vol.2の水編に続き、vol.3は、いよいよ料理のメインとなる[火元選び]編です。キッチンづくりの火元を考える際にまず話題にでるのは、「ガスとIH、どっちにするか」ということ。オール電化マンションでガスNGの制約がある場合もありますが、自由に選べる場合、本当にそれだけで決めてしまっていいのでしょうか?
お手入れのしやすさを気にする方も多いですが、一番大事なのは、ご自身の料理スタイルにあった機器を選ぶことと、その配置。高性能な調理家電も増えてきている昨今、魚焼きグリルやビルトインオーブンは、いる?いらない?キッチンづくりで決めなければならない「火元」について深掘りしていきます。
今回のガイドでは、数々のお家を訪問してきたtoolboxのPR担当が、「住む人のこだわり」や、それを叶えるためのアイテム選びについてお伝えします。一緒にその魅力やポイントを紐解くのは、toolboxのキッチン担当です。
青島さくら
toolboxの商品開発チーム所属。前職時代から、造作キッチンの世界に携わり、キッチン、水回りアイテムを担当する。いろいろな先生のお料理教室にいって、料理をするのが趣味。
事例で見る | 料理スタイル別の「火元の種類・配置」
「どんな道具を使って、どんな料理をよくするのか」自分や家族の料理、食事のスタイルがキッチンの火元選びのポイントです。家族やゲストとの一体感を大事にしたい、壁に向かって集中したい、あまり料理はしない、何を重視するのかが明確な3つの事例を通して、自分や家族は何を重視したいのか考えるきっかけにしてみてください。
case1. 目の前でサーブして熱々を食べさせたい!オーブンも日常使い。ダイニングテーブルにIHを埋込んで
夫婦と息子の3人暮らしのAさん。戸建てのワンフロアは、IH付きのダイニングテーブルと、壁いっぱいのキッチンがメインの空間になっています。
「あたたかいものをそのままサーブしたい」「スペースの効率化」この2点を重視して、大きなセラミック天板のダイニングテーブルにIHを埋め込みました。IHを選んだのは、使わない時はテーブルの延長でフラットな作業台となるから。テーブルが広く使えるよう、奥行きのない3列横並びのタイプを採用しました。
IHの下には、海外製のオーブン兼電子レンジを設置。共働きで忙しい日々のため、材料をセットしてほったらかしで出来上がるオーブン料理も日常使い。魚を焼いたり、豚汁、おでんなども、オーブンで作っているのだとか。
段差のないIHと熱いものをそのまま置けるセラミックの天板のおかげで、熱々のオーブン料理を取り出して、そのまま置けたり、料理してよそったものをそのままテーブル側の人に手渡せたり。料理好きのこだわりが詰まったキッチンです。
使われているアイテム
①コンロ:
IHクッキングヒーター 3つ口 CI 290 110(Gaggenau)※販売終了
②天板:
セラミック 造作 (手前)
SUS(壁側)
③オーブン
電子レンジ機能付き (Miele)
④シンク
SUS天板一体成型シンク造作
⑤水栓
ホース付きステンレス水栓(KWC)
⑥食洗機
600サイズ(ASKO)
⑦ビルトイン冷蔵庫
冷凍冷蔵庫一体型(AEG)
オープンな対面キッチンの場合、コンロ回りの油はねを気にしてガラスの油はねガードを設置するケースもありますが、Aさんは、ダイニングとの一体感を重視してガードは設けていません。
揚物や炒めものをする時は、油はね防止ネットを活用。料理中もこまめに周囲を拭きあげているのが、キレイを保つポイントですね。
ガスコンロからIHに火元を変更したい場合、「200V」で、分電盤からIH専用回路を用意する電気工事が必要になります。古いマンションの場合は、既存の分電盤の容量を上げたくても、各戸への供給容量に余裕がない場合もあるので、事前に管理会社に確認しましょう。
