撮影:平野 愛

フローリングは、幅600のビッグサイズをチョイス。(撮影:平野 愛)

セレクトショップのように綺麗に陳列されたウォークインクローゼット、土間に置かれたガラスのショーケース……。広々とした土間は本当にギャラリーのようで、一人暮らしのお住まいとはとても思えませんでした。

でも、自分の好きな世界観を表せることこそ、一人暮らしリノベーションの醍醐味。自分のための自分だけの空間という、我がままさこそクリエイティブなのだろうなと思います。

撮影:平野 愛

玄関を入ってすぐのウォークインクローゼットは、躯体壁を生かしてラフな仕上げに。インダストリアルな収納も並ぶ中、一角に、「ピーターアイビー」のカプセル型のガラス照明を合わせました。

この絶妙な、荒さと繊細さのバランスがこの家のポイントの一つでもあります。

撮影:平野 愛

ガラス扉を開けると、目に入るのは、大きな掃き出し窓とソファ。

カーテンを天井吊にすることで、実際の窓よりも大きく見せるアイデア。ダクトレールはラワン貼りの天井に埋め込むことで、スッキリさせています。

天井、床、カーテンの3面が綺麗に割り付けられていて、気持ちがいい。(撮影:平野 愛)

リビングの大きなソファは、福岡まで出向いて家具デザイナーの柴山信一さんにつくってもらったものだそう。やわらかな光が差し込む広い空間にこだわりのソファ。ここが特等席、間違いなしです。

リビングも土間。玄関から奥に、土間・フローリング・土間と続く独特の構成です。(撮影:平野 愛)

実はテレビが大好きだというお施主さん。テレビの目の前のソファにこだわったのにも納得です。大きなテレビを置くのはもちろん、家のどこからでもテレビが見えるようになっているのが面白いポイント。

映像コンテンツが好きだとどこにいても見たくなる気持ち、わかります。

洗面をリビングに設置することで、朝の身支度も、夜の歯磨きも、テレビを見ながらできるように。賃貸だとサニタリー空間にまとめられることが多い洗面ですが、これこそ自分で間取りを決められるリノベーションだからこそできた間取り。

縦に並べられたタイルの目地がアクセントに。(撮影:平野 愛)

洗面のタイルは、艶やかでグラデーションが美しい繊細な表情。「ラグジュアリーになってしまうのではないか」と一番迷ったそうですが、設計者の「大丈夫」の一言で決定。

タイルのツヤやグラデーションが、ラフな仕上げによく合っています。

洗面の収納棚をガラス張りにしたのもポイント。目線を遮らないので、隣のキッチンからテレビを覗く時にも邪魔になりません。

作業台に高いスツールを合わせて、サクッと朝食を食べるのにもピッタリなスペースに。(撮影:平野 愛)

キッチンは、『オーダーキッチン天板』を使って、L字の配置にしました。ステンレスのキッチンパネルに、『フラットレンジフード』のステンレスと、素材を統一しています。

水栓は、職人の手により丁寧に仕上げられた、シルキーな表情の『ニッケルサテン水栓』という繊細な表情のものをチョイス。

ベッドルームには建具を設けずワンルームに。テレビの音はもちろん、光や風も通る気持ちのいい空間です。(撮影:平野 愛)

ダイニングの裏はパーテーションを挟み、ベッドルームになっています。こちらから見ると、生活感はありませんが裏を覗くと……

撮影:平野 愛

お気に入りの漫画がずらり!椅子に腰掛けてこもった空間で漫画を読み耽るのが楽しいそうです。

テーマ通り、生活感は出さないけれど、しっかりと好きなものを楽しむスペースを確保していました。

段差に腰掛けてテレビを見たり、壁を眺めたり。段差があることで居場所も広がります。

各地からこだわりをもって選びぬいたインテリアや、躯体現しの広い壁、ショップのようなギャラリーをつくるなど、どの選択もとても潔く、人柄が滲み出ているのが印象的。一方でテレビや漫画がお好きだったりと、インドアな一面も垣間見えました。

そのどちらもがお施主様らしさであり、好きなものをたっぷり詰め込んだ空間なのだと思います。

自分の好きなものを全力で楽しみ、愛でる。一人暮らしリノベーションの楽しさが詰まった事例でした。

アートアンドクラフト

アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

テキスト:庄司

関連する事例記事

実家を引き継ぎ、“集まるリビング”を中心に再構築した、3世代6人の住まい
実家を引き継ぎ、“集まるリビング”を中心に再構築した、3世代6人の住まい
ご実家を引き継ぎ、両親を含めた3世代6人での暮らしに合わせてリノベーション。それぞれの生活リズムを大切にしつつ、みんなが集まれる場所をきちんとつくることを大事にしました。
ラフに見えて、気が利いてる。光と風を取り込む半屋外スペースがある、“倉庫っぽい”ワンルーム賃貸
ラフに見えて、気が利いてる。光と風を取り込む半屋外スペースがある、“倉庫っぽい”ワンルーム賃貸
1フロア1戸の賃貸物件で構成された、住宅地の中に建つ小さなビル。リノベーションによって生まれたのは、鉄骨やブレースが現しになったワンルーム。倉庫のような大らかな空間には、住む人の自由な使い方を受け止める工夫と、心地よく暮らすための気遣いが詰まっていました。
間取りは変えずに“居場所”を増やす。ひとり時間もふたり時間も心地よい、夫婦ふたりの「これから」に寄り添う家
間取りは変えずに“居場所”を増やす。ひとり時間もふたり時間も心地よい、夫婦ふたりの「これから」に寄り添う家
3階建ての家での暮らしが徐々に負担になり始めたことから、東京から実家近くの京都への移住を決めたお施主さま。新たな拠点として選んだのは築33年のマンション。暮らしやすさや素材選びを軸に、”お気に入りの居場所”を散りばめた住まいには、無理なく心地よく暮らせる工夫が詰まっていました。
古さを慈しみながら、今の暮らしをそっと重ねていく築古戸建てリノベーション
古さを慈しみながら、今の暮らしをそっと重ねていく築古戸建てリノベーション
築46年の家に残された、古い柱や階段の手摺りなど、建物がもともと持っていた“面影”が住まいに奥深さを与え、今の暮らしにやさしく寄り添う。年月を重ねた家が纏う趣深い空気感を大切にしながら、新しい暮らしが心地よく続いていくように。そんな思いでリノベーションした事例です。