質感のよい賃貸マンションからツルピカ3階建て戸建て購入へ
賃貸デザイナーズマンションから、築8年の戸建てに引っ越ししたご夫婦。購入した中古の家は、3階建て、トータル98㎡。フローリングやクロスなどはすごくキレイな状態で、トイレは1階と2階に2箇所。キッチンは収納ばっちりの食洗機付きのL型と、よくある都心のファミリー向けのつくりをしていました。
賃貸マンション時代に質感のいい空間のよさを経験したお二人。仕事の都合で職場に近い、いまの戸建てを手に入れたものの、将来的にはご主人の実家に移り住む可能性もみえていました。前の家と同じくらい質感のよい家に変えたいという思いもありつつ、予算的にも納得できる範囲でと、メリハリをつけて部分リフォーム。
その時の様子は、「そのリノベ、どこまでやる?」で以前ご紹介したのですが、引っ越して1年3ヶ月。改めて、その暮らしぶりを取材させていただきました。
共働きDINKS、自分のスタイルが確立している50代の奥様Kさん。引越早々リモートワークが定着。日中も、仕事をしながら自宅で過ごすようになり、一日の大半は、仕事をしたり、ご飯を食べたりと、リビングダイニングで過ごしているそう。
ご主人は、家の近くの職場へ出勤し、お昼はご飯を食べに帰ってくるようなスタイルなのだとか。
オーバースペックなファミリー仕様のシステムキッチンを丸っと入替え
当初から、ここだけは変えたいと思っていたキッチン。リビングダイニングの奥に独立したつくりになっていました。
既存はL型で食洗機付き、吊り戸もしっかり揃ったファミリー仕様のキッチンでした。ですがKさんは「全部扉付きの吊り戸は、モノが取り出しづらく、どこに何があるか管理しきれない。食洗機もいらないし、自分たちにこのキッチンはオーバースペックで使いこなせない。面材のツルっとした感じや色も好みではない」と、『キッチンSETUP-01』を導入することに。
『キッチンSETUP』とは、キッチン本体から水栓、レンジフードなどの設備パーツ、壁や床のタイル、棚などのアクセサリー類まで全てセットになっていて、既存の空間のサイズに合わせてはめこむことができる商品。対応エリアでは取り付け施工サービスも行っています。
「一番お金をかけずにキッチンを改装するなら、気に入っていない扉の面材だけを変えるという提案ももらったのですが。やはり、L型の部分が使いづらいなと思って、結局セットアップでを導入することにしました。私、機械を信用していなくて(笑)食洗機は使わないから、それもいらないなと」
(注:希望の方にはSETUP-01は、オプションで食洗機もつけられます)
最終的に、既存のL型キッチンからサイズを縮めて、質感重視、隠れた収納とオープンな収納が混在するI型キッチンへと、空間ごと丸っと入れ替わりました。
「もともとのセットでは白タイルに黒目地という組み合わせだったのですが、コントラストが強い気がして、目地をグレーに変えてもらいました。
在宅ワーク中心になったこともあって、キッチンに立つ頻度は1日に3回以上に増えましたが、タイル目地の汚れは全然気になりませんね。キッチンパネルだったら、汚れが目立ちそうで料理した後、軽く拭くとかしてたと思うけど……ほとんど拭き掃除もしてないですね」
たしかに、コンロ側のキッチンもじっくり拝見しましたが、全く汚れは見えず。Kさんが以前使っていたキッチンにも取材者である私の家のキッチンにも、白い100角タイルが使われていたのですが、「面の広いタイルより、細かいタイルの方が汚れも目立ちづらいのかも」とお掃除トークに花が咲きました。
カスタマイズしがいのあるキッチン。使いながら納得いくカタチに
「キッチンSETUP-01」のキッチンの収納は、中に棚のない扉収納と、深型と浅型の引き出し、陶器のラックと、木製オープン棚という、作り込まれすぎていない内容。もともとあった吊り戸棚も外し、Kさん宅のキッチンは収納量もコンパクトになりましたが、どう使いこなしているのでしょう。
「道具の配置は、試行錯誤しながらでしたね。最初に、窓上のオープン棚をどう使おう?と迷って。キッチンの引き出しの中も含め、ラックとか、収納ボックスを買い足していって、徐々にいまのカタチになってきました」
お鍋などが置かれることが多いと思っていた上部のオープン棚には、元々持っていたワイヤーラックを利用してカッティングボードなどの板モノや料理本を置いていました。高い位置にあっても、カゴごと取り出せて便利そうです。
なかなか見る機会のない、引き出しの中も披露していただくことに。
真ん中の下の引き出しは、鍋やゴミ箱も入れられるように深型に設計されています。Kさんはそこを調味料や食材のストック入れとして使用していました。
「引き出しは意外と使いやすいようで使いづらかったんです。深くて。
無印良品のファイルケースを3段並べて調味料などを入れて使っていたんですが、上部にまだまだ余白の空間があるからもったいないなぁと。で、後から同じシリーズの収納の浅いタイプが置けることに気付いて。実は先週この2段目をつくったんです(笑)」
と、深型の収納を見事に使いこなしていました。ケースごと調味料を取り出せるのは便利そうです。キッチンに立つのは主にKさんのようですが、どこに何があるか分かるようにしておかないと、ご主人も困りますもんね。
その他、セットになっている床の『土間タイル』について使っていて気になる部分はないか聞いてみました。
「床のタイルは、冬でも冷たいとは感じてないですね。それより、白だから汚れは気になるかな。隣がお風呂場で、濡れた足で出てきたりすると汚れが……ちゃんと足を拭いて出てきたら大丈夫だと思うんですが(笑)。目立つ汚れはたまに、メラミンスポンジでこすっています。自分だったら、床のタイルはグレーを選んでいたと思いますが。でも、白だからこの空間全体が明るく感じるってのはありますよね。