逆に、元々IHコンロが入っていてガスコンロにしたい場合も、オール電化マンションなど、ガスを各戸まで引き込めないことがあるので、ご注意を。
case2. 壁に向かって強火力からとろ火までを使いこなす!憧れの海外製ハイパワーコンロ4口を愛用の鍋で使い分け
料理大好き、ゲストを招いて振る舞うのも大好きな一人暮らしTさんのキッチン。雑誌を見て憧れていた海外製のハイパワーガスコンロありきで中古マンションを購入してリノベーション。キッチンが中心の間取りを組み立てていきました。
高火力からとろ火までの振り幅が魅力の4口コンロ。高火力を活かして中華鍋で炒め物、とろ火はルクルーゼでの煮物に重宝。真ん中は、かまどさんでお米を炊いて、弱火コンロは、あたため直し用と、どの鍋で何をつくるかで、4口を使い分け。
中華鍋を振るったりと思い切り作業して、終わったらサッと拭き上げられるよう、火元は壁向きに配置。盛り付けは、アイランドの大きな作業台兼テーブルカウンターで行って、即サーブと、作業エリアを使い分け。身長180cmと大きなTさんに合わせてつくったキッチンは、コンロ側が高さ90cm、中央の作業台兼シンク側は95cmと作業に合わせて高さを変えています。
コンロがグリルレスのため、魚焼きには、置き型の「燻製器」を愛用。煙も出ずに快適なのだとか。調理家電は、トースター、電子レンジとともに、コンロと同じ壁際の反対側にまとめています。
沢山ある愛用の鍋たちは、コンロ下のオープンなラックに入れて取り出しやすい工夫も。ゲストを招き、和洋中にエスニックと料理を振る舞って楽しんでもらう時間が楽しい、工夫が詰まったキッチンスタジオのようなキッチンです。
使われているアイテム
①コンロ
パワーガスククッカー 4口
②天板
ステンレス へアライン仕上げ造作(タニコー)
③水栓
K7 シングルレバーキッチン混合栓 / JP301002(GROHE)
④シンク
ステンレス へアライン仕上(タニコー)
⑤食洗機
W450引き出し式 NP-P60V1WSPS(パナソニック)
国産コンロは、外寸W600又はW750mmと各メーカー規格が統一されているものが多いため、同じサイズ同士ならコンロだけの入れ替えも可能ですが、この海外製のコンロはW794mm。開口寸法が国産より大きくなります。既存の入れ替えで検討の方は、ご注意ください。
case3:そんなに調理をしない派は、仕舞えるIHで作業台はすっきり広々。部屋を見渡すタイルのアイランドキッチン
タイルを貼って造作したキッチンが印象的なキッチン。改装可能な賃貸物件で、一部オーナーに費用負担してもらい、このキッチンをつくりました。
仕事が忙しく平日はそんなに凝った料理はしないと、電源をさすだけのポータブルIHを採用。使う時だけ取り出して、使わない時は仕舞って天板が広々使える自由さを選択しました。
食事が済んだら、IHは仕舞い込み、カウンター上は、タイルが美しいシンクだけのカウンター天板に。リビングの中央に位置して、花を飾ったりして絵になる、キッチンというよりは、カウンターとしての存在感が強いキッチンです。
使われているアイテム
ガスとIHは両立できる。得意なことで使い分け
ガスの特徴
・中華鍋のような丸底鍋、土鍋、銅鍋、アルミ鍋など、あらゆる鍋が使える
・料理中に鍋を浮かせて煽ったり、傾けてもOK(IHは常に底面が接している必要あり)
・火力が目に見て、感覚的に分かりやすい
IHの特徴
・フラットで掃除が楽
・使わないゾーンは、作業台にも
・夏場、コンロ回りに蒸気は出るが、周囲の空気そのものはあたたまらないので、キッチンが暑くならない
・火力の目盛りと実際の感覚に慣れるまで時間がかかる
・一酸化炭素がでないので、より安全
機器を選べば、ガス・IHどちらでも出来ること
・タイマー制御
・温度一定(揚げ物で便利)
