空間に広がりを持たせながら造作家具で隔て、左右の窓で開放感を演出。

子供部屋をつくりたい、でもそれでリビングが狭くなるのは嫌。その両立ができないか、とリフォーム相談会』に来て頂いたところから、本案件はスタートしました。

こういった内容の相談が最近多くなってきており、都市生活者が抱えているリアルな住居問題なのだなと実感している今日この頃。浴室やキッチンといった設備の位置を変えたりフルリノベーションで大きな間取り変更をせずに、表層的な部分リフォームでLDKに広がりをつくることを試みました。

初めて現地調査で伺った時の第一印象は、「眺望がいい!」ということ。建物の立地条件ももちろんですが、特徴的なのは壁一面の掃き出し窓。こんなに広く窓を設置する物件はなかなか無いので、この特徴を最大限に生かしたリフォームにしたいと考えました。

Before:3枚引き戸枠があり、袖壁と下がり壁が手前と奥の空間をしっかり区切っていました

リビングのど真ん中にもともと3枚引き戸があり、間仕切り壁と下がり壁が手前と奥の空間をしっかり区切っていました。この間仕切りを取り払うことで掃き出し窓と天井がスパッと繋がり、奥行き方向に空間がひとつながりに広がりました。新設した造作家具のテレビ台は、天井際を空けてつくり空間の広がりをそのまま感じるようにしています。

After:空間のアクセントになる薄いブルーの背面のテレビ台が、空間を緩やかに隔てます。

造作テレビ台は、既存フローリングやお気に入りのD&DEPERTMENTの家具と合うように色味やディティールを考えています。雑貨や本をスタイリングした際に、しっかり物が映える背景色にしたいと要望を頂きました。イメージに合う色をお施主さんと一緒に探した末に辿り着いたのがこの薄いブルー。
お持ちのアイテムとの相性をしっかり検討して決めていきました。

背景の薄いブルーで雑貨や本がしっかり映えます。

既にお持ちだったD&DEPERTMENT家具と揃えて木口は積層表し。

テレビ台の裏側。趣味の登山道具がずらっと。

造作テレビ台の裏側を見てみましょう。
裏のスペースは夫婦の寝室スペースとなっています。壁面は有孔ボードで仕上げ、旦那さんの趣味である登山道具をずらっとディスプレイ。もう見ているだけで楽しくなってしまう壁ですよね!設計した私もここまでしっかり使いこなしてもらえるとにやにやが止まりませんでした。

壁を作って個室を作るということをせずに、リビングと繋がったちょっとした大人の秘密基地のような場所。リビングの広がりもそのままに、個室でなくとも満足感があるプランとなっています。

廊下から子供部屋を眺める。室内窓で光と風をしっかり取り込む

続いて個室。もともと家族全員で寝ていた寝室ですが、成長に合わせて子供部屋に。
リビングとの間に室内窓を設置し、リビング越しにしっかり光と風が入ってきます。

子供部屋には引き戸を2つ。個室の真ん中に壁を一枚立てれば、子供部屋を2つに分けられます。
今はまだ子供たちが同じ部屋でも生活できるので、来たる時まではなるべく広く使いたいというご要望があったので、今回の工事ではその前段階まで設えました。

子供部屋の造作引き戸。ここでも広がりを演出する明かり取りを建具上部に設置しました。

子供部屋を出て廊下の先に玄関があります。
玄関ドアを開けると見える景色がこちら。

カウンターと棚板下足入れ軽やかな雰囲気に

もともとはこの正面の壁一面に扉付きの靴収納が鎮座しており、しっかり収納力があるものの、とても圧迫感を感じる玄関でした。
部屋とは別にストレージがあるマンションということもあり、玄関先は軽やかにしたいというご要望を受け、お気に入りのアイテムを飾れるちょっとしたカウンターと下足棚を設置。軽やかになった場の演出に、レセップ部分が壁に埋め込まれた『フラットレセップ』が一役買っています。

Before:靴収納で圧迫感あり。 After:靴収納を撤去し、カウンターと棚板を新設。サイザルで仕上げた新設の床が空間のアクセントに。

今回は更に、玄関の形にもちょっと手を加えています。
子供部屋の建具を増やす関係で廊下を一部延長する必要がありました。その部分を単純に延長するのではなく、ここでも家具的要素を挿入する手法をとっています。熟練の家具屋さんにお願いして、ホワイトオークをR形状に削り出した玄関框をつくり、足触りの良いサイザルカーペットを敷き込みました。

既存の廊下と素材や色味を大胆に変えることで、継ぎはぎ感ではなく「敢えてこうしている」感を出して、こだわりを感じる場に仕立てています。

廊下を延長する形で造作したR形状の玄関框とサイザルカーペット

継ぎはぎ感は細かいディテールからも見え隠れしてしまうものなので、既存のフローリング床との切り替え位置や見切り方、周辺の素材のバランスなど、細かい部分まで詳細に検討しました。

既存床との新設部の見切り方や素材のバランス。サイザルと既存床の切り替え位置を建具枠からずらして内側まで伸ばしたり。「あえて感」を感じるバランスにこだわりました。

玄関から廊下を進んで再度LDKに戻ります。リビングドアを通って、くるっと振り向いた眺めがこちら。

After

Before

LDKにもお施主さんのこだわりがてんこ盛りです!

