元々細かく間仕切られ、窮屈な印象を与えていた70㎡を、ゆとりあるひと繋がりの空間にリノベーションし直したという住まい。

「ひと繋がり」と表現すると、ほぼ間仕切りのない開放的なワンルームを想像しますが、今回ご紹介するお宅は、間仕切りの様々なアイデアによって、仕切られつつも繋がりを感じられる工夫が随所に施されています。そんな間仕切りのアイデアに着目しながら、ご紹介していきます!

玄関土間を挟んで奥側がLDK、手前側が寝室と、パブリックスペースとプライベートスペースが分けられていました。

お邪魔してまず最初に「お!」と驚くのは、玄関土間を挟み、左右にそれぞれ部屋が分けられたユニークな間取りになっていること。お部屋を繋ぐための廊下はなく、この土間を通って奥のスペースと手前のスペースを行き来する作りになっています。

玄関扉を隠せるように、扉の前に木製の引き戸がついているのも面白い。意匠的な意味合いもありますが、一番の理由は断熱のためだそう。

まずは、玄関を入って左手側にあるLDKからご紹介していきます。

壁面をモルタル仕上げにしたキッチンスペース。ニュアンスのある背景がステンレスに木、ブラック、ホワイトのキャビネット、真鍮のパーツという異素材のアイテムたちをうまくまとめてくれています。

ダイニングに続く窓際に設けられたサンルームは、ガラスの建具で仕切ることで開放感を残しつつ、空間のいいアクセントになっています。

家の中でありながら外にいるかのような気分を味わえる、緑に囲まれながらゆったりとくつろぐことができる場所。

扉を開け放つとダイニングからひと続きになりますが、床材やキャビネットの色味を変えることで、空間の雰囲気を切り替えています。

サンルームの脇は、日当たり良好のリビングスペース。

こじんまりとしていますが、閉じられている訳ではないので窮屈さはなく、むしろ適度なお篭り感が逆に落ち着く、居心地の良い居場所になっています。

オフィススペースはなんとLDKに隣接された場所に設けられていました。このリビングに面した腰壁で囲まれた場所がそう。

壁の一部を抜くことで、ふとした際に外の景色に意識を向けることができるという配慮。ニッチを作るアイデアも使い勝手が良さそうで素敵。

天井まで壁を立てないことでリビング側の圧迫感を軽減しつつ、四方をしっかり仕切りつつも閉塞感を感じない、適度に解放感のある作りに。

こんな感じで上から覗き込むこともできます。

座った目線からLDKが見えないように腰壁の高さに合わせてしっかり建具も設けられています。

書斎としてもドレッサーとしても利用可能な寝室に併設されたカウンター。

玄関を入って右側、LDKと反対側のスペースは、カウンターデスクが備えられた寝室になっています。寝室の入口に設けられた間仕切りがこれまたユニーク。透明のカーテンで仕切られています。

壁に取り付けられたまんまる電球がまるで月のよう。可愛らしい空間のアクセントになっています。

光を通す透明の仕切りのおかげで、寝室ながら明るく開放的な雰囲気漂うスペースに。ベッド脇のクローゼットは、同じカーテンでも帆布素材を使ってしっかり目隠し。

トイレの建具の脇にもスリットの曇りガラス窓が設けられていました。仕切ることで生まれる閉塞感への配慮が至る所に感じられます。

玄関脇に設けられた姿見は、開けると物入れになっているという仕掛け。壁と同面に収めているので気づかれないことが多いのだそう。

キッチン脇に設けられた趣味のためのスペース。

70㎡という広さを生かし、心地よい“居場所”がいくつも点在した住まいには、「仕切る」工夫が、至るところに丁寧に施されていました。

さんかくアーキテクツ

京都府乙訓郡を拠点に活動している設計事務所。

屋号に含まれた「さんかく」という言葉には「参画」という意味と、「旗を立てる」という意味があり、一人よがりの設計をするのでなく、心地よい住まいをつくる、お店をつくるといったそれぞれの居場所に旗を立てる行為に対して寄り添い、参画していこうという思いが込められています。

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テキスト:八

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