それぞれのユーザーの声をまとめると、とにかく掃除が楽であるのを取るならIH。料理の面でいうと、鍋・フライパンを選ばなくて良いのはガス。火元から一瞬鍋を離して空中で傾けたり煽る、土鍋でご飯を炊くなど、ガスの直火にしか出来ないこともあります。あとは、操作性、見た目でどちらを優先するか次第です。
※ガスコンロは、どの機種も都市ガス用とプロパンガス用が選べるので、お住まいにあったものを選択してください。
コンビネーションコンロで、お好きなタイプ・数を組み合わせて
ガスとIHですが、実は併用して使うことも可能です。中華鍋を使いたい時は、ガスコンロ。それ以外は基本は、IH。鍋は出来るだけガス・IH併用可なものを選ぶなんて料理スタイルも叶えられるんです。
ガス1口、2口、IH、3種類のコンロを自由に組み合わせ、オリジナルなコンロセットをつくれるものも。連結させずに、それぞれ離して使うこともできるので、Ⅱ型キッチンで、壁際にはメインのガスコンロ。手前のアイランド側にお湯沸かし用の1口IHをセットなんて使い方も。
ただし、機器代に加え、電気とガス工事がそれぞれかかるため、工事代もプラスになります。
ガス1口、2口、IH、3種類のコンロを自由に組み合わせ
「直火で炙る」「銅鍋で小豆を炊く」といったガスの直火でしかできない行為。たまにしかやらないなら、ポータプルのカセットコンロで叶えるのもおすすめです。
case.1 で登場したIH利用のAさんは、トースターを持っていないので、自分一人分のパンを焼く時は短時間でサッと仕上がるカセットコンロで、家族分を焼く時はオーブンでと、使い分け。
また、ガスでしか使えない銅鍋は熱伝導率がよく、均一に火が入るので小豆を炊くのに最適。プロの和菓子職人さんも愛用する方が多いのだそう。
グリルはいる?いらない?使う頻度と求める機能、キッチンの見た目で選ぶ
ビルトインコンロについているグリルは、「魚焼き用」というイメージを持たれがちですが、最近は魚を焼くだけでなく、オーブンのように使える“もうひとつの熱源”として機能が多様化しています。「魚は焼いても月1−2回。掃除の方が面倒くさい」なんて場合、グリルなしで下部を収納とする、すっきりしたキッチンを選択する方も増えています。
グリルレスは見た目すっきり、下部は収納として活用できる
天板にグリルレスコンロを埋め込んだ場合、下部を扉付きのキャビネット収納にすれば、ラインがそろってすっきりとした見た目に。オープンに使う場合も、天板下に少し機器のでっぱりが露出するものの、コンロ下は収納として使えます。
国産グリルレスは、シルバー4口かブラック3口の選択肢
コンパクトなサイズのキッチンでも料理を諦めたくない場合は2口コンロがあります。IHとガス両タイプあり。
奥行きが浅いプランにしたい場合は、コンロ横置きがおすすめ。特にIHの横置きは、使わない片方を作業スペースとしても使えるので、狭い空間での設計におすすめです。
写真は「ホワイトミニマルキッチン W1500×D500」と「 IHヒーター ガラストップ 2口横」組み合わせた事例
グリルはコンロ+1の熱源!直火が届く、小さなオーブン代わり
コンロの魚焼きグリルは、コンパクトな庫内で一気に温度が上がるため、ミニオーブンのような使い方ができます。特にガスコンロのグリルの場合は、火元と素材が近いので、魚だけでなくピザや食パン、肉を焼く・炙るが美味しくできます。
最近のグリル付きコンロは、鉄鍋などの専用パーツが付属しているものも増えています。焼くだけでなく、煮込み料理や燻製・蒸し料理などの幅広い料理が可能に。
野菜やお肉を詰め込んだ無水料理や煮込みハンバーク、パンなどを楽しめます。
高火力な全面五徳 専用鉄鍋付き
トップのカラーとパネルデザインも比較して
ビルトインオーブンはどこに設置する?国産と海外製の違いとは?
