今回ご紹介するのは、4人家族+猫1匹が暮らす、60㎡のマンションリノベーションの事例です。
限られた面積の中に、遊ぶ、学ぶ、働く、休む。いくつもの時間が、自然と共存しています。
その理由は、部屋を細かく「分ける」のではなく、ひとつの場所にいくつもの役割を「重ねる」という設計の考え方にありました。
まずはリビングダイニングから。
キッチンとダイニングのあいだにあるのは、造作のカウンター。仕切るというより、そっと境界線を引くような存在です。
天板はやわらかな質感の左官仕上げ。角を落としたフォルムが、視線と動きをゆるやかにつなぎ、空間にやさしい連続性を生み出しています。
キッチンの天井は、施主たっての希望で天然オークの板張りに。ふと見上げたときの木の表情が、日々の景色にあたたかみを添えてくれます。
壁一面の造作家具は、ワークスペースであり、本棚であり、キャットウォークでもある。ひとつの家具が、いくつもの役割を担っています。
祖父から受け継いだスピーカーや、窓辺には猫ちゃんの特等席など、家族の「好き」がさりげなく織り込まれているのもポイント。
集中して作業する時のために、ほんの少しこもれる場所もほしい。
そんな思いから、アーチ壁の奥に小さなデスクスペースを用意しました。半分隠れるようなこの場所が、不思議と集中力を高めてくれます。
廊下はつくらず、動線の途中に居場所を差し込む。そうやって限られた面積を、余すことなく有効活用しています。
この家のいちばんの主役ともいえるのが、小上がりと二段ベッド、収納、ヌックがひとつになった造作スペース。
まるで遊具のような、見ているだけで楽しくなる空間です。
畳の小上がりは、日中はリビングとしてくつろぐ場に、夜は寝室に。建具を開け閉めするだけで、空間の表情がくるりと切り替わります。
アーチ壁の中には、隠れたヌックスペースが。
WIC側へ行き来できるようになっていて、子どもたちが家中をぐるぐる駆け回る様子が目に浮かびます。
もちろん、猫さまの居場所も忘れずに。
元々の洗面脱衣所は、収納を確保するには少し手狭な間取り。
そこで洗面台を思い切って脱衣室の外へ。玄関脇に設けたことで、帰宅してすぐに手を洗える便利な動線が生まれました。
空いたスペースは、ランドリールームとして再構成。
『アイアンハンガーパイプ』を設け、洗って、干して、しまうまでがひと続きで完結。家事が流れるように進む、気持ちのいい場所になりました。
用途を分けるのではなく、重ねることで、同じ面積の中に、いくつもの時間が同時に流れはじめる。
その工夫が、60㎡という面積を忘れてしまうほど、のびやかで豊かな暮らしを生み出していました。
小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
施主のライフスタイルと場所の個性を編むように、夫婦で設計している一級建築士事務所です。
東京都北区と静岡県浜松市を拠点に、そこにある、モノ、コト、バ、シゼンをつなぎなおし、新たな魅力を発見する、暮らしの場と・働く場の設計をしています。
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