toolboxスタッフである、私の自邸リノベーション実録です。中古マンションの購入から完成までを、全3話の連載でお届けします。

20代と30代の夫婦で、おなかの中にはまもなく産まれる第1子。時間も予算も余裕のなかった私たち夫婦が、最速期間でやりきった4ヶ月間。

家づくりって楽しいけれど、タイトな時間で決めることが多くて、知識もイメージもないところからのスタートは、なかなか大変なことです。だから、できる限り準備をしておくことをおすすめします。

私たちの経験が、これからリノベーションをしようと検討している方の参考になれば幸いです。

第1話では、物件購入するに至った経緯と、物件探しの条件や購入の決め手になったことについてお話ししました。

第2話はプランニングと素材選びのコツについてお話ししました。

最終回の第3話は、「工事を進めてわかった問題点」について。リノベーションで起こりうる、さまざまな予想外の事態。それは我が家でも例外なく起こりました。また、toolboxユーザーにはおなじみの「施主支給」についてもお話しします。

工事は解体からスタート

マンション購入から、2回の内装打合せを経て、半月後に解体工事がスタートしました。

ちなみに、打合せ回数2回で着工というのはかなり特殊なことで、日頃仕事でお付き合いがあり、意思疎通が取りやすい工事業者さんだったからできたこと。中古マンションリノベーションの設計に要する期間は2ヶ月程度が一般的です。

この時点で仕上げや使うパーツを全部決めていたわけではありませんでしたが、もちろん、ある程度内装が決まらないと工事に着手できません。

我が家の場合、以下は工事がスタートしてから決めることにしました。

・照明を付ける場所は決めたが、どの照明を使うかはまだ未定。
・洗面ミラーや棚の取り付け高さは身長に合わせたいので、現場で決めたい。
・無塗装のフローリングと建具の色とトイレ塗装の色は、ある程度できあがった現場を見てから決めたい。
・細かいパーツも自分で選びたい。

私たちの場合、かなり細かい部分まで希望を伝えていたので、いつまでにどこを決めないといけないか、現場の作業が止まらないよう確認しながら進めました。

剝がしてみないと分からない

リノベーションでは、予想外のことがたくさん起こります。なぜなら、剝がしてみないと、壁の裏側、天井の裏側は見えないから。

上の写真の通り、元のビニールクロスは綺麗に剥がれました。もとのクロスの薄紙が残っており、この上に直に塗装をすると薄紙がふやけて浮いてしまうリスクがあるため、普通はベニヤ・石膏ボード・塗装用壁紙などで塗装下地をつくってから塗装をするのですが、職人さんと相談し、リスクと補修方法を理解したうえで、コスト優先でそのまま塗ってもらうことにしました。幸い、綺麗に仕上がったのでひと安心。

下の写真はリビングダイニングの天井解体の様子。どのくらい高くなるのかは、剝がしてみないとわかりません。天井が高くなって部屋が広く感じることと、無骨な質感のコンクリートが出てくることを期待していましたが…

結果は10cm。

「うーん、まぁこんなものか。」

15cmくらい上がったら良かったけれど、まずまずな結果ですかね。そして、期待していたコンクリートではなく、壁紙が貼られた天井が出てきました。

「あれ、想像と違う。」

これは、建築当初の内装がコンクリート躯体に直接壁紙が貼られた「直天井(じかてんじょう)」だったということ。コンクリートに貼られた古い壁紙をきれいに剝がすのは、とても難しいんです。できないことにわがままを言ってもしょうがないので、プランを軌道修正するしかありません。想像していた無骨さは諦め、プレーンな塗装天井に仕上げてもらいました。

こちらはキッチン壁の解体。腰より下の高さに給排水の配管が通っているとのことで、配管を隠すために、壁が厚くなっていました。

ここには黒いタイルを貼りたくて、空洞になっているであろう高めの位置は壁をくり抜き、スパイスを置ける段差をつくる想定です。

そこで一部の壁を解体してみると、今度は以前の内装の白タイルが出てきました。タイルに書かれた赤ペンの文字は、前回の工事の形跡。リノベーションでは、まるで発掘のように、建物の歴史が発見されるのです。

