現しにした梁と小幅板張がアクセントとなった、奥行きを感じさせる天井。木の温かみと構造の力強さが安心感を与えます。

「厨子二階(つしにかい)」とは、天井の低い二階をもつ建物の様式のことを言い、「中二階」とも呼ばれ、江戸〜明治後期にかけて建てられた古い様式で、当時本格的な二階建ては町人が武士を見下ろすとされ、禁じられたことから普及したものなのだそう。

今回は、そんな古い様式を残した住宅の個性や年月を経て生まれた味わい深さをできる限り活かしながら、必要な箇所に手を入れ、現代の暮らしに合うようリノベーションした事例をご紹介していきます。

キッチンに採用いただいたのは、『木製システムキッチン』。ラワンの面材が、建物の持つレトロな雰囲気に馴染んでいます。

室内窓を通して玄関土間とつながったキッチン。窓越しに、キッチンに立つ奥様と帰宅する家族との「おかえり」「ただいま」の声が行き交う様子が目に浮かびます。

キッチンの背面には、家電や食器などを収納するためのカウンターが設けられています。家事の隙間で作業をするなど、ワークスペースとしても活用できそう。

空間に広がりを持たせるために、階段はスチールフレームを採用。階段下は収納スペースとして有効活用しています。床の間のような趣を感じる設え。

寝室横に設けられた1畳ほどの畳スペース。文豪の書斎といった赴深さを感じます。

2階は天井が低いため、勾配天井で高さを確保しています。厨子二階の建物の特徴とも言える、虫籠窓(むしこまど)がまた古き良き時代の面影を感じさせます。

※虫籠窓:かたちが虫かごに似ているので名づけられたといわれています。

少しでも快適に暮らせるようにという昔の人の工夫が詰まった建物が、今の暮らしに受け継がれていく。感慨深さを感じる素敵な事例です。

Bee design factory 一級建築士事務所

京都を拠点に活動している一級建築士事務所です。居心地のいい住まいをご提案します。住宅の新築・リノベーション、店舗・事務所などの設計・工事監理業務はご相談ください。

テキスト:八

関連する事例記事

個室は必要な時につくる。自由に間取りを変えられる住まい
個室は必要な時につくる。自由に間取りを変えられる住まい
家づくりにおいて切っても切り離せない、ライフスタイルの変化。同居人数が増えたり減ったり、個室が欲しくなったり、いらなくなったり。人生が進む限り、暮らしの在り方は変わり続けます。 今回は、お子さんの成長を見越した家づくりをフィーチャー。
お手伝いさん5人が共に暮らす。昭和の趣も残しつつ、現代のスタイルと融合した戸建てリノベ
お手伝いさん5人が共に暮らす。昭和の趣も残しつつ、現代のスタイルと融合した戸建てリノベ
東京都心の閑静な住宅街に現れた、一際目を惹く築50年の住宅。昭和のどこか懐かしい雰囲気を残しつつ、現代の暮らしにあうようにリノベーションした事例を紹介します。
ノスタルジック・ニュー・キッチン
ノスタルジック・ニュー・キッチン
築古木造らしい趣がどっしりと残った空間で、一際目を引く四角い箱。実はこれ、シンクやコンロが埋め込まれたキッチンなんです。新しさとノスタルジーが良い塩梅で共存する空間に痺れました。
飲食店・SHOP・オフィス・LAB。4つの機能をもった街の食堂
飲食店・SHOP・オフィス・LAB。4つの機能をもった街の食堂
東京・学芸大学に店舗を構え、国内の旬な食材を使った料理とイタリアのナチュラルワインを提供する繁盛店「リ・カーリカ」さん。その4店舗目としてオープンしたお店は、飲食店・SHOP・オフィス・ラボという4つの役割を果たす、いわば情報発信基地のような場所。様々な要素が混ざりあったお店の様子を早速ご紹介していきます。