まずこちらは、リビング・ダイニング・キッチンが一直線につながる空間。それぞれを区切らずに一つの大きな空間に仕上げました。元々低かった天井を取って躯体現しにしたことで、壁面にある棚板との直線も相まって奥行きが感じられ、開放感がUPしました。

シルバーでまとめられたこちらは、カウンターキッチンにするか悩んだ末、動線を優先して採用されたアイランドキッチン。木との質感も組み合わさり、それぞれが持ち味を引き立て合っています。ずっと憧れだったという『スプリングホース水栓』は、今では住まいのシンボル的存在なのだそう。

ステンレス、モルタル、ラワンなどの異なる素材を使用して造作されたキッチン。ステンレスの『フラットレンジフード』も、素材感を活かした空間にうまく溶け込んでいます。

リビングにはそれぞれが一人の時間を楽しめるように、デスクを2つ設置する工夫も。
共用のリビングスペースだけど、それぞれが自分の時間を確保できるようになっています。

洗面台は白を基調に、モルタルの天板やタイルなどの硬質な素材感でまとめられています。木の温かみを感じる飾り棚には、基礎化粧品やオイルを見せながら収納しました。採用いただいた『マリンデッキライト』もこの洗面台の雰囲気によく馴染んでいます。

こちらは天井が高く開放感のある寝室。
勾配天井にして木下地を現しにすることで、天井との距離を感じられ、ゆったりとした開放的な雰囲気が漂います。床材はビニルタイルを採用することでコストを抑えつつ、お手入れにも配慮。

木の素材感を全面に出した1階のLDKとは異なり、白とグレーを基調にした余白を残すことでスクリーンとしても使えるようになり、寝転びながら映画を楽しめる空間にもなったそう。

寝室からつながる階段踊場のフリースペース。設置されたカウンターは作業デスクとしても使用が可能。奥につながるクローゼットの入口は、ミッドセンチュリーを感じる緩やかな曲線に仕上げています。

階段では、昼と夜で表情を変える仕掛けが。ペンダントライトのカバーをオレンジ色にすることで、昼間は白黒と木材のコントラストが映える空間も、夜には赤みがかってムーディーな雰囲気に。この明かりへと登る階段は、異世界へと誘われるような遊び心も感じられます。

階段を下ると、土間の玄関ホールへとつながっています。「自転車がおける広い土間は必須!」というお施主様の要望から、広々としたスペースが確保されています。

玄関ホールとLDKを繋ぐ引き戸にも、曲線が取り入れられています。アールで縁取りされたガラスと室内窓から漏れてくる明かりが、いつでも出迎えてくれます。

こちらのドアからは、オレンジ色の光が。異世界に誘うようなそのドアの先にあるのは……

オレンジ色の壁が個性溢れるトイレへとつながっています。便座には木材を使用することで、個性的な空間の中和剤にもなっています。

トイレはもう1つあり、こちらは先程とは違った深めのグリーンが印象的な落ち着きのある雰囲気。2つのトイレに違った特徴を持たせることで、気分によって使い分けもできますね。

お祖父様から引き継いだ長屋のつくりを活かしつつ、お施主様がイメージするミッドセンチュリーな雰囲気が調和した住まい。各素材感のコントラストや光と余白のバランスが絶妙な、昔から今へと時間の流れが感じられる戸建てリノベの事例でした。

株式会社アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

テキスト:ハマ

関連する事例記事

「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
誰もが憧れる「広いリビング」。でも、そこでゆっくり「くつろぐ時間」がなければ、本末転倒。子どもが個室に引きこもるのを防ぐ工夫や家事ラク要素を盛り込んで、「広いリビングで家族がくつろぐ時間」をつくり出した事例をご紹介します。
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
着回しが効く、長く付き合える一着を選ぶように。つくり込むのではなく、暮らしのベースをつくる感覚でリノベーションして、これからの暮らしに寄り添い続けてくれるマイホームをつくった事例をご紹介します。
住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
大阪の下町にある一部屋の宿。もとはごく普通の3LDKだった住宅を、間取りを一切変えずに「泊まれる場所」へと生まれ変わらせた宿の紹介です。
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
東京・練馬区の石神井公園のほとりに建つ、アーチが連なる不思議な建物。「なんのお店だろう?」と思いきや、実は住宅なんです。散歩の途中につい足を止めて見入ってしまうその佇まいは、そこに住む人だけでなく、植物や鳥までも受け入れる“器”として計画されたもの。そんなユニークな考え方のもとつくられた「鶴岡邸」をご紹介します。