まずは先ほど子供部屋でも登場した室内窓。「リフォームするなら、憧れていた室内窓をつけたかったんです」と、計画当初から特別な存在として検討を進めました。強い思いをしっかり形にしましょう!と気合いを入れて、今回はサイズやガラスの種類、開き方などをイチから作り上げました。

上部は透明ガラスで可動式、下部は型ガラスでFIX。

お施主様の要望は、「極力大きな窓にして開放的にしたい」というものでした。ただ、単純に大きくすればいいということではなく、リビングと個室の関係性を考えながら決めていく必要があります。

下部分のガラスは型ガラスとして、開放感をつくりつつも立った状態での目線が気にならないようにしていたり、子供部屋が散らかっていてもリビング側からは気にならないように設定しています。上部分のガラスは透明で可動式にしており、視覚的な抜け感と通風が得られる設計としました。

機能的な面も大事だけど、やっぱりリビング側からの見え方もとても大事。形状については周りの家具や建具とのバランスも見ながら決定。色味についても、家具や建具と統一して、アクセントとしてコンクリート躯体現しにした梁とのバランスを見て着色しています。

実は、こういったお施主さんからの要望やリアルな検討がtoolboxの商品化に繋がったりしています。もしかしたらこんなサイズの木製室内窓が今後商品化されるかも?

 

リビングドアには『オーダー框ドア 枠なし 2パネルガラス』を使用しています

続いてキッチン。
「キッチンがリビングと断絶している感じが嫌だった」とお施主さん。状況を確認すると確かにキッチンの孤立感を感じる間取りでした。
キッチンの側板と吊り戸棚の側面がキッチンエリアの境界を強調しているように見えたので、今回はキッチンをリビング側にはみ出す形にして、リビングとの境界をぼかしてみました。
ここでも造作家具を活用しています。

Before :キッチンの側板と吊り戸棚の側面がキッチンエリアの境界を強調している
After:キッチン側板と吊り戸棚を撤去。ダイニング側に半円の造作キャビネットを、上部に棚板と吊り戸棚を新設しました。

リビングからキッチンとダイニングを眺める。半円の造作キャビネットがキッチンとダイニングをつなげる。

既存のシステムキッチンはそのままに、側板だけ剥がしてそこに半円形状のキャビネットを設置。木目調の面材は白い面材に交換し付け足した造作家具と同調させました。また、吊り戸棚を撤去して、代わりに棚板を少し跳ね出して設置しました。

リビング側にキッチンをはみ出させ空間的なつながりをつくると同時に、リビング側から物を置けたり飾れる場所をつくることで、機能としてのつながりも持たせました。

キッチンからはみ出た半円型のキャビネット。

上部棚板、隣にはラーチの吊り戸棚 W750サイズ

収納には『ラーチの吊り戸棚 W750サイズ』、レンジフードには『キューブ型レンジフード 照明付き W600×H500 ステンレス』をそれぞれ設置。キッチン壁面には、お施主さんこだわりの縦長の緑タイルを全面に貼っています。

キッチン本体はそのままでも周辺のアイテムをセレクトし自分好みに再編集することで雰囲気がガラリと変わり、一気にお施主さん好みの空間に!

こだわりのタイルを張り込んだキッチンの壁。既存キッチンを使いながら、お施主さん好みの全く新しいキッチンになりました。

この記事を書くために、入居後のおうちにお邪魔して生活の変化をお聞きしたところ、
「生活の質が上がって、毎日がとても楽しい!今まで全然好きじゃなかったキッチンがとても好きな場所になりました」とお施主さんも満足していただいているようでした。お気に入りのアイテムをスタイリングして楽しんでいるのがおうちの様子から伝わってきて、生活を楽しんでいる様子が想像できました。

 

設備や間取りは大きく変えず、表層を整えるだけのリフォームでも、そこに自分の好みだったりこだわりを入れ込むことで、十分「自分らしい空間」に編集できるということが確認できた、良い事例だと感じています。

「子供がもう少し大きくなって、子供部屋壁を立てる時は、またお願いしますね!」と言ってもらえて、その時までにどんな素敵な家に成長しているのかを考えると、とても楽しみです。

TBK
オーダーメイドリフォーム
自分好みの空間を、専属スタッフと一緒に実現するフルオーダーリフォーム
対応地域
東京23区および近郊

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。

住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

 

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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

担当:匂坂 / テキスト:匂坂

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