幅にカットし、面取りして、再利用したそうです。

フローリングはケース販売だったりして、どうしても使いたい分ぴったりの素材を購入するのは難しいもの。いい活用方法だなと思いました。

コンセントも新たに設置し機能性を向上。この高さにあると充電しているときにストレスもなさそうです。

それだけでなく、ベット横に置いたサイドチェストも材料を再利用したものです。

以前使用していた机を解体して、バラバラになった板材の塗装を剥がして再度組み立て直して制作。追加で用意したのは、スライドレールと取手だけです。

フローリングの巾木も収納も「材料を無駄にしたくない」という思いから活用されたもの。使えるものは工夫して使い倒す、とても素敵な考えだなと思いました。

素材を選択するのと同じくらい、もしくはそれ以上に大切しているというのが、照明。

「光が均一な空間よりも、光の明度差がある空間が落ち着く」ということから、照明計画を行いました。

ベッドに寝た時に直接光が当たらないように。デスクなどの作業する場所や動線となる場所は明るく照らすようにして、部屋中で光の緩急をつけたそうです。

設計から自身で時間をかけて丁寧につくりあげていった空間。家づくりしてみた感想を聞いてみると……

「外注では要望できないディテールを設計、製作出来たのが良かったです。言葉で表現するのは難しい、こうして欲しいやああして欲しいをイメージのまま実践できるのが自分で作ることの長所だと再認識できました」とのこと。

空間を拝見させてもらったり、お話を聞いたことで、私自身も更に高まった家づくり欲。

自分でやるからこそ実現できることや面白さを楽しみながら、これからも家づくりと向き合っていきたいなと改めて思いました。

お客さまの家づくりの模様はこちらからもご覧いただけます。

担当:三上

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