白タイルが現れた部分は塗装仕上げの予定ですが、そのままでは塗れません。タイルを剝がすのは大変な労力とコストとお隣さんへの騒音の問題があり、上からベニヤを貼って調整してもらいました。

写真提供:cowcamo

柔軟に対応しましょう

それ以外にも、フローリングを貼ろうとしたら一部の床が傾いていていて、キッチンの左右で1cmの高低差が見つかったり、リビングダイニングの照明配線を希望の仕上げにするには一旦穴を塞ぐ必要があったり、エアコンのダクト穴がうまく通らず、追加工事が必要だったりと、フタを開けてみないとわからない問題がたびたび起りましたが、その都度、どのように対処するか現場監督さんとメールで打合せをし、すべて解決していきました。

リノベーションでは、工事がスタートしてから変更や追加の作業が発生するのはよくあること。時には思い通りにならないことも発覚するかもしれません。そんな時は何を優先すべきか冷静に考えましょう。

そして、できあがりを見ると予想外の手間がかかったなんて気づきませんが、現場ではひとつひとつが職人さんの微調整によって仕上がっているのだと、プロのすごさを実感しました。

床の下地調整の様子。

自分で選ぶ楽しさ!

施主(依頼主)自らが購入した材料を現場に渡して取り付けてもらうことを「施主支給」と言います。

仕事柄、パーツや仕上げはすべて自分で選びたい!という、少々わがままな私たち夫婦。今回のリノベーションでは、床材から照明、スイッチ、キッチン水栓にトイレットペーパーホルダーやタオル掛け、洗面ミラー、ドアノブ、クローゼットのつまみなど、あらゆるパーツを自分たちで選んで手配しました。

施主支給は、住まい手が自分でパーツを購入し、現場へ届くように手配します。なので、個数が間違っていないか、現場で受け取れる日時など確認が必要です。とくに設備やスイッチ関係は、購入前にその家への設置ができるかを必ず確認しましょう。

プロではない一般の人が選ぶ際には、サイズ感がおかしかったり、デザイン優先で使い勝手が悪いものを選んでしまう恐れもあるので、ひと通りすべて工務店さんに確認してからの購入が安心です。

いつまでにどこを決めないといけないのか、工事スケジュールと進行状況を共有しながら、現場の作業が止まらないよう注意して進めました。

それはもう、仕事をしながら、また別の仕事をしているような毎日でした。

私の場合は95%がネットショッピング。通勤時間やお昼休みはもちろん、時間があれば検索!検索!の日々。もちろんtoolboxの商品もたくさん使いました。

気に入ったパーツを見つけては夫にLINEを送りつけ、その日の夜に家族会議。大変そうですが、toolboxで企画やバイヤーをしている私にとっては、とっても楽しい作業で夢中でした。

一方、夫は施主支給の予算と納期を管理するべく、エクセル表をつくってくれました。

しかし、家中の仕様やパーツを決めていくのはなかなか時間がかかるもの。自由に選べるとなると、どれが良いか迷ってしまいますよね。私のようなインテリア好きにはとっても楽しい作業ですが、人によっては短時間で仕様決めをするのは苦痛になることも。「いつか家づくりがしたい」と思っているなら、普段からそういう視点で、アイデアをストックしておくのもおすすめですし、夫婦でショールーム巡りに出かけるのもきっと楽しいと思います。

toolboxのショールームでは、迷った時のご相談にも対応しますので、事前にどんな状況で、何の商品について迷っているのかをご予約フォームよりご連絡の上お越しください。

陶器スイッチ』はtoolbox商品を施主支給。スイッチの取り付けは、購入前に電気屋さんに確認しましょう。

好みのカラーで

居室の中で、寝室だけは床材に『スクールパーケット』を選びました。クローゼットの扉は通気性の良い『木製パインルーバー折れ戸』を選択。どちらも無塗装品のため、汚れないように、オイル塗装で仕上げました。

無色のクリアオイルだと、理想の色味より白っぽいため、色のついたオイルで何パターンかの塗装サンプルをつくって検討しました。

結果、床は『ワトコオイル』のミディアムウォルナットとチェリーを、2:1の割合で混ぜるというオリジナルカラーに決定!

