限られたスペースを軽やかに見せてくれる壁付キッチン。(W1800×D600)

こだわりはただ一つ。

設計という職業柄、キッチンと向き合う機会が多い私。自己使用物件ではオーナーさんと一緒にこだわりまくって一から図面を引いて制作したり、賃貸物件ではコスト重視の既製品をそのまま導入してカウンターだけ造作で付けたりすることもしばしば。予算のあまりない物件でもコストもデザインも両方叶うキッチンがあったらなぁ、とずーっと思っていました。

そんなある日、キッチンを開発する機会に恵まれ、数ヶ月の開発期間を経てついに完成したこのキッチン。こだわったのは「価格」です。

コストもデザインも両方叶うキッチン。(撮影:中村晃)

コストを押さえられた理由とは

キッチンを構成する素材が1種類であること。以上。

使用されている素材は1mm厚のステンレス(SUS304)の板のみです。これを曲げたり溶接したりして、このキッチンは形作られています。

ステンレスのみで構成された、無駄のない形状。(壁付け W1800×D600)

材料が1種類であることで仕入れの複雑化や在庫の無駄を防ぎコストが抑えられているのです。また、シンクに注目すると3面はステンレスの曲げですが、その両側の2面(正面向かって左右の面)は溶接になっています。ここは角がカーブではなく90度になるのでゴミが若干たまりやすくなっています。これはコスト重視だからこその選択なのですが、こまめに掃除すれば問題なしだと思います。

曲げと溶接で形作られたシンク。キッチンサイズによってシンクのサイズも異なります。

潔いデザインは賃貸物件向き。

収納のない超ミニマルなこのキッチンは、どちらかというと賃貸物件に向いています。

キッチンとしての機能とデザインは十分満たされているので、賃借人に自分の使い勝手のいいようにアレンジしてもらう。そんな使い方がいいと思います。

収納のない潔いデザイン。(壁付けW1