海外では日常的に使われているオーブン。パンやお菓子づくりが趣味だったりする方にはお馴染ですが、キッチンにすっきり納まり、据え置き型(家電タイプ)のオーブンレンジより高火力で余熱時間も短く、庫内も広いビルトインオーブンに憧れる方も多いのではないでしょうか。
大きなチキンやピザを焼くというのが定番のイメージですが、野菜や肉を並べて焼くだけのほったらかし料理や、鋳物ホーロー鍋ごとオーブンに入れての煮込み料理も得意。うまく使いこなすと、忙しい人の味方になります。
グリル付きコンロと一体になった国産オーブンの容量が大きいもので約44Lなのに対して、海外製は75L前後と容量が大きく違います。庫内容積が大きいほど、ドア開閉時の温度低下からの復帰が早く、庫内容量が大きいほど熱容量が安定するため安定して食材に熱を入れることができます。ただし、設置が難しい場合もあるので、ビルトインオーブンの国産と海外製の違いを含め理解しておきましょう。
グリル下にオーブンと一体的に納めたいなら「国産のグリル付きガスコンロ一体型」
おなじみの、国産のキッチンのグリル付きコンロと一体になったオーブン。グリル付きコンロとセットでの設置となり、製造はコンロと同じメーカーの組み合わせとなります。オーブン専用と電子レンジ機能付きがあります。
目線の高さなど、使いやすい位置に単独設置するなら「棚置きタイプ」
ヘビーユーザーにはオーブン単独で目線高さに設置するのがおすすめ。庫内の様子を確認しやすく、取り出しやすいです。単独でお好きな位置に設置できるビルトインオーブンは、海外製ではおなじみですが、国産でもいくつかの機種が販売されています。使いたいオーブンに合わせて、造作棚を計画しましょう。
オーブンとしての庫内容量や最高温度は海外製のものが大きいです。
国産が、コンロ一体型のガスオーブンが主流なのに比べ、海外製は電気オーブンが主流です。高パワーを求めるなら、200Vタイプを選び、電気工事で200Vの専用回線を用意するのもお忘れなく。
国産の「グリル付きガスコンロ一体型オーブン」でなく、お好きな海外製オーブンを取り入れたい場合は、「グリルレスコンロ」と「単独・ビルトインオーブン」を組み合わせるという選択肢に。使うオーブンに合わせて、コンロ下に棚を造作して設置します。
電気オーブン、ガスオーブン、どちらも選ぶことが出来ます。
写真:パワーガスクッカー 4口+電気オーブン OP8664B(ASKO)
多様化する調理家電。調理場の延長として、置き場と天板素材を考えよう
高性能の調理家電が益々多様化してきています。材料を入れるだけでカレーや煮物を仕込んでくれ、コンロ1口分の働きをしてくれます。急がしい人の味方です。そうした調理家電を導入する場合は、盛りつけ作業をすることを考慮し、置き場を考えましょう。木製のキッチンキャビネットを選ぶ場合、作業台として使うことを考えると天板の素材選びもポイントに。
固定のコンロ位置にとらわれず、棚やテーブルなどが熱源の置き場所になりますので、蒸気への配慮やコンセント設置もお忘れなく。
好きな組み合わせを選べるカウンター収納
特に家のブレーカー電気容量が小さい賃貸暮らしの場合、タコ足配線で家電をつなぎ、電子レンジと湯沸かしケトルを一緒に使うとブレーカーが落ちた経験がある方もいるかもしれません。
設計や電気屋さんと相談して、「家電の消費電力一覧」という目安になる数字を参考にしつつ、使う家電と置き場に合わせてコンセントの個数と回路をしっかり分けると、そうしたストレスを回避できます。
料理好きの人も、あまり料理をしない人も、キッチンを考える上で避けては通れない、熱源選び。「ガスかIH、何口必要?」というだけではなく、グリルやオーブン、ビルトインしなくても楽しめる高性能調理家電をどう取り入れるか。他にも、ホットプレートや、たまにはテラスで七輪を、など料理を楽しむ熱源は色々あります。発想を柔軟に広げつつ、料理スタイルや、使いたい鍋、清掃手間、見た目。自分は何を優先したいかを考え、機器選びをしてみてください。
次回、vol.5は、キッチン上空の景色に影響するレンジフードの在り方を深堀りする「煙」編です。