扉のバーチの木の色も、本当はもうちょっと深い色味の方が好みだったんですが、使ってるうちに少し濃くなって馴染んできたかな」
と、うまく付き合っていただいているご様子。
キッチン空間ひとつにしても、細かいアクセサリー類まで全部にこだわったら、それはそれでお金もかかります。収納もすべてを引き出しにするとキッチン本体の値段がかなり上がってしまうため、そこは開発時にある程度の割り切りをしたところでした。
セットアップで丸っとお任せパッケージだからこそ、「この色、意外にいいな」の発見があったり、不便だと最初は感じた部分も使いやすいようアレンジしていく楽しみがあるのかなと思いました。すごくリアルなお話が聞けて、キッチンの開発担当も喜んでいました。
引越し前に既存の風呂にお試し入浴!変えるかかどうかは見て、試して判断
キッチンに続いて、大きく変えたのが洗面室。窓から光と風が通り抜ける気持ちのいいスペースです。
キッチンのお隣に位置していて、キッチンと同じ白い『土間タイル』の床が続いています。フロートの木天板にシンクが載った軽やかな空間のデザインは、設計担当者にほぼお任せ。タイルは、Kさんがセレクトした『水彩タイル』。とても気に入っていただいてるようです。
右側に見える白いルーバードアは小物を入れる収納で、この『木製パインキャビネットドア』もお気に入りなのだとか。スキンケア用品など、たまに使うものを入れるのには、目隠しできる収納もあると使い勝手がいいですよね。
ユニットバスも新しいものに交換したのですが、実はこれも金額が大きいので変えるのか最初は悩んでいたそう。
「インテリアに興味がない夫も、お風呂は好きなので、浴室をどうするかは彼にまかせました。ただ最初、既存のユニットバスもそれなりにキレイで、交換すると金額も大きいから変えるか迷ってたんです。で、あまりにも迷ってるから、じゃあ、一度いまのお風呂入りにいけば?って提案したんです(笑)。引き渡しも終わって水道は引いていたので」
「変えるか迷ったら既存のお風呂に入ってみて決める」という、という斬新なKさんからの提案。ご主人は実際に引越前のこの家に来て、お風呂だけ入ってみたそう。入ってみると、やはり他の人の使っていた形跡が気になるなと、結局交換することになりました。
そのまま住んでも問題なさそうなレベルできれいな家だったそうですが、実際に空間を体験して気になるところをジャッジできるのが、中古物件のいいところ。その観点でいくと、もう一つ、分かりやすかったのが、階段の手摺りです。
実は階段室の手摺は、元の位置から逆の壁側に付け替えているんです。元々は、いま正面に見えている壁に手摺がついていました。
元のままでも、機能的には何も不便はなかった手摺。Kさんは既存のデザインが気に入っていませんでしたが、正直なところ、ご主人は別にこのままでいいじゃないかと思っていたそう。
けれど、竣工当時のコラム「そのリノベ、どこまでやる?」で詳しく語られていますが、付ける位置を変えるだけで、リビングからの見た目がすっきり。そして、無垢の木を削り出した『木の手摺』に変えることで、手触りも上々に。毎日触る場所なので、使っていくうちに愛着が湧いてきたそう。
ちょうど取材時に挨拶だけ!と仕事を抜けて顔を出してくださったご主人も「手摺、気に入ってるよ」と言ってくださり、ひと安心でした。
親が転勤族だった子供時代。色々な家での経験が決断力を養う
既存のものが「汚れが付きづらい」「洗面水栓はシャワー切替付」など、不動産の募集広告でPRされそうな機能的にスペックが良いものでも、自分に必要か否か、ぶれずにジャッジしていけるKさん。そんなKさんの考え方は、どんな経験から培われたのでしょう?これまで、どんな住まい経験をしてきたのか聞いてみました。
「親が転勤族ので、小さい頃からスペックはバラバラの各地の社宅を転々とする暮らしをしていました。広い平屋からかなり古いアパートまで、普通の人より多種多様な家に住んできた経験は多いと思います」
元からある機能的なものをもったいないと捨てることができないのは、判断基準が分からないから。
Kさんは、その点、これまでの住まい体験から、自分にとって何が大切かの判断基準が育ってきているから、自分たちが気に入った必要なものだけを選んでいけるんですね。
そんな明確な判断基準で、ばさっとなくなったのが1階の玄関横にあったトイレ。
トイレは2つあった方が家族が同時に使いたい時や、帰ってきて急いでトイレに行きたい時に便利かも?と思いそうですが、「いらない。だって、誰が掃除するの?」という、Kさんの一言でばっさり撤去が決定。いまは、その空いたスペースをクロークとして活用中。あまり広くない玄関にゆったりした広がりが生まれていました。
「はじめての家づくり、すごく楽しかったんです。打ち合わせで、モヤモヤと思っていたことを伝えたら、設計担当の方が言語化してくれて、図面でカタチになっていくのが毎回楽しかった。いろいろな人に勧めてるんです。家づくり楽しいよって」
機能性よりも、質感にこだわって選んだアイテムたちを愛でながら、これからもちょっとずつ住みやすくアレンジしていかれるのを、楽しみにしています。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
オーダーメイドリフォームのご相談はこちら→TBKに相談する
リフォーム相談会定期的に開催中 詳細はこちら→コラムを読む
※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。