『スクールパーケット』に『ワトコオイル』で着色した塗装サンプル。

好きな色を指定できたおかげで、ベッドとミラーフレームとも馴染みの良い満足な仕上がりになりました。

下の写真はトイレの塗装の色を決めているところです。現場打ち合せにて、塗装屋さんがその場で調合してくれました。当初はカーキにしようと思っていましたが、現場で色味を見てグレーに変更しました。

好みの高さに取り付け

毎日の生活で使うものや場所の高さが合わないと、結構なストレスを感じるものです。

あまり背の高くない私にとっては、手の届かない高さだと使い勝手に大きな影響があるのです。

そこで、工事途中の現場で打ち合せをさせてもらいキッチンの吊り棚、洗濯機上の洗剤を置く棚は私の身長に合わせ、タオルハンガー、トイレットペーパーホルダーなども使いやすい位置を指定して取り付けてもらいました。

また、見落としがちなのが洗面ミラーの高さ。使う人の身長によって、映る範囲が違いますよね。私は寝室にドレッサーを置かず、お化粧は洗面でするので、使いやすい高さにしてもらいました。

身長差のある夫婦の場合は、大きめサイズにしたり、ミラーを縦に使うなど工夫が必要かもしれません。

緑のテープがミラーの取り付け想定位置です。まず使いたいミラーのサイズに合わせて取り付け高さを決め、それに合わせて照明やスイッチの位置を決めました。

理想の家が完成!!

そうして着工から2ヶ月半後、無事に工事が完了しました!希望を盛り込み尽くした我が家は、私たちにとって満足度100%以上です。

妊娠中の家づくりでしたが、幸いなことに体調も良く、安定期の7ヶ月目で引っ越しができました。

ウッドブラインド』で、光を採り入れつつ二重サッシのごちゃごちゃ感を隠しています。

夫婦喧嘩にならないために

家探しと家づくりでは、夫婦の価値観や意見が合わなかったりといった理由で、もめごとも起りやすいもの。暮らしイメージの準備ができていないと、自分の理想がよくわからなくて、急いで決めろと言われても難しいですよね。

仕事をしながら、家事や子育てをしながらの家づくりは大変で、時にはイライラしてしまうこともあるでしょう。しかし、家族の幸せのための計画なのに、家族関係が悪化してしまっては本末転倒です。なるべく早い段階からしっかり話し合いをして、時にはプロに相談し、解決してください。

最新の設備や流行りのインテリアをすすめられると、どうしても欲張りになりやすく、人の意見に惑わされることもあります。そんな時こそ、自分の暮らしに合った優先順位を、普段の生活の中で意識してみると良いと思います。

幸い私たち夫婦は、家探しの価値観も、インテリアの趣味も合い、問題が起ってもメリットデメリットを話し合ってすぐに判断することができました。

例えば我が家では、もともと付いていた新品の食洗機を捨てて、電子レンジを置くスペースを優先しました。人によっては「ありえない!!」と思うかもしれない決断ですが、うちの食器は陶器市で購入した作家ものが多く、食洗機不可のものばかり。食器は増えてしまいがちなので、気に入った食器しか使わない主義にしています。

それに、今後は出産や子育てでつくり置きの料理を作る機会が増え、電子レンジを頻繁に使うと考えていたから。

このように自分の暮らしの価値観を良くわかっていれば、スピーディーな判断ができるのではないでしょうか。

写真提供:cowcamo

自分に合った暮らしがいちばん

人によって何が大切かは人それぞれ。正解はありません。

重要なのは自分が満足すること。

広さやテイストに関わらず、自分が居心地がいい空間こそが豊かで価値がある家です。

大げさかもしれませんが、暮らす環境は人生を変えると、本気で思っています。だから、自分らしい街で、自分らしい暮らしを楽しんでください。

toolboxは押しつけのインテリアではなく、住む人が自分で内装を選び編集する「住まい手主導の空間づくり」があたりまえになることを目指しています。

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テキスト:竹沢