お施主さまが寝室として使っていたのは、引き継いだ実家の1階にある、10畳の和室でした。

たくさんの思い出が詰まった愛着のある家でしたが、断熱性能が不十分なため、冬になると1階は底冷えし、体を休めるどころか寒さに耐える場所になってしまっていました。「心と体を整え、安心して過ごせる場所をつくりたい」と、部分リノベーションを行いました。

畳の間と板間、押入れを合わせて10畳あった和室を、丸ごと一新。トイレと洗面も新設しました。
寝室・書斎・クローゼット・トイレ・洗面をひと続きにまとめ、生活の流れをスムーズに。「寝る」「身支度する」「仕事する」が一室内でで完結する、機能的な空間に生まれ変わりました。

お施主さんのお気に入りのカフェをイメージして内装を仕上げたという空間は、まるでホテルのよう。

ベッドのヘッドボード側の壁は、『フォグタイル』のブラウンで仕上げました。ウォルナットの家具と相まって、落ち着いた雰囲気をつくり出しています。

焼き物特有のぼやけたムラ感が、落ち着いた印象を与えてくれます。

窓の外に目を向ければ、やわらかな光と、季節ごとに移ろう草花。日常の喧騒からふっと離れ、穏やかな時間を過ごせる場所ができあがりました。

窓辺は愛猫もお気に入りの場所。ひなたぼっこをしながら、お施主さんと同じように新しい空間を楽しんでいます。

寝室の反対側には、たっぷり収納できるクローゼットを用意。お気に入りの洋服も余裕を持ってしまえる広さです。

さらに、窓から自然光が入る書斎も設けました。広めのデスクには書類や資料を広げられるだけの余裕があり、リモートワークや趣味の作業にもしっかり対応。「集中」と「リラックス」が心地よく切り替えられる空間です。

洗面には、最小限の機能だけを備えたステンレスの『スクールシンク』を採用。シンプルな『壁付けセパレート混合水栓』を組み合わせました。一体で溶接された丸棒は、タオル掛けにしたり、S字フックをかけてブラシやドライヤーを吊るしたりと、用途はいろいろ。両サイドのデッキスペースには植物を置くこともでき、ここで水やりをしたり、日常の小さな楽しみを広げられる場所になっています。

見た目だけでなく、性能面もリニューアルしたお部屋。 天井は断熱材を入れ替え、壁の一部も断熱補強。床は既存の断熱を活かしつつ床暖房をプラスしました。窓には内窓を取り付け、熱交換型換気扇も導入。さらに天井にはナノイー発生機を設置して、空気と温度を整え、深呼吸したくなるような快適さを叶えました。
寒さに悩まされていた和室が、心身ともに安心してくつろげる空間に変わりました。

和室をホテルのような空間に変えるだけでなく、居心地や快適さも一新した部分リノベ。たった一室のリノベでも、暮らしの質は大きく変わる。そんな気づきをくれる事例です。

ASTER |有限会社 中川正人商店

ASTER |有限会社 中川正人商店

熊本を中心に活動するリノベーション専門店。住宅リノベーションや店舗改装のデザイン設計・施工までを一貫して行っています。熊本市中央区九品寺に構えるインテリアショップ「conceptstore A.」と「KUHONJI GENERAL STORE(9GS)」では、家具やカーテン、照明を含めたインテリア全体のコーディネートも提案しています。

テキスト:小尾

関連する事例記事

「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
誰もが憧れる「広いリビング」。でも、そこでゆっくり「くつろぐ時間」がなければ、本末転倒。子どもが個室に引きこもるのを防ぐ工夫や家事ラク要素を盛り込んで、「広いリビングで家族がくつろぐ時間」をつくり出した事例をご紹介します。
泊まれる“町工場”!?下町感たっぷり、東大阪の商店街のまちごと堪能するホテル
泊まれる“町工場”!?下町感たっぷり、東大阪の商店街のまちごと堪能するホテル
商店街と町工場がにぎわう東大阪・布施にある SEKAI HOTEL Osaka Fuse。 夕食は商店街の飲食店で、入浴は昔ながらの銭湯で。朝食はにぎわいのある喫茶店で。東大阪・布施の商店街を“まちごとホテル”として楽しめる、町工場をリノベした客室をご紹介します。
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
着回しが効く、長く付き合える一着を選ぶように。つくり込むのではなく、暮らしのベースをつくる感覚でリノベーションして、これからの暮らしに寄り添い続けてくれるマイホームをつくった事例をご紹介します。
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
タイムレスなミッドセンチュリーデザインに、下北沢カルチャーをプラスした空間。ホテルとして快適に過ごせるのはもちろん、仲間と集まって暮らすように楽しめる工夫もいっぱい。家族だけのマイホームとはまた違う、“仲間と過ごす場所”の事例が届きました。