今回ご紹介するお住まいがあるのは、鎌倉市材木座。
人で賑わう鎌倉駅から少し離れた、どこか懐かしい下町の風情が残る、穏やかな海沿いのエリアです。

散歩がてらふらりと海に立ち寄れる。そんな自然豊かな場所に立つ築40年の一軒家をリノベーション。家にいながら外の気配を感じられる、伸びやかな空気が流れる住まいが完成しました。

小さな吹き抜けのおかげで、やわらかな朝の光がリビングまで落ちてくるのだそう。

大きな開口を通して外のデッキと繋がる、開放感溢れるLDK。

天井の一部を白く塗装することで空間を明るく整えつつ、既存の建物の味が残る柱や梁、筋交などは空間のアクセントとして、あえて塗らずに元のまま活かしています。

そんな素材感が漂うお部屋の雰囲気に合わせ、ナチュラルな木製の造作キッチンを壁一面にセット。オープン収納のシンプルなキッチンに仕立てることで、お気に入りのアイテムたちが壁いっぱいに並ぶ様子を眺めながら楽しめる空間に。

キッチンの三角形のタイルは奥様のセレクト。廊下伝いに建物の反対側まですっと視界が抜ける、気持ちのいい景色。

LDKの手前の空間、玄関側に設置されている水回りや納戸スペースは、木材のキューブを入れ込むようにプランニングしていったのだそう。素材に選んだのは、レトロな質感を持つラワン合板。築古の建物特有の味わい深い雰囲気といい感じに馴染んでいます。

ラワンのキューブを入れ込むようにプランニング。※工事中の写真のためスイッチプレートがありません。

吹き抜け部分にはあえて内窓を設置。佇まいが絵になります。

古いフラットな天井を解体して、屋根の形のまま構造合板で仕上げ直した2階の天井。上下方向に空間が広がるとともに、既存の梁や柱が顕となることで、気持ちのいい開放感が生まれています。

「寄棟で、束やら火打ちがあるのですごく難しい作業でしたが、大工さんが頑張って仕上げてくれました」と設計を担当した堀さん。

外観の様子。LDKを囲むようにL字型のデッキを設置したことで、ぐるりと回遊できる動線が生まれています。室内と外とをゆるやかに繋ぐ存在。アウトドアリビングとして大活躍してくれそうです。

「自然と触れ合うことが大好きなご家族が住んでいるのだろうな」と住む人の人となりが浮かび上がってくるような、庭とともに住まうことを考え設計された、伸びやかな空気が流れる素敵なお住まいの事例でした。

ディンプル建築設計事務所

建築家・堀泰彰が主催する設計事務所。
その場所での外的環境と発生するふるまいを心地よい関係へとつなげる魅力的な建築を提案します。土地探し、物件探しからでもご相談ください。

紹介している商品

テキスト:八

関連する事例記事

「何から始めればいいの?」対話を重ねながら、自分の好きを紡いでいった住まい
「何から始めればいいの?」対話を重ねながら、自分の好きを紡いでいった住まい
足を踏み入れた瞬間、「きっとこの家に住んでいる人は、家で過ごす時間や、自分たちにとっての心地よさを大切にしながら暮らしているんだろうな」そんな空気がふわりと伝わってくる住まいがあります。今回ご紹介する住まいは、まさにそんな佇まい。住まい手の好みがじんわりにじみ出る、穏やかな空間が広がった戸建ての事例です。
古さを慈しみながら、今の暮らしをそっと重ねていく築古戸建てリノベーション
古さを慈しみながら、今の暮らしをそっと重ねていく築古戸建てリノベーション
築46年の家に残された、古い柱や階段の手摺りなど、建物がもともと持っていた“面影”が住まいに奥深さを与え、今の暮らしにやさしく寄り添う。年月を重ねた家が纏う趣深い空気感を大切にしながら、新しい暮らしが心地よく続いていくように。そんな思いでリノベーションした事例です。
築28年戸建ての1階リノベ。玄関・洗面・LDK、家族の暮らしのベースになる場所を心地よく整える
築28年戸建ての1階リノベ。玄関・洗面・LDK、家族の暮らしのベースになる場所を心地よく整える
4人家族が暮らす2階建ての住まい。「これからもずっと住み続けられる、思い入れのある家にしたい」と考えるようになり、家族の暮らしに合わせて1階部分をリノベーションしました。
築古戸建てで“古き良き”を活かすように。「既存を活かす」中古マンションリノベ
築古戸建てで“古き良き”を活かすように。「既存を活かす」中古マンションリノベ
古民家や昭和の平屋など、古い戸建ての内装は“古き良きもの”として魅力的に捉えられることがありますが、「中古マンション」はどうでしょう? 築古マンションが増えていく中、“アップサイクル”をテーマに掲げ、もともとの内装を活かすマンションリノベに取り組んだ事例をご紹介します。