写真:淺川敏

ご夫婦とお子様2人の4人家族のお住まい。
奥様のご実家が、徒歩圏とすぐ近くにあることから、ご実家との行き来を考えた生活、ゆくゆくは子供が大きくなり夫婦2人の拠点になる生活、そんな生活を意識しながら、必要なお部屋と開放的な居心地を考えられたお家です。

まず、設計されるにあたって意識されたのは、2面を使える角地という立地を効果的に使おうと、「屋根を使って広がりを感じるような構成」を考えたそう。角の部分に柱を入れた方が構造的には持たせやすいが、窓を象徴的に見せるために、片持ちでいけるように工夫もされています。

写真:淺川敏

こちらが天井の迫力とその開放感を楽しめる2階部分。
家族で緩やかに時間を共有していたいリビングダイニングと子供部屋を、この空間に凝縮しています。

ダイナミックな印象を与える、現し仕上げの高い天井。角地に向かって整然と並ぶ木格子。建築的な美しさに圧倒される空間です。この天井のダイナミックな印象を守るために、間に柱を落とさぬように構造的に工夫したのだそう。天井の格子のピッチはダクトレールの幅に合わせて設けられ、ダクトレールの存在感が格子の合間にうまく潜められています。

ここまで綺麗に揃えるのはなかなか大変で手間がかかる作業なはず。手がけた職人の技術の高さを感じます。

写真:淺川敏

子供達の「居場所」をつくるための仕掛けとして、LDKの一角は一段下げて足触りのいいウール素材のカーペット仕上げに。床を低くすることでやんわりと仕切りつつ、勾配屋根の一番低い場所に位置していることもあり、落ち着いた空間になっています。

キッチン横には木製キッチンカウンターを特注仕様で奥行きを深くして設置。木製システムキッチンと揃えています。(写真:淺川敏)

空間に合うキッチンを探すのって意外と難しいですよね。

造作にするとコストがかかってしまう中で、床や天井、周りの木とも馴染むラワンの面材で作られた木製システムキッチンがちょうどこの空間に相性が良かったとのこと。キッチンと同じラワン材で作った造作の開き戸収納が横に並び、シンプルな形状だからこそ、家具のように空間に納まって見えます。

写真:淺川敏

2階から見下ろすと目に付く赤と青のアクセントカラーのスペース。

写真:淺川敏

実はここ、第2のリビングなんだそう。親から離れて遊べる、階層を分けて設けられた子供のためのリビングです。

発色のあるカラーのカーペットでついつい座りたくなる、階段下のちょっとした暗いスペースだったり、丸で切り込まれた段差だったり、子供の冒険心がくすぐられる要素が詰まっています。

写真:淺川敏

100平米までは建てられるはずだったけど、あえて80平米までにして敷地に余裕を残したお家。
その余白分、道路面から少し下げたことで前庭のスペースが生まれ、東側のお家も見えるゆとりのある風景にもなりました。

必要な大きさを確保しながら、その立地と空間の使い方で心地よい開放感を得た、そんな素敵な事例でした。

有限会社ナスカ一級建築士事務所

1994年に古谷誠章と八木佐千子が共同でNASCAを設立。以来、住宅をはじめ集合住宅、「アンパンマンミュージアム」「茅野市民館」などの公共建築の設計、街づくりへの提言など、多岐にわたってその手腕を発揮しています。住宅については「住まいはその一つひとつが、まったく新しい別の建築だと考えています。住み手や訪ねた人がそこに居ると幸せだと感じられるような空間が作りたい。」と願いながら設計にあたっています。

テキスト:小尾

関連する事例記事

思い出残しのワンルーム
思い出残しのワンルーム
ツールボックス工事班が工事を担当し、東京R不動産と共同で企画した賃貸リフォーム事例です。
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
古い団地に多い「壁式構造」。間取りを変えられない中、暮らしに必要なものを徹底的に見直し、生活のあり方を再編成して生まれたのは、ギャラリーのような住まいでした。
あわいをたゆたう家
あわいをたゆたう家
必要な機能を配置したら、間を土間と路地で繋ぐ。その路地が行き止まりなく外まで貫通していく家。家の中と外の境界を曖昧にするような戸建てリノベーション事例です。
実家と庭と、あたらしい住まい
実家と庭と、あたらしい住まい
今回ご紹介するのは、ご夫婦と子供2人の4人家族のお住まいです。 子供の成長を機に賃貸マンションから一軒家を検討する中、ご主人のお父様の提案で、実家の広い庭を分割して新たに家を建てることを決められたそう。既存の庭をなるべく残すため新築はコンパクトにしつつ、豊かな暮らしをつくる工夫が詰まった住まいをご紹介します。