東急東横線の学芸大学駅から歩いて12分。中央中通り商店街の角を曲がった小道にある小さなカヌレ専門店。

店名の「Dans la Poche」はフランス語で「ポケットの中」という意味だそうで、カヌレを日常の中でもっと気軽に楽しめる存在にしたいという、店主内藤さんの想いが込められています。

メニューはプレーンやスパイス、チョコなどの定番4種の他、季節ごとの限定フレーバーも!

持ち帰りの際には、コロンと愛らしい三角包みで渡してもらえます。

珍しいこの包みは、パケモンテと呼ばれるフランスの伝統的な包み方で、内藤さんが大学時代、初めてフランスを訪れた際に、街で見かけて以来ずっと記憶に残っていたものだそう。

「多分、今フランスでも珍しいものになってるかもしれないんですけど、ケーキを買ったら箱に入れずにこの包みで渡してもらうのが当時は当たり前。自分もお店をやるってなった時にはこれにしようと思って。

でも、包み方なんて分からないから、YouTubeで調べて繰り返し練習して。(笑)」

匠の技のルーツが、YouTubeからだったとは!注文して、この小窓から包み上がるのを見るのも楽しみのひとつ。

手際よくカヌレが包まれていく作業台には、『フリーカット無垢材』の「ナラ(節・白太あり)」と『アイアントラス脚』を組み合わせて使っていただいています。

元々家具屋さんで働いていた経歴を持つ内藤さん。toolboxの存在も知ってはいたものの、中々使う機会がなかったと話します。

「家のDIYしたり家買ったりっていう機会が私には多分ないし、いいなと思いながら見るだけだったんです。でも自分でお店やるってなった時に、ようやく使える!って思って」

「ナラだからすっごい固くて、ビス打つの大変でしたよ!」と思い出を振り返る。

作業台の天板は無垢がいいと、色々探した中で、サイズや高さを自分で決められることが決め手になりました。

「高さは自分の身長に合わせて、結構高めに。普通だと冷蔵庫が作業台によくなるんですけど、全然高さが違くて。これぐらいあるとやっぱ腰が痛くないというか」

奥にあるのが、飲食店でよく見かける作業台を兼ねる冷蔵庫。生地をこねたり、力を込める作業には向いているけれど、立ちながら包む作業には手前の作業台の高さが使いやすそう。

角丸や面取り加工はせず、尖ったままの状態に。実はこのエッジ、先ほどの三角包みの作業の中で役立つシーンがあって……

紙をピシッと綺麗に折り込むのに使われている!ピン角がこんな場面で役立つとは。思いがけず、内藤さんの動作と一体となって活躍している場面に遭遇し、感動してしまいました。

オープンから長年連れ添った天板。気になる経年変化の具合を聞いてみると、色味の変化はそこまで感じたことがないそう。

「あまり日焼けした感じもないかな。でも、表面に細かな傷がついたり、端が凹んだり。これはもう『あー、頑張ったな私』って」

「ナラ(節・白太あり)」は固い樹種というだけあって、作業台として過酷に使ってもこの綺麗さ。その中でついた痕跡も、内藤さんにとっては頑張ってきた証。

実は今回お邪魔させていただいたのは、オイルを塗ってお手入れをするタイミングに合わせて。実際にどんな風にメンテナンスしながら使われているのかを見せていただきました。

お手入れするのは3年に1度くらい、表面のカサつきが気になった時にしているそう。自宅で愛用している無垢材のチェストをつくっている家具屋さんが使ってたBIVOSオイルを使ってます。

「よく見たら蜜ろうですね、カヌレの仲間!」

元々ボルドーの修道院が発祥と言われているカヌレ。修道院で養蜂をしていたことから、型に蜜ろうを塗って焼くようになったのではとも言われています。

綺麗に積まれていたのがカヌレの銅型。大きさや波打ち具合によって、外側のカリカリ部分と中の柔らかな部分の割合が違ってくる。

「思いがけずストーリーができちゃった」と笑う内藤さん。

ウエスに少量オイルを染み込ませて

塗り広げていきます。

塗っている時間は5分ほど、一度塗りで、乾いた木肌に潤いが!色艶もしっかり復活していました。この日はお店の定休日。次の営業日まで乾燥させてメンテナンスは完了です。

「結構、ここの節が好きで。家具屋にいた頃から好きだったんですけど。やっぱり、木だった時の記憶じゃないですか。それが好きで。見てるだけで癒されるんですよね」

木は、一枚一枚表情が違って、一期一会だと話していたのが印象的でした。

元々ここは、電気屋さんの車庫として使われていた小さな店舗スペース。

紹介した作業台以外にも、電気や水道など専門的なところ以外は、DIYでつくられたそうです。

「壁も全部自分で塗装しました。最初に下地に濃い緑をランダムに塗っていて、だんだん透けて見えてくるように、上から漆喰をラフに塗ったりしています」

よく手が触れる部分から緑色が透けて見える!壁に貼られているのは好きなワインに関係のあるイラストや、Lomographyで撮ったパリの写真など。

商品の受け渡し口になるカウンターもDIYで。下部は黒板になる塗料を塗って仕上げました。

子供の頃からお菓子づくりが好きだったという内藤さん。ゆくゆくは自分の店を持つのが夢だったのか訊ねてみると、返ってきたのは意外な答えでした。

「全然、そんなことはなくて。買ったら美味しいのいっぱいあるから、別に自分でやろうとは思ってなかったんです。

でもカヌレで、食べたいって思うものがその当時はまだ売ってなかったんです。普通に体に優しい焼き菓子やさんとかでも、カヌレって扱ってなくって。じゃあ自分でつくろうって」

オープンして一年半は、会社勤めと二足のわらじを履いてのスタートでした。

「平日働いて土日、お店をやって。もしも赤字になったとしても、カヌレを焼くという趣味に週末はお金を使ってるんだって思おうと決意してオープンさせました。ありがたいことに今はお店1本でやらせていただいてます」

そんな風に続けてきたお店も、来年2026年1月には8周年を迎えます。棚に飾ってあったのは毎年出している周年缶。

毎年内藤さん自身がデザインしているという周年缶。その年ごとに決めたコンセプトでつくられる限定カヌレとセットで販売されるそうなので、ぜひお店のSNSなどをチェックしてみてください。

写真は定番フレーバーのチョコカヌレ。ワインはもちろん、ブランデーやウィスキーとも相性良し!チビチビ食べ進めようと思いましたがあっという間になくなりました。

Dans la Poche(ダンラポッシュ)

オーガニック小麦粉、平飼いの卵、甜菜糖…など、安心素材を厳選して、蜜蝋と銅型を使用して焼き上げる本格的カヌレ。ワインに合うカヌレがコンセプト。

〒153-0065 東京都目黒区中町1-36-6
店頭販売は土日祝 13:30〜
買いたい種類が決まっている方や、まとめて買いたい方は、WEBからの事前予約がおすすめです!
※予約の受け取りは16:00頃まで
※予約なしの販売は開店から完売まで

通販もあるので、遠方の方もぜひ!
ネットショップ・ご予約はこちら

紹介している商品

PS-TB004-01-G017
¥18,500/セット
テキスト:岩崎

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