築年数を重ねた住まいには、その家が歩んできた時間がそっと刻まれています。
家のあちこちに残る既存の柱や階段の手摺りは、まさにその記憶を象徴する存在。そんな味わいをできるだけそのまま大切にしながら、家族が気持ちよく暮らせるように、少しずつ整えていきました。
長年使われてきた柱の深い色に合わせて、壁にはラワンを、床にはどこか懐かしさのある『スクールパーケット』を採用。どちらも新しい素材なのに、築古の空気感にすっと馴染んでくれるのがいいところ。
新たに設えたキッチンは、板材を腰壁に使って、やわらかな表情に。均質でつるりとした素材じゃなく、手ざわりや温かみのあるタイルや木を選んだことで、既存の風合いにも溶け込んでくれています。
さらに、キッチンカウンターの脚は、階段の手摺りにあわせて”ろくろ脚”を使っています。昔からここにあったんじゃないかな、と思うくらいのいい雰囲気。
キッチンはII型にして、作業スペースを確保。造作で設けたオープン収納は、必要なものをぱっと見て手に取れるのがいいところ。忙しい毎日の動作に自然と寄り添ってくれそうです。
階段下のデッドスペースをうまく活かしてつくった洗面台。仕切りがないぶん光や風が抜ける、気持ちいい空間に。
『レトロエイジタイル』とラワンの組み合わせが、いい具合に落ち着いた雰囲気をつくってくれています。四角いシンクにあえて丸いミラーをあわせたバランスも絶妙で、思わず心がときめきます。
実はミラーの裏は収納になっていて、見た目がかわいいだけじゃなく、ちゃんと使い勝手も考えられたつくり。
異なる素材が同居する室内は、光の入り方や時間帯によってさまざまな表情を見せてくれます。
階段のこの手摺りが、たまりません。長い年月を経ることで生まれた深い色味は、この家で積み重ねられてきた時間そのもの。つい手を伸ばしたくなる、そんな存在です。
寝室の壁にはラワンを使い、温かい雰囲気に。見上げた天井のノスタルジックな雰囲気も相まって、ふっと心が和らぎます。
天井は既存のまま。レトロな壁紙と照明のどこか懐かしさを感じる組み合わせに、ぐっときます。
過去の時間を抱きしめるように受け止めつつ、これからの暮らしを丁寧に重ねるようにつくられた住まい。時間と素材がやわらかく混ざり合う空間は、住む人にとっても、訪れる人にとっても、穏やかで心地よいひとときを与えてくれそうです。
アトリエイハウズ
新築・リノベーションの設計施工を行う工務店。デザインだけでなく、耐震や温熱環境に配慮した建築も得意。リノベーションでは、性能向上をベースに「アップサイクル」「ネオクラシック」をテーマに掲げ、オンリーワンな空間を提案しています。京都・西京極にある自社ビルには珈琲焙煎所「WESTEND COFFEE ROASTERS」